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今日のまとめ
- 多変数関数においても極限、(一様)連続、最大値(最小値)の存在および中間値の定理が定義できる。
7. 多変数関数の微分
2つ以上の変数を持つ関数(多変数関数)の微分およびその応用を取り扱う。まずは2変数関数を中心に扱い、その後に一般の変数関数の場合を扱う。
7.2 関数の極限と連続性
本節では、一般の変数関数でも全く同様に定義できることから、2変数関数で議論する。
で定義された関数を考える。として、が限りなくに近づくとき、関数値がに限りなく近づくことを次のように定める。
7.2.1 多変数関数の極限
多変数関数の極限 任意に与えたに対して適当にを選ぶとがに属する限り
が成り立つとき、
と表す。
特にについて
が成り立つとき、はにおいて連続であるという。においてが連続であるとき、は上で連続であるという。
この“連続”という概念をより厳しくした条件として一様連続がある。
7.2.2 多変数関数の一様連続性
多変数関数における一様連続 において定義された関数が
を満たすとき、は上で一様連続であるという。
7.2.3 多変数関数の収束性
多変数関数値の収束 をで定義された関数とし、とする。このとき以下の2条件は同値である。
- を満たすような任意の点列に対して
が成り立つ。
いまを上の点列でに収束するとする。このとき適当にを選ぶとに対してが成り立つ。したがってならばが成り立つ。
次に2.1.を示すべく、2.を仮定したときに1.が成り立たないと仮定する。このときが存在し、任意のに対してが存在して
となる。の選び方から
が成り立つからが成立する。しかしが成り立たないから2. も成立しないこととなる。したがってこの対偶、すなわち2.1.が示された。 )
7.2.4 多変数関数における最大値・最小値の存在性
( 有界閉集合上で定義された連続関数を考える。まずが上で有界であることを示す。が有界関数でないと仮定する。このとき任意のに対してが存在し、
が成立する。は有界集合であるから点列は有界点列である。したがってこの点列には
を満たすような部分列および点が存在する。
は閉集合であるから、である。仮定からは連続であるからが成り立つ。しかしこれは
に矛盾する。したがっては上で有界である。
次に最大値・最小値の存在性を示す。既に示したとおり、集合はにおける有界集合である。したがっての上限が存在する。上限の定義から、各に対して
を満たすようなが存在する。
は有界点列であるから、
を満たすような部分列およびが存在する。
更にの連続性からが成立する。他方で前述した
により
であるから、である。以上から、は上で最大値を取ることが示された。
他方で有界性からには下限が存在する。上限と同様の議論をすることで最小値の存在も示すことが出来る。 )
7.2.5 連続な多変数関数の一様連続性
( における有界閉集合上で連続な関数を考える。もしが上で一様連続でないと仮定すると、が存在し、任意のに対してを適当に選ぶと、かつが成り立つ。は有界点列では閉集合であるから、が成り立つような部分列およびが存在する。しかしであるから、が成り立ち、したがってである。更には連続であるから
となるが、これは前述した
に反する。したがっては上で一様連続である。 )
7.2.5 多変数関数における中間値の定理
中間値の定理(2変数関数) をの弧状連結な集合とし、を上での連続な関数とする。およびに対して
が成立する。
が成り立つ。このときが求めたかった点である。 )