今日のまとめ
- 2つの実数の組
全体からなる集合を
と書く。ベクトル和およびスカラー倍を定義すれば
は実線形空間になる。
に対して
で定義したを
の長さまたはノルムという。
- 位相的概念を定義できる:適当な
に対して
が成り立つとき、
は有界集合であるという。
が成り立つとき、
を開集合という。補集合が開集合であるような集合を閉集合という。
の任意の
-近傍が
の点と
の補集合の点を同時に含むとき、
を
の境界点と呼ぶ。
の境界点全体からなる集合を
の境界といい、
と書く。集合
を
の閉包(
)と呼ぶ。
を
の内部という。開集合
が共通点をもたない2つの空でない開集合に分割することができないとき、
を連結集合という。連結開集合を領域と呼ぶ。領域とその境界を合わせた集合を閉領域という。
と概念を拡張できる。
7. 多変数関数の微分
2つ以上の変数を持つ関数(多変数関数)の微分およびその応用を取り扱う。まずは2変数関数を中心に扱い、その後に一般の変数関数の場合を扱う。
7.1 2次元ユークリッド空間
2つの実数の組全体からなる集合を
と書く。
2点
に対し、和
およびスカラー倍
と定義すると、は実線形空間になる。
に対して
で定義したを
の長さまたはノルムという。
演算子は以下の性質を持つ:
(1);
(2)
(3)
実際、(1)の前半部分は平方根の定義から明らかである。後半部分は、
として、まず
と仮定すると、ノルムの定義から
であり、であるから、これを満たすような
は
のみである。逆に
と仮定すれば、定義通りに計算することで
が得られる。
(2)について、として、
を取ると、
であるから、定義どおりに計算すれば
を得る。
最後に(3)について、とする。(1)より示すべき式の両辺は共に
以上であることに注意して、
であり、に注意すれば
である。したがって
であり、を得る。
次に2点に対して
と定めると、演算子
は距離の公理、すなわち
(1) | ||
(2) | ||
(3) |
を満たす。
実際、(1)の前半はノルムの性質(1)に他ならないから明らかである。(1)の後半もならば、
、すなわち
を得る。逆に
ならば
である。
(2)はノルムの性質(2)においてとし
を
に置き換えれば
を得、これはに他ならない。
(3)は示すべき不等式が
であることに注意すれば、これがノルムの性質(3)においてと置き換えたものに他ならない。
上記のように定義したを
距離という。また
距離を伴ったベクトル空間
を2次元
空間という。
に対して
を点
の
-近傍と呼ぶ。さらに集合
が
の適当な
-近傍を含むとき、
を
の近傍と呼ぶ。