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やりなおしの数学・微分積分篇(54/X)

 以下の書籍を参考に、改めて微分積分を復習していく。

今日のまとめ

  • 縮小写像Xをノルム空間K\subset X閉集合とする。T:K\rightarrow Xがノルム\|\cdot\|に関して縮小写像であるとは、
    \begin{aligned}{}^{\exists}\rho\in[0,1)\left({}^{\forall}u,{}^{\forall}v\in K\left(\|T(u)-T(v)\|\leq\rho\|u-v\|\right)\right)\end{aligned}
    を満たすときをいう。
  • \mathrm{Banach}不動点定理:K\mathrm{Banach}空間Xの閉部分集合、T:K\rightarrow Kを縮小写像とする。このときT不動点u\in Kがただ1つ存在する。

9. 関数列の収束

 本節では関数の数列(関数列)に関する収束概念を扱う。

9.9 関数空間C(I)と縮小写像の原理

9.9.2 不動点の存在と逐次近似法

 Kをノルム空間X閉集合とする。u\in Kに対してT(u)\in Xを対応させる写像Tとし、u=T(u)を満たすようなu\in Kを求めることを考える。このようなuT不動点という。特にXが連続関数空間C(I)の場合はTは関数u(x)に関数T(u)(x)を対応させる写像であり、方程式u=T(u)を関数方程式という。



縮小写像の定義 Xをノルム空間K\subset X閉集合とする。T:K\rightarrow Xがノルム\|\cdot\|に関して縮小写像であるとは、


\begin{aligned}
{}^{\exists}\rho\in[0,1)\left({}^{\forall}u,{}^{\forall}v\in K\left(\|T(u)-T(v)\|\leq\rho\|u-v\|\right)\right)
\end{aligned}

を満たすときをいう。

縮小写像の例
 \rho\gt0,I=[0,\rho],y_0\in\mathbb{R}とする。写像T


\begin{aligned}
T(u)(x)=\displaystyle{\int_0^x u(t)dt}+y_0
\end{aligned}

と定義すると、\rho\in(0,1)のときにこれはC(I)からC(I)への縮小写像である。
 実際、


\begin{aligned}
\left|T(u)(x)-T(v)(x)\right|&=\left|\displaystyle{\int_0^x u(t)dt}+y_0-\left(\displaystyle{\int_0^x v(t)dt}+y_0\right)\right|\\
&=\left|\displaystyle{\int_0^x (u(t)-v(t) )dt}\right|\\
&\leq\displaystyle{\int_0^x\left|u(t)-v(t)\right|dt}\\
&\leq\|u-v\|\cdot\displaystyle{\int_{0}^{\rho}dt}\\
&=\rho\|u-v\|
\end{aligned}

が得られる。左辺はx\in Iについて上限を取ることで


\begin{aligned}
\left\|T(u)(x)-T(v)(x)\right\|\leq\rho\|u-v\|
\end{aligned}

が得られるから、\rho\in(0,1)ならばTは縮小写像である。

 この例において、uT不動点とすれば、u(x)=\displaystyle{\int_0^x u(t)dt}+y_0が成立する。ここからu^{\prime}(x)=u(x)が得られるから、u(x)=y_0 e^xが唯一の不動点である。



\mathrm{Banach}不動点定理 K\mathrm{Banach}空間Xの閉部分集合、T:K\rightarrow Kを縮小写像とする。このときT不動点u\in Kがただ1つ存在する。
(\because {}^{\forall}u_0\in Kについて、u_n=T(u_{n-1}),n=1,2,\cdotsと定める。T:K\rightarrow Kであるから、u_n\in Kが成り立つ。いまKの点列\{u_n\}_{n=0,1,2,\cdots}がノルム\|\cdots\|に関して\mathrm{Cauchy}列であることを示す。点列の定義と縮小写像の定義から、ある\rho\in(0,1)について


\begin{aligned}
\|u_{n+1}-u_n\|=\left\|T(u_n)-T(u_{n-1})\right\|\leq\rho\|u_{n}-u_{n-1}\|
\end{aligned}

が成り立つ。これを逐次的に適用することで


\begin{aligned}
\|u_{n+1}-u_n\|\leq\rho\|u_{n}-u_{n-1}\|\leq\cdots\leq\rho^n\|u_1-u_0\|
\end{aligned}

を得る。したがってp,q\in\mathit{\mathbb{N}}\ \mathrm{s.t.}\ p\lt qに対して


\begin{aligned}
\left|u_p-u_q\right|&=\left|u_p-u_{p+1}+u_{p+1}-u_{p-2}+\cdots+\cdots+u_{q-1}-u_q\right|\\
&\leq\|u_p-u_{p+1}\|+\|u_{p+1}-u_{p+2}\|+\cdots+\|u_{q-1}-u_q\|\\
&=\displaystyle{\frac{\rho^p}{1-\rho}}\|u_1-u_0\|
\end{aligned}

が成り立つ。いま\rho\in[0,1)であるから\displaystyle{\lim_{p,q\rightarrow\infty}}\left|u_p-u_q\right|=0である。したがって\{u_n\}_{n=0,1,2,\cdots}\mathrm{Cauchy}列である。Xの完備性から


\begin{aligned}
{}^{\exists}u\in X\left(\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}\|u_n-u\|}=0\right)
\end{aligned}

である。KXの閉部分集合であるから、u\in Kが成り立ち、Tが縮小写像であることとu_{n+1}=T(u_n)から


\begin{aligned}
\left\|T(u)-u\right\|&=\|T(u)-T(u_n)+T(u_n)-u_{n+1}+u_{n+1}-u\|\\
&\leq \|T(u)-T(u_n)\|+\|u_{n+1}-u\|\\
&\leq\rho\|u_n-u\|+\|u_{n+1}-u\|\rightarrow0(n\rightarrow\infty)
\end{aligned}

が得られる。こうして\|T(u)-u\|=0,\ すなわちT(u)=uで、T不動点が存在することが分かった。
 次にその存在する不動点の一意性を示す。いまv\in Kv=T(v)を満たすとする。このとき


\begin{aligned}
\|u-v\|=\|T(u)-T(v)\|\leq\leq\rho\|u-v\|
\end{aligned}

が得られる。これより(1-\rho)\|u-v\|\leq0が得られるが、\rho\gt0,\|u-v\|\geq0であるから、\|u-v\|=0でなければならない。したがってu=vであり、不動点の一意性が示された。 \blacksquare)


 \mathrm{Banach}不動点定理の証明において、不動点は以下のように構成された:u_0\in Kを任意に取って、u_1=T(u_0)とおく。それ以降、逐次的にu_2=T(u_1),\cdots,u_{n+1}=T(u_n),\cdotsとして点列を定めると、収束列\{u_n\}を定義でき、u=\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}}u_n=uとおくと、T(u)=uが成り立つ。こうした方法を逐次近似法という。
 逐次近似法は理論的な証明のみならず、数値解析において近似値を計算する際にも有用な概念である。

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