9. 関数列の収束
本節では関数の数列(関数列)に関する収束概念を扱う。
9.9 関数空間C(I)と縮小写像の原理
9.9.2 不動点の存在と逐次近似法
をノルム空間の閉集合とする。に対してを対応させる写像をとし、を満たすようなを求めることを考える。このようなをの不動点という。特にが連続関数空間の場合はは関数に関数を対応させる写像であり、方程式を関数方程式という。
と定義すると、のときにこれはからへの縮小写像である。
実際、が得られる。左辺はについて上限を取ることで
が得られるから、ならばは縮小写像である。
が成り立つ。これを逐次的に適用することで
を得る。したがってに対して
が成り立つ。いまであるからである。したがっては列である。の完備性から
である。はの閉部分集合であるから、が成り立ち、が縮小写像であることとから
が得られる。こうしてすなわちで、の不動点が存在することが分かった。
次にその存在する不動点の一意性を示す。いまもを満たすとする。このとき
が得られる。これよりが得られるが、であるから、でなければならない。したがってであり、不動点の一意性が示された。 )
の不動点定理の証明において、不動点は以下のように構成された:を任意に取って、とおく。それ以降、逐次的にとして点列を定めると、収束列を定義でき、とおくと、が成り立つ。こうした方法を逐次近似法という。
逐次近似法は理論的な証明のみならず、数値解析において近似値を計算する際にも有用な概念である。