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今日のまとめ
9. 関数列の収束
本節では関数の数列(関数列)に関する収束概念を扱う。
9.8 整数級
9.8.1 具体的な展開
具体的な関数を展開してみる、すなわちで無限回微分可能な関数
について
と展開することを考える。ここでは
の収束半径である。
前回示した定理から、が上記の形で書けるとき、
が成り立つ。こうして
が成り立つ。このように展開される関数を実解析的関数と呼ぶ。すべての無限回微分可能な関数がすべて解析関数というわけではない。
展開と比較することで
を得る。ここで
と書かれる剰余項である。もしで
が成り立てば、
は解析関数であると言える。
例:
等比級数より、
ならば
であるから、
が成り立つ。いま右辺の係数は
であるから
より右辺の収束半径は
である。したがって両辺を
回微分することで
を得、
である。
またと置き換えることで
である。両辺を積分することで
が得られる。特に
のとき
は交項級数の定理から収束する。
の連続性定理から
で右辺が連続であることが分かる。一方で
も
で連続であるから
でも成立する。以上から、
が得られた。
9.9 関数空間C(I)と縮小写像の原理
連続関数空間とその上でのノルムを導入し、関数列の一様収束を整理する。その上で縮小写像の原理と逐次近似法を導入する。
9.9.1 関数空間
について、
上で定義された実数値連続関数の全体を
と表す。
と実数
に対して関数
を、
に対して
で定義する。この演算によりは
上の線型空間となる。
に対してそのノルム
を
で定義する。このノルムについて
,
が成り立つ。
更に以下の2つの命題が成り立つ:
より一般的に線形空間において実数値関数
が3つの条件
,
*2
を満たすとき、を
上のノルムといい
をノルム空間という。
ノルム空間においても点列の収束などを定義できる。
ノルム空間における収束 ノルム空間
が成り立つとき、は
に収束するという。
より厳密には、 ノルム空間の点列
について、
が成立するとき、は
に収束するという。
ノルム空間における
が成立するとき、点列は
列という。
より厳密には、ノルム空間の点列
が
を満たすとき、は
列であるという。
ノルム空間について、
と
に対して
の
-近傍を
と定義する。これを用いることで点列の収束をよりコンパクトに表現できる。
点列の収束(
が成立することをいう。
もしノルム空間が連続関数空間
の場合には、
が成立する。