前回
6. 1変数関数の積分
6.6 定積分の応用
定積分を応用して曲線の長さを定義する。
簡単のため2次元を考える。平面内の図形が連続曲線、すなわち
がパラメータ
と
に関する連続関数
を用いて
であるとする。
このときの分割
に対して
に対応する曲線上の点を
とおく。点
を順次結んで得られる折れ線の長さは
である。ここで点の距離は
とする。これに対してのあらゆる分割
を取ったときの
の上限
を曲線の長さという。ただし
が有界でない場合、
とする。
曲線の長さ 曲線
で与えられる。
と書ける。したがって
が成り立つ。ここで
とおいた。
に対して
が成り立つことに注意すれば
が成立する。
は
で連続であるから、
で一様連続である。したがって
が成り立つ。
分割に対して
と定義する。上記の不等式および
の一様連続性から
である。
一方では連続だから
に対して
が存在して
ならば
が成り立つ。
以上からならば
が成り立つ。この評価はを満たすようなすべての分割
について成立し、しかも
は任意に取れるから、題意が示された。
)
6.7 微分方程式の解法
を独立変数とする関数
に対して
および
およびその導関数
の間の関係を表す方程式
を微分方程式という。この式中に現れる導関数のうち最高次の階数をであるとき
階微分方程式という。上記微分方程式を満たすような
をその解という。微分方程式の解を求めることを微分方程式を解くという。
6.7.1 微分方程式の基本的設定
例として1階微分方程式を考える。放射性物質の質量の時間的変化を考える。時刻における放射性物質の質量を
とする。このとき単位時間あたりに崩壊する放射性物質の質量は全体の質量に比例することが知られており、
と書ける。とおくと、これは上記方程式の解である。しかし、
として
も解である。このように一般に微分方程式の解を表すには任意定数が必要となる。任意定数を用いて表される解を一般解という。一般解に現れる任意定数を特定するためには、通常、初期条件を指定する。すなわちある
を与え
を満たすようにする。
6.7.4 微分方程式の解法:線形微分方程式
について1次となる微分方程式
を1階線形微分方程式という。のとき微分方程式は同次、
が恒等的に
でないとき非同次であるという。
同次方程式
では変数分離形になるため、一般解は
である。
次に非同次方程式の場合、両辺にを掛けると
であり、この式を積分すれば左辺がの部分積分であることを踏まえれば
が得られる。したがって
が得られる。
別の解法である定数変化法でも解を求めることができる。同次方程式の一般解において
だと考えてこれを非同次方程式に代入することで
を得る。したがって、
であり、ここから同様の結果を得る。
6.7.5 微分方程式の解法:2階線形微分方程式
連続な関数に対して
を扱う。の場合は同次、
の場合は非同次という。
まず同次方程式を考える。を同次方程式
の2つの解とするとき、もまた解になる、すなわち線形性を持つ。またすべての
に対して
であるとき、解
は一次独立であるという。
解に対してWronskian
を
で定義する。このとき
が知られている。したがってまたは
のどちらかが成り立つことが分かる。
6.7.6 微分方程式の解法:定数係数2階線形微分方程式
1次独立な解を求める具体的な方法を述べるべく、定数係数を持つ2階線形微分方程式
を考える。の形の解を探すべく上記方程式に代入することで
を得る。このに関する方程式を特性方程式という。この解を
とするとき、
はこの同次方程式の解になる。
ここでのWronskian
は
で与えられる。
特にの場合、Eulerの公式
と表せば、
となる。したがって一般解は
と表すことが出来る。これはとおくとき、
も1次独立な解となることを示している。
最後にの場合を考える。
とおくと、
となり、ともに同次方程式の解となることが確かめられる。更に
であり、これはが1次独立な解となることを示している。したがって
で与えられる。
6.7.7 微分方程式の解法:非同次2階線形微分方程式
非同次方程式
を考える。あるがこの非同次方程式の解だったとしよう(これを特殊解という。)。そのとき
とおけば、
と同次方程式に帰着できる。したがってこの同次方程式の1次独立な解が分かれば、
と表せる。以上から元の非同次方程式の解
は
で与えられる。
問題は特殊解をどうやって見つけるかであるが、以下の定理を利用すればよい。
非同次方程式の特殊解 非同次方程式
において1次独立な解は以下で与えられる:
の解を
の形で求めることとする。制約条件
を設けることで
を非同次方程式を代入すれば
を得る。以上を連立させることで
を得、これを解くことで
を得る。以上から
となり、一般解が求められる。 )