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金融工学でのモンテカルロ法(19/22):アメリカン・オプションの評価(6)Stratified state aggregation法

 金融工学におけるシミュレーションについて学んでいく。テキストとして以下を使う。今回はP.133-136まで。

8. アメリカン・オプションのMonte Carlo法による評価

 アメリカン・オプションの価格は、有限差分法またはツリー法によるのが一般的であった。しかしMonte Carlo法でも計算できるようになってきた。

8.6 Stratified state aggregation法

 Barraquand and Martineauが示した多資産を原資産とするアメリカン・オプションの評価に有効な方法としてStratified state aggregation法(SSA法)がある。
 この方法において中心的な役割を果たすアイディアはstate aggregationと呼ばれる近似計算方法である。空間全体をより低い次元を持つ空間に写像し、その像全体を分割するというものである。

8.6.1 推移確率モデル

 現在価格算出の基本的枠組みは推移確率を用いるというものである。
 ある状態変数(通常は原資産)の時点t_j、状態k(k=1,\cdots,K_j)の値をX_j(k)とする。ただしK_0=1とする。この時状態(t_j,k)から状態t_{j+1},l)への推移確率を


\begin{aligned}
\pi_{j}(k,l),\ k=1,\cdots,K_j,\ l=1,\cdots,K_{j+1}
\end{aligned}

とする。また時点t_jにおける早期行使価格が状態変数Xの関数f(X)で定まるものとする。すると時点t_j、状態kにおいてオプション価格P_j(k)は漸化式


\begin{aligned}
P_j(k)=\max\left[f(X_j(k)), e^{r(t_{j+1}-t_j)}\displaystyle{\sum_{l=1}^{K_j+1}\pi_j(k,l)P_{j+1}(l)} \right]
\end{aligned}

を満たすことから、これを後進的に解いてオプション価格P_0(K_0)を得る。

8.6.2 State aggregation

 状態変数を原資産価格とした場合、単純な推移確率モデルでは多資産のオプションは事実上評価できない。なぜならば状態数が幾何級数的に増大するからである。SSA法ではこの問題を"state aggregation"近似を用いて解決した。すなわち多資産がもたらす高次元問題を1次元問題に次元縮小した。
 第\alpha(\alpha=1,\cdots,A)の第iパス、時点t_jにおける値を


\begin{aligned}
S_j^{\alpha}(i),\ i=1\cdots,N,\ j=0,1,\cdots,M,\ t_0=0,t_M=T
\end{aligned}
とし、多資産パスを

\begin{aligned}
\boldsymbol{S}_{j}(i)=(S_j^{1}(i),\cdots,S_j^{A}(i)),\ i=1\cdots,N,\ j=0,1
\end{aligned}

と記す。またペイオフ関数をh(\boldsymbol{S})で与える。

(1) ペイオフ関数値を状態変数Xとし、
\begin{aligned}X_j(i)=h(\boldsymbol{S}_{j}(i))\end{aligned}
とする。またX_jの値域を区間\begin{aligned}C_j^k=\left[c_j^k,c_j^{k+1}\right),\ k=0,\cdots,K_j\end{aligned}に分割しX_j\in C_j^kのときX_jは状態kにいると定義する。
(2) 多資産パス\boldsymbol{S}(i)を発生させてX_j\in C_j^kとなるパスの数a_j(k)を数える。同様にX_j\in C_j^kかつX_{j+1}\in C_{j+1}^lとなるパスの数b_j(k,l)を数える。また
\begin{aligned}f_j(k)=\displaystyle{\sum_{X_j\in C_j^k}X_j},\ j=1,\cdots,M\ k=1,\cdots,K_j\end{aligned}
を計算しておく。
(3) 全パスを発生させた後、推移確率
\begin{aligned}\pi_j(k,l)=\displaystyle{\frac{b_j(k,l)}{a_j(k)}}\end{aligned}
を計算する。また時点t_j,j=1,\cdots,Mにおける状態kの行使価格を
\begin{aligned}e_j(k)=\displaystyle{\frac{f_j(k)}{a_j(k)}},j=1,\cdots,M,k=1,\cdots,K_j\end{aligned}
とする。
(4) P_j(k)およびV_j(k)をそれぞれ時点t_j、状態kのオプション価格および持越し価値とし、以下の漸化式を後進アルゴリズムにより解く:
\begin{aligned}\left\{\begin{array}{l}V_j(k)&=e^{-r(t_{J+1}-t_j)}\displaystyle{\sum_{l=1}^{K_{j+1}}\pi_j(k,l)P_{j+1}(l)},\\P_j(k)&=\max\{e_j(k),V_j(k)\},\ j=1,\cdots,M-1,k=1,\cdots,K_j\end{array}\right.\end{aligned}

ただしP_M(k)=e_M(k)とする。

8.6.3 誤差の修正

 Boyle, Boradie and GallsermanはSSA法に修正不可能な誤差が存在することを指摘している。
 Raymer and Zwecherはこの問題を改善する方法を提唱した。次元縮小を与える写像の像を2次元(もしくは3次元)にするように拡張した。ただし推移確率モデルの次元が増えるため、幾何級数的に計算負荷が増大する。

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