金融工学におけるシミュレーションについて学んでいく。テキストとして以下を使う。今回はP.133-136まで。
8. アメリカン・オプションのMonte Carlo法による評価
アメリカン・オプションの価格は、有限差分法またはツリー法によるのが一般的であった。しかし法でも計算できるようになってきた。
8.6 Stratified state aggregation法
が示した多資産を原資産とするアメリカン・オプションの評価に有効な方法として 法(法)がある。
この方法において中心的な役割を果たすアイディアは と呼ばれる近似計算方法である。空間全体をより低い次元を持つ空間に写像し、その像全体を分割するというものである。
8.6.1 推移確率モデル
現在価格算出の基本的枠組みは推移確率を用いるというものである。
ある状態変数(通常は原資産)の時点、状態の値をとする。ただしとする。この時状態から状態への推移確率を
とする。また時点における早期行使価格が状態変数の関数で定まるものとする。すると時点、状態においてオプション価格は漸化式
を満たすことから、これを後進的に解いてオプション価格を得る。
8.6.2 State aggregation
状態変数を原資産価格とした場合、単純な推移確率モデルでは多資産のオプションは事実上評価できない。なぜならば状態数が幾何級数的に増大するからである。法ではこの問題を" "近似を用いて解決した。すなわち多資産がもたらす高次元問題を1次元問題に次元縮小した。
第の第パス、時点における値を
とし、多資産パスを
と記す。またペイオフ関数をで与える。
(1) | ペイオフ関数値を状態変数とし、とする。またの値域を区間に分割しのときは状態にいると定義する。 |
(2) | 多資産パスを発生させてとなるパスの数を数える。同様にかつとなるパスの数を数える。またを計算しておく。 |
(3) | 全パスを発生させた後、推移確率を計算する。また時点における状態の行使価格をとする。 |
(4) | およびをそれぞれ時点、状態のオプション価格および持越し価値とし、以下の漸化式を後進アルゴリズムにより解く: |
ただしとする。