金融工学におけるシミュレーションについて学んでいく。テキストとして以下を使う。今回はP.121-123まで。
8. アメリカン・オプションのMonte Carlo法による評価
アメリカン・オプションの価格は、有限差分法またはツリー法によるのが一般的であった。しかし法でも計算できるようになってきた。
8.4 バンドリング・アルゴリズム
バンドリング・アルゴリズムはによって提唱されたアルゴリズムである。アルゴリズムの概略は以下のとおり。
- 最適行使境界を大雑把に定める。
- 真の最適行使境界に近づけるためのいくつかの工夫を施す。
- 停止時刻型法によりオプション価格を算出する。
アメリカン・プット・オプション(行使価格, 満期)を考えると、持ち越し価値早期行使価値が等しくなる点が最適行使境界である。
時点から満期までを
で離散化する。また時点における第番目の株価を
と書く。
アルゴリズムをより詳細に分けると6段階に分けられる:
(1) | 第株価パス()を発生させてこれらを保存する。 | |
(2) | すべてのパスおよびすべての時点において行使価値を計算する。 | |
(3) | ある時点を固定する。このときパスにおける持越し価値を与える関数を以下の手順で定める。 | |
(a) | この全パスをを基準として大きい順に並べる。 | |
(b) | これらを大きい順に個ずつバンドリングしてパスを束にまとめる()。 | |
(c) | 第束()に入るパスの集合をとし、その元をとする。このときはの部分集合で個の元から成る。また時点、パスにおける持越し価値をで定める。ただしは時点、パスにおけるオプション価値である。持越し価値は束内で同じ値とする。 | |
(4) | すべての時点のすべてのパスにおける持越し価値を以下の後進アルゴリズムで計算する。 | |
(a) | のときとする。 | |
(b) | のとき(3)(c)と同様にでを定める。 | |
(c) | のとき同様にしてを定め順次まで持越し価値を定める。 | |
(5) | 各時点についての大小が入れ替わる点を最適行使境界とする。 | |
(6) | 停止時刻型の法を行なう。 |