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金融工学でのモンテカルロ法(16/23):アメリカン・オプションの評価(1)手法の概要

 金融工学におけるシミュレーションについて学んでいく。テキストとして以下を使う。今回はP.112-115まで。


power-of-awareness.com

8. アメリカン・オプションのMonte Carlo法による評価

 アメリカン・オプションの価格は、有限差分法またはツリー法によるのが一般的であった。しかし\mathrm{Monte\ Carlo}法でも計算できるようになってきた。

8.1 計算手法の発展

 Black and Scholesは原資産Sが1つでリスク中立な確率微分方程式


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{dS}{S}}=rdt+\sigma dZ
\end{aligned}

を満たす場合、Sを原資産とする配当の無いすべてのオプションCは次の偏微分方程式を満たすことを示した:


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{\partial C(S,t)}{\partial t}}+rS \displaystyle{\frac{\partial C(S,t)}{\partial S}}+\displaystyle{\frac{1}{2}}\sigma^2S^2\displaystyle{\frac{\partial^2 C(S,t)}{\partial S^2}}-rC(S,t)=0
\end{aligned}

これはアメリカン・オプションでも成り立つ。ただし、早期行使境界が解の一部になっている点が原因となり、明快な解析解が得られていない。
 現在提唱されているアメリカン・オプションの評価モデルは近似に頼っており、以下の方法に分類できる:

(1) 解析的近似解 ①上記の偏微分方程式常微分方程式で近似する。満期までの期間が長くなると不正確になる。
②離散的な自国で行使可能なコンパウンド・オプションとして捉える。ただし多次元正規分布の累積分布関数は数値計算を用いる。
(2) 数値的近似解 ①有限差分法
②ツリー法
モンテカルロ・シミュレーション

 解析的近似解では多資産評価は困難であり、(研究当時の)コンピュータの性能では高々3~4資産が限界であった。他方で\mathrm{Monte\ Carlo}法は多資産評価に強い。


図表1 \mathrm{Monte\ Carlo}法によるアメリカン・オプション評価手法の概要

方法
資産数
経路依存型
権利更新頻度
真の値への収束
バイアス
バンドリング・アルゴリズム 1 不可 充分*1 明示されない プラス方向にあり
最適行使境界の
バックワード・サーチ法①
1,2,3 不可 充分 問題なし なし
最適行使境界の
バックワード・サーチ法②
1,2,3 充分 問題なし マイナス方向にあり
stratified state aggregation法 1~400 不可 充分 保証なし
ランダム・ツリーによる挟みうち法 1,2,3 不可 3程度まで 明確に保証 プラス・マイナス方向にあり得る
確率的メッシュによる挟みうち法 1~10 不可 充分 明確に保証 プラス・マイナス方向にあり得る

出典:湯前・鈴木(2000)*2を基に一部改訂

*1:負荷が幾何級数的に増えないことを意味する。

*2:湯前祥二・鈴木輝好(2000)「モンテカルロ法金融工学への応用」朝倉書店 P.114参照。

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