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長期投資の理論と実践(20/X)

 投資理論を以下の書籍

をベースに学ぶこととする。

power-of-awareness.com

今回のまとめ

  • 時間分離可能な効用関数を用いて、1期間の期待効用理論の拡張として多期間期待効用モデルを構築した。
  • そうした多期間モデルは、

     ①各期間の効用関数を対数型に制約すると、各期において1期間先を超える将来を考慮する必要は皆無で、単純な1期間モデルの繰り返しという意思決定が行われる。

     ②冪型効用関数であっても将来の投資機会集合が不変もしくは既知の場合、1期間モデルの繰り返しに帰着できる。

10. 多期間における最適消費と最適投資の意思決定

 多期間における効用関数として冪型もしくはその特殊ケースとしての対数型の1期間効用関数に基づく多期間の期待効用関数を考えなければ、最適投資比率は最適消費と独立には決定できない。したがって異なる状態間および異なる時点間のリスク回避を分断した再帰的効用関数においても、両者を独立に決定することは困難であると考えられてきた。
 しかし\mathrm{Epstein}-\mathrm{Zin}効用と対数正規分布に従う収益の仮定の下で、線形対数近似を用いることで多期間における最適消費と最適投資の近似解析解を求めることができるようになった。

10.1 多期間モデルの一般的性質

 現実には無リスク資産の利回りは時間の進行とともに変化し、またリスク資産の投資リターンの確率分布が同一で長期にわたって変化しないと考えるのは現実をあまりに単純化し過ぎている。そのために、投資機会集合の変化を取り入れた消費と投資・貯蓄に関わる意思決定の枠組みが必要になった。それが消費と投資の多期間モデルである。

10.1.1 1期間から多期間

 多期間において投資機会集合が変化する下での最適消費と最適投資の決定メカニズムを初めて明らかにしたのは\mathrm{Samuelson(1969)}および\mathrm{Merton(1969)}である。その研究の骨子は以下のとおりである:

  • 時間分離可能な効用関数を用いて、1期間の期待効用理論の拡張として多期間期待効用モデルを構築した。
  • そうした多期間モデルは、

     ①各期間の効用関数を対数型に制約すると、各期において1期間先を超える将来を考慮する必要は皆無で、単純な1期間モデルの繰り返しという意思決定が行われる。

     ②冪型効用関数であっても将来の投資機会集合が不変もしくは既知の場合、1期間モデルの繰り返しに帰着できる。
10.1.2 仮定

 現在を時点0とし、これは第0時点の期初を指すものとする。また最終の第T-1期は時点Tで終わるものとする。さらにT-1期の終了と共に消費者が遺産\tilde{W}_Tを遺して死亡すると考える。


 また生涯効用は各期の効用関数の和として与えられるものと仮定する。特にt=0では


\begin{aligned}
U_0&=E_0\left[U\left(C_0,\tilde{C}_{1},\cdots,\tilde{C}_{T-1},\tilde{W}_T\right)\right]\\
&=E_0\left[\displaystyle{\sum_{t=0}^{T-1}u\left(\tilde{C}_t,t\right)}+B\left(\tilde{W}_T,T\right)\right]
\end{aligned}

で定義する。ここでu(\cdot)は各時点における1期間の効用関数であり、その1期間効用はその時点の消費に依存し、それ以前ないしそれ以後に期待される消費水準の影響は影響しないと仮定している。
 この消費者は時点Tに死去すると想定しているため、消費者自身は富\tilde{W}_T自体を消費することでは効用を得ることはできない。しかし子孫に遺産を残すことで効用を得ることができると考え、それを表現するために遺産関数B\left(\tilde{W}_T,T\right)を導入している。この遺産関数は時点Tにおける富の実現値の水準を表すW_Tについて単調増加かつ凹関数であると仮定する。任意の時点t\in\left\{0,1,\cdots,T-1\right\}における生涯効用は、


\begin{aligned}
U_t&=E_t\left[U\left(C_t,\tilde{C}_{t+1},\cdots,\tilde{C}_{T-1},\tilde{W}_T\right)\right]\\
&=E_t\left[\displaystyle{\sum_{s=t}^{T-1}u\left(\tilde{C}_s,s\right)}+B\left(\tilde{W}_T,T\right)\right]
\end{aligned}

と表す。

 任意の時点tおよびその翌時点t+1に着目して予算制約を考える。消費者が第t期期初に保有する富をW_t\gt0とする。この富は時点tに至るまでの消費および投資が最適に行われた結果として時点tにおいて消費と投資に利用可能な金額であるが、ここでは所与の性の値として最適化問題を考えることとする。また時点tでは労働による所得がY_t(確定値)だけ支払われると仮定する。消費者はこのW_t+Y_tを用いて消費をC_tだけ行い、残額を貯蓄W_t+Y_t-C_tを利用可能な金融資産に投資することになる。この投資可能金額をI_tと記すことにする。もし最適な消費を行なう場合の貯蓄が負になるときは、金融資産市場での空売りによって不足資金を調達するためI_tは負の値を取る。
 投資に利用可能な金融資産として時点t+1に満期が到来する無リスク資産とn種類のリスク資産を想定する。添字を用いる便宜上のため、無リスク資産を第0資産と呼ぶこととし、そのグロスベースでの投資リターンを1+r_{f,t}とし、それへの投資ウェイトを\omega_{0,t}と表し、また各リスク資産i\in\{1,2,\cdots,n\}グロスベースでの投資リターンを1+\tilde{r}_{i,t+1},それへの投資ウェイトを\omega_{i,t}とする。このときポートフォリオの投資リターンをグロス表示で1+\tilde{r}_{p,t+1},投資可能金額をI_t=W_t+Y_t-C_tとおけば


\begin{aligned}
\tilde{W}_{t+1}&\equiv I_t\left(1+\tilde{r}_{p,t+1}\right)\\
1+\tilde{r}_{p,t+1}&=\left\{\omega_{0,t}\left(1+r_{f,t}\right)+\displaystyle{\sum_{i=1}^{n}\omega_{i,t}\left(1+\tilde{r}_{i,t+1}\right)}\right\}\\
&=(1+r_{f,t})+\displaystyle{\sum_{i=1}^{n}\omega_{i,t}\left(\tilde{r}_{i,t+1}-r_{f,t}\right)}
\end{aligned}

と表現することができる。

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