はじめに
- いい歳なので、そろそろ体に向き合わないといけないのだが、最も気になるのが加齢臭などの「臭い」である。
- そこで臭いを科学的に学んでみようということで、を読んでみる。
- 前回:power-of-awareness.com
目次
2. 体臭の傾向と対策
2.10 たばこ臭
- 喫煙した人が近くに来ると、タバコ臭を感じることがある。当然呼気や衣服への付着物がその原因だが、喫煙者の皮膚からもたばこ煙成分が放散されていることが判明している。たばこ主流煙中の化学物質が吸入された後、その一部が肺から血液に移行し、さらに血中から皮膚表面に移行する可能性が考えられる。
- ヘビースモーカーの能動喫煙者1人に15分間かけて紙巻きたばこ1本を吸った前後の皮膚ガス放散量を測定した。前腕部および手甲部ともに皮膚から放散される成分は極微量だったのが、喫煙直後には多数のピークが検出され、たばこ主流煙に特徴的な40種の成分の検出量が顕著に増加した。前腕部における検出量は、手甲部と同等もしくは若干多かったため、たばこ煙に特徴的な成分は、血液由来により拡散されたものと考えられる。
- 能動喫煙者3人が紙巻きたばこ1本を10~15分間かけて喫煙した前後での皮膚ガス成分を測定した*1ところ、ニコチンの皮膚放散量は喫煙直後に最大値を示し、その後、喫煙前と同等水準にまで減衰する傾向が見られた。他成分も同傾向があった。
- 喫煙には、一次喫煙*2、二次喫煙*3に加え、副流煙などが居室の内壁などに一旦付着したものが再放散した物質に暴露する三次喫煙があることが分かっている。皮膚から放散するたばこ煙への暴露は二次喫煙の一つとして位置づけられると考えられ、ヒトの体表面もたばこ煙の移動発生源になり得る。
2.11 皮脂臭
- 皮膚の酸化により生成される皮膚ガスはtrans-2-ノネナール以外にも多く存在する。たとえばメチルヘプテノンや2-メチル-2-ペンテンが該当する。また、空気中のオゾンがスクワレンの酸化分解物を皮膚から放散させるという報告が存在する。
- 遊離脂肪酸から生成されたアルデヒド類も皮膚から放散されている。たとえば、ブタナール、ヘキサナールが該当する。
- 暴飲暴食や偏った食事は皮脂分泌量を増大させる可能性がある。動物性脂肪を多く摂取すると皮脂分泌量を増やすし、炭水化物を摂取した後に血糖値を安定させるのに放出されるインスリンはも皮脂の分泌量を増やす。さらに飲酒によるアルコールは毛細血管を拡張させ皮脂腺を刺激するため、皮脂がいっそう分泌される。
- これに対しビタミンB群は皮脂分泌を抑制する働きがある。アーモンドや納豆、マグロやレバーを取り入れると皮脂臭の防止に有用かもしれない。
まとめ
- 体臭の元になる微量な生体ガスを皮膚ガスという。厳密に定義すると、「体表面から放射される揮発性の有機・無機化合物の総称」である。皮膚ガスは主に①エネルギー気質(炭水化物、タンパク質、脂質)などの代謝生成物、②腸内細菌による産生物、③吸入・経口・経皮摂取された外因性化学物質、④皮膚表面における生物的・科学的な反応生成物から構成され、その組成でも体臭が変わる。他人から漂ってきた皮膚ガスは新たな刺激として認知され、快・不快を感じることがある。
- 衛生・清潔志向が進み、においに敏感な人が増えている。その背景には、①体臭が「社会的な関係性」に密接に関わっていること、②大気が相対的に綺麗になり体臭が「目立つ」ようになったこと、③住居のあり方が変わり、生体ガスの計測が日常生活を激変させ得ることがある。
1. 加齢臭
- 加齢臭は、trans-2-ノネナールという皮膚ガスが原因である。trans-2-ノネナールは、皮脂に含まれるパルミトレイン酸が過酸化脂質により酸化されることで生じる。過酸化脂質自身も皮脂が原料で、紫外線や体内で生成される活性酸素により生成される。
- trans-2-ノネナールは、頭部や項部(うなじ)、腋窩(えきか、えきわ:わきの下)、胸部や背部を中心に発生しやすい。
- 加齢臭対策には、①体をやさしく洗う:入浴などで皮脂を落とす、③活性酸素による皮脂の酸化を防ぐ:バランスの取れた食事、適度な運動習慣、十分な睡眠をとることや抗酸化成分を持つ食品を摂取する、②紫外線による皮脂の酸化を防ぐ:日傘や帽子を活用し、直射日光を浴びない、④香水の利用:シトラス系の香りや森林調の香りを用いることがある。
2. 中年男性臭
- 中年男性臭の原因はジアセチルである。汗に含まれる乳酸と皮膚常在菌との表面反応によって生成される皮膚ガスである。他の皮脂臭などの混ざると中年男性特有のにおいを生み出す。
- ジアセチルが中年男性に多い理由は明らかになっていない。ジアセチルは、頭部や首筋など汗をかきやすい部位から比較的多く放散される。
- 中年男性臭の対策には、①こまめに汗を拭く②換気を良くする③フルーツ系の香水を用いる
3. 疲労臭
4. 汗臭
- 汗のにおい(汗放置臭)は、もっとも代表的な体臭の1つである。汗はエクリン汗腺、アポクリン汗腺から分泌される。ここではエクリン汗腺に関連して生じる汗臭を扱う。
- エクリン汗腺は、口唇や瞼を除く身体の大部分に分布し、一生涯活動する。エクリン汗腺の数には個人差があり、200-500万個と言われている。汗腺は手掌部、足底部、顔に相対的に多く分布する。エクリン汗腺には活動している能動汗腺と休眠汗腺とがある。
- 汗臭の対策には、①汗をウェットなもので拭くこと、②汗腺を衰えさせない、(a) 入浴法、(b)インターバル足歩③制汗剤を使うこと、④スパイシー系や森林調の香水を用いること⑤足を清潔にし、靴をケアすることがある。
5. 腋臭
6. ダイエット臭
- ダイエットで、糖質を制限している中で体中の脂肪分がうまく燃焼すると脂肪の代謝生成物であるアセトンが発生し、ダイエット臭の原因になる。
7. ニンニク臭
- ニンニク特有のにおい成分は血流に乗って全身に循環し、口臭だけでなく体臭の原因になる。
- ニンニク臭の対策には①牛乳を摂取すること、②ポリフェノールを摂取することがある。
8. 酒臭
9. たばこ臭
- 喫煙した人が近くに来ると、タバコ臭を感じる。一次喫煙や二次喫煙*4以外にも、たばこ主流煙中の化学物質が吸入された後、血中から皮膚表面に移行する経路も存在する。
10. 皮脂臭
- trans-2-ノネナール(加齢臭)以外にも皮膚の酸化により生成される皮膚ガスは多く存在する。
- 暴飲暴食や偏った食事は皮脂分泌量を増大させる可能性がある。動物性脂肪を多く摂取すると皮脂分泌量を増やすし、炭水化物を摂取した後に血糖値を安定させるのに放出されるインスリンも皮脂の分泌量を増やす。さらに飲酒によるアルコールは毛細血管を拡張させ皮脂腺を刺激するため、皮脂がいっそう分泌される。
- ビタミンB群は皮脂分泌を抑制する働きがある。アーモンドや納豆、マグロやレバーを取り入れると皮脂臭の防止に有用かもしれない。
| 加齢臭 | trans-2-ノネナール | ・入浴などで皮脂を落とす ・日傘や帽子を活用し紫外線を避ける ・バランスの取れた食事 ・適度な運動習慣 ・十分な睡眠や抗酸化成分の摂取 ・シトラス系や森林調の香水を用いる |
|---|---|---|
| 中年男性臭 | ジアセチル | ・こまめに汗を拭く ・換気を良くする ・フルーツ系の香水を用いる |
| 疲労臭 | アンモニア | ・肉や魚に偏った食事を避ける ・オルニチンを摂取 ・毎晩入浴する ・腸内環境を改善 ・ミョウバン水を用いる ・フローラルやパウダリーな香水を用いる |
| 汗臭 | エクリン汗腺からの汗 | ・汗をウェットなもので拭く ・汗腺を衰えさせない ・制汗剤を使う ・スパイシー系や森林調の香水を用いる ・足を清潔にし、靴をケアする |
| 腋臭 | エポクリン汗腺からの汗 | ・過度な動物性脂肪の摂取を控える ・外科的治療 |
| ダイエット臭 | アセトン | ・糖質制限を控える |
| ニンニク臭 | ニンニク | ・牛乳を摂取 ・ポリフェノールを摂取 |
| 酒臭 | アセトアルデヒド | ・ウコンの摂取 |
| たばこ臭 | たばこ内の各種成分 | ・禁煙 ・加熱式たばこの摂取 |
| 皮脂臭 | 皮膚の酸化で生じるガス | ・暴飲暴食の回避 ・過度な動物性脂肪の摂取を控える ・過度な炭水化物摂取を控える ・アルコールを控える・ビタミンB群の摂取 |
