投資理論を以下の書籍
をベースに学ぶこととする。
今回のまとめ
- 各期の効用関数が冪型であるような投資家の最適消費決定問題は、確実下においてで与えられる。
- 2期間モデルの場合、第1期の最適消費はで与えられる。これは冪型効用関数において異なる状態間の消費変動に対するリスク回避度を表すパラメータだったが同時にその逆数によって異なる時点間の消費変動に対するリスク回避度を表現していることになる。
- こうした問題を回避すべく、異時点間代替弾力性()を導入する。これまでの2期間モデルを前提として、消費が確定値だと仮定する。このとき不確実性を伴わない2期間の生涯効用関数を基にと定義する。
9. ライフサイクルとパーソナル・ファイナンス
9.5 効用関数の導入
多期間モデルで考慮すべき投資家のリスク回避には2種類あるが、これらを従来の効用関数では分離できない。
9.5.2 2種類のリスク回避分離
前節で導出した生涯効用関数は異なる状態間のリスク回避度はで表現されている。そこで次に同じ投資家の異なる時点間での消費変動リスクに対する感応度を導入する。そのために、しばらくは第期の消費は確定値の水準を選択すると仮定し、世の中の異なる状態による消費の不確実変動は考慮せずに分析を進めることにする。この仮定の下では無リスク資産のみ選択可能で、そのリターンをとすれば、各期の効用関数が冪型であるような投資家の最適消費決定問題は、確実下において
で与えられる。この最大化問題における1階条件を求めると、求めたいをとおけば
を満たす。この式の最左辺は第期期初に最適な消費を行なった残額としての貯蓄を無リスク資産で運用した結果であり、それは2期間モデルであるから、第期の最適消費を表すから、
が成立する。これは効用関数が狭義凹関数であるから、最大化問題の2階条件も満たしている。
が大きくなるほど、はに近づく。これはにより表される(異なる状態間の)リスク回避度が極めて大きな消費者は将来と現在の消費水準を等しくすることを望むことを意味する消費者であることを意味する。
しかし、これは冪型効用関数において異なる状態間の消費変動に対するリスク回避度を表すパラメータだったが同時にその逆数によって異なる時点間の消費変動に対するリスク回避度を表現していることになる。これは本来異なる種類のリスク回避度が同一のパラメータで、しかもトレード・オフな状態で記述することになってしまうからである。