はじめに
- いい歳なので、そろそろ体に向き合わないといけないのだが、最も気になるのが加齢臭などの「臭い」である。
- そこで臭いを科学的に学んでみようということで、を読んでみる。
- 前回:power-of-awareness.com
目次
2. 体臭の傾向と対策
2.5 腋臭
- 腋窩(えきか:脇の下)の鼻をつくようなにおいは腋臭(えきしゅう)と呼ばれる。日本人の10人に1人は腋臭に悩まされていると言われている。
- アポクリン汗腺は、腋窩、外陰部、乳頭およびその周囲(乳輪)など特定の部位に分布し、他に外耳道や眼瞼(がんけん)、臍(へそ)、胸部、下腹部などの有毛部にも存在する。
- 性ホルモンからの影響を受けるため、思春期に発達する。アポクリン汗はタンパク質、脂質、糖質などを含む、少し濁った粘り気のある液体である。
2.5.1 腋臭の原因となる皮膚ガス
- 腋臭の原因となる皮膚ガスには、①スルファニルアルコール類、②有機酸、③ステロイド類の3グループがある。
- 腋臭の独特なにおいの原因の1つに、スルファニルアルコール類(3-メチル-3-スルファニルヘキサノール(3M3SH) )がある。体内で生合成されたグルタチオンが、最終的に皮膚常在菌により3M3SHにまで分解される。
- 腋臭の酸っぱい匂いは、有機酸( (E)-3-メチル-2-ヘキセン酸や3-ヒドロキシ-3-メチル-ヘキサン酸など)が原因になっている。これらはアポクリン汗腺から分泌される脂質に含まれる遊離脂肪酸が原料であり、皮膚表面で皮膚常在菌によって分解されたものである。
- 他に、尿やムスクのような臭気を伴うステロイド類(5α-16-アンドロステン-3-オン、5α-16-アンドロステノン-3α-オールなど)も含まれる。
2.6 ダイエット臭
- ダイエットで、糖質を制限している中で体中の脂肪分がうまく燃焼すると脂肪の代謝生成物であるアセトンが発生し、ダイエット臭の原因になる。
- 糖質の供給やその利用が制限されていると脂質の分解が促進されて肝臓でケトン体が生成され、血中にケトン体が移行する。ケトン体の中で揮発性の高いアセトンは、血中から肺に移行して呼気ガスとして排出される。
2.7 桃の香り
2.7.1 若年女性に特徴的な皮膚ガス
2.7.2 女性ホルモンとの関係
- 女性の体臭は正周期におけるホルモンの分泌と関係があるとの研究が存在する(Poran(1995) )。
- 月経周期とγ-ラクトンとの関係を調べた研究(村松ら(2022) )によると、①月経開始日から3,5,7日目まで(期間A)、②排卵日から遡って2,3,4日前(期間B)④排卵日⑤21日目(期間C)に期間を分けると、期間Aや期間Cよりも期間BやLHサージ期、排卵日にγ-ラクトンが多く放散される傾向が見られた。γ-ラクトンの生成にはエストロゲンが関係している可能性がある。
- 別の研究において女性被験者(21歳)が無香料席巻を使用しながら、5日間朝の入浴前後にγ-ラクトンを計測したところ、入浴前後では有意な変化が無かった。そのため、γ-ラクトンは皮膚表面反応由来ではなく、体内で生成したものが血液由来で放散すると考えられる。
- 皮膚から放散するγ-ラクトンの生成には、ミトコンドリアにおける脂肪酸のβ酸化が関係していると考えられる。
(続く)
