投資理論を以下の書籍
をベースに学ぶこととする。
今回のまとめ
- 多期間モデルの一般的性質を調べます。
10. 多期間における最適消費と最適投資の意思決定
多期間における効用関数として冪型もしくはその特殊ケースとしての対数型の1期間効用関数に基づく多期間の期待効用関数を考えなければ、最適投資比率は最適消費と独立には決定できない。したがって異なる状態間および異なる時点間のリスク回避を分断した再帰的効用関数においても、両者を独立に決定することは困難であると考えられてきた。
しかし-効用と対数正規分布に従う収益の仮定の下で、線形対数近似を用いることで多期間における最適消費と最適投資の近似解析解を求めることができるようになった。
10.2 時点T-1における最適消費と最適投資の決定:一般的ケース
価値関数において、時点を(最終時点の1時点前)と仮定する。このとき
である。
10.2.1 最適消費
まず消費に関する最適化の1階条件を求める。に関して目的関数を偏微分してとおくと、
で、これの解をとしとおくと、更に
と書き換えることができる。
これを解くべく、まずはについて
である。投資額が消費の関数であることから、
を得、これを最適化条件に代入することで、最適消費および(最適とは限らない)ポートフォリオウェイトの非線形関数で表される最適消費に関する1階条件
を得る。
10.2.2 最適投資
次に最適なポートフォリオを決定すべく、最大化問題
の目的関数
において、消費を最適消費に置き換えた
をについて偏微分して1階条件を求めると、
であり、で両辺を割ることで
を得る。他にも
と変形することもできる。
ただし
である。
またおよびに狭義の凸関数であることを仮定しているため、2階条件を満たすのは自明である。
さてここまで最適投資の満たす1階条件下における最適消費の1階条件は、と置き換えることで
と表現できる。
ここまでの条件を整理すれば、
を得る。1期間効用関数および遺産関数の関数形を定め、条件付き期待値を計算できるようにリスク資産のリターンの確率分布および状態変数ベクトルの確率分布を特定できれば、最適な意思決定を求めることができる。このようにこの組は2本の関数方程式によって同時に決定され、それは相互に依存することを意味する。したがって両変数を他の変数から独立した関数として明示的な解析解を得ることは基本的に困難である。