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長期投資の理論と実践(21/X)

 投資理論を以下の書籍

をベースに学ぶこととする。


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今回のまとめ

  • 多期間の消費と投資に関わる意思決定問題では、価値関数という概念を用いて、最適な消費と貯蓄の決定および最適ポートフォリオ選択を分析する。
  • 時点tにおける価値関数は、その時点における富を所与として、消費とポートフォリオを最適に決定した上で、時点tに続く将来における消費とポートフォリオをすべて最適に決定した場合に得られる、最大化された生涯効用の時点tにおける価値を表す。
  • リターンベクトル
    \begin{aligned}\tilde{\boldsymbol{r}}_{t+1}=\tilde{\boldsymbol{r}}_{t+1}\left(\tilde{\boldsymbol{X}}_{t+1}\right)=\begin{bmatrix}\tilde{r}_{f,t+1}\left(\tilde{\boldsymbol{X}}_{t+1}\right)\\\tilde{r}_{1,t+1}\left(\tilde{\boldsymbol{X}}_{t+1}\right)\\\vdots\\\tilde{r}_{n,t+1}\left(\tilde{\boldsymbol{X}}_{t+1}\right)\end{bmatrix}\end{aligned}
    の下で価値関数J
    \begin{aligned}J\left(W_t,\boldsymbol{X}_t,\boldsymbol{t}_t,t\right)=\displaystyle{\max_{C_s,\omega_i,s}E_t\left[\sum_{s=t}^{T-1}u\left(\tilde{C}_s,s\right)+B\left(\tilde{W}_T,T\right)\right]}\end{aligned}
    で定義する。

10. 多期間における最適消費と最適投資の意思決定

 多期間における効用関数として冪型もしくはその特殊ケースとしての対数型の1期間効用関数に基づく多期間の期待効用関数を考えなければ、最適投資比率は最適消費と独立には決定できない。したがって異なる状態間および異なる時点間のリスク回避を分断した再帰的効用関数においても、両者を独立に決定することは困難であると考えられてきた。
 しかし\mathrm{Epstein}-\mathrm{Zin}効用と対数正規分布に従う収益の仮定の下で、線形対数近似を用いることで多期間における最適消費と最適投資の近似解析解を求めることができるようになった。

10.1 多期間モデルの一般的性質

10.1.3 価値関数

 多期間の消費と投資に関わる意思決定問題では、価値関数*1という概念を用いて、最適な消費と貯蓄の決定および最適ポートフォリオ選択を分析する。時点tにおける価値関数は、その時点における富を所与として、消費とポートフォリオを最適に決定した上で、時点tに続く将来における消費とポートフォリオをすべて最適に決定した場合に得られる、最大化された生涯効用の時点tにおける価値を表す。
 価値関数を定義すべく、まず状態変数ベクトル\boldsymbol{X}_t=\begin{bmatrix}X_{1,t},&\cdots,&X_{k,t}\end{bmatrix}を定義する。これは投資機会集合を記述し、無リスク資産を含むすべての金融資産の投資リターンの変動をもたらす経済変数等の要因をベクトル表示したものである。ここではベクトルがk個の要因から構成されると仮定している。ここでは\boldsymbol{X}_tの各成分は各期の無リスク資産に変動を与え、リスク資産の期待リターンと分散のみならず、リスク資産投資リターンの確率分布自体に影響を及ぼし得ると想定している。ここでは\boldsymbol{X}_tはその時点の情報集合に含まれる実数のベクトルではあるが、これらの実現値がすべて観測可能であると仮定する。


 価値関数を定義するとき、状態変数ベクトルの各成分は\mathrm{Markov}過程であると仮定する。すなわち時点tにおける情報の下での\tilde{\boldsymbol{X}}_{t+1}の条件分布が、時点tにおける実現値\boldsymbol{X}_tのみの条件付き確率分布となるような確率過程であり、それより前の実現値の情報は影響しない。
 次に投資対象となる資産の投資リターンについて、まず多期間モデルにおける投資家は、第t期期初の時点tにどの世の中の状態が実現したかを確認した上で、ポートフォリオを構築すると考える。このとき投資可能なn銘柄ののリスク資産の投資リターン\tilde{r}_{t,t+1},i\in\{1,\cdots,n\}は1時点将来である時点t+1において実現する世の中の状態に応じてその実現値が定まると考えるため、確率変数となる。

 一方で、第t期中のリスクフリーレートr_{f,t}は、時点tにおいて実現した世の中の状態に応じて定まっており、時点t+1においても確定値r_{f,t}である。したがって多期間モデルでは区間(t,t+1]では確定値である一方で、t+1期になるとその期初時点t+1の直後には新しい1期間リスクフリーレートが区間(t+1,t+2]について定まるため、第t期においては次期のリスクフリーレートは確率変数\tilde{r}_{f,t}として認識される。したがって第t期期初において利用可能な金融資産は、時点t+1に投資リターンが実現するn銘柄のリスク資産と、第t期間中は確定値で与えられる無リスク資産を合わせてn+1種類存在することになる。そこで


\begin{aligned}
\tilde{\boldsymbol{r}}_{t+1}=\begin{bmatrix}\tilde{r}_{f,t+1}\\\tilde{r}_{1,t+1}\\\vdots\\\tilde{r}_{n,t+1}\end{bmatrix}
\end{aligned}

を導入する。多期間ではすべての資産の投資リターンが状態変数に依存して変動するから、\mathrm{Markov}性の仮定から、


\begin{aligned}
\tilde{\boldsymbol{r}}_{t+1}=\tilde{\boldsymbol{r}}_{t+1}\left(\tilde{\boldsymbol{X}}_{t+1}\right)=\begin{bmatrix}\tilde{r}_{f,t+1}\left(\tilde{\boldsymbol{X}}_{t+1}\right)\\\tilde{r}_{1,t+1}\left(\tilde{\boldsymbol{X}}_{t+1}\right)\\\vdots\\\tilde{r}_{n,t+1}\left(\tilde{\boldsymbol{X}}_{t+1}\right)\end{bmatrix}
\end{aligned}

と表現できるこのリターンベクトルは、\boldsymbol{r}_{t}=\boldsymbol{r}_{t}\left(\boldsymbol{X}_{t}\right)のみに依存する。

10.1.4 価値関数の定義と最適ポートフォリオ

 以上の仮定をおくと、価値関数を定めるパラメータは時点tにおける状態変数ベクトル\boldsymbol{X}_tと無リスク資産およびリスク資産の投資リターン実現値\boldsymbol{r}_t、更には富の水準W_tに時点tであり、価値関数J


\begin{aligned}
J\left(W_t,\boldsymbol{X}_t,\boldsymbol{t}_t,t\right)=\displaystyle{\max_{C_s,\omega_i,s}E_t\left[\sum_{s=t}^{T-1}u\left(\tilde{C}_s,s\right)+B\left(\tilde{W}_T,T\right)\right]}
\end{aligned}

で定義される。ここで演算子E_t\left[\cdot\right]は時点tにおける情報の下での条件付き期待値を表す。最大化における変数C_s,\omega_i,sは選択変数である。
 この問題を考えるに当たっては、時点T-1における最適な消費と最適ポートフォリオの決定方法から考えることにする。なぜならば、消費者が翌時点で死去するため、1期間モデルとして議論できるからである。

*1:最適化問題における最大値関数、経済学における誘導効用関数を指す。

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