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一流の大人(ビジネスマン、政治家、リーダー…)として知っておきたい、教養・社会動向を意外なところから取り上げ学ぶことで“気付く力”を伸ばすブログです。データ分析・語学に力点を置いています。 →現在、コンサルタントの雛になるべく、少しずつ勉強中です(※2024年1月21日改訂)。

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長期投資の理論と実践(19/X)

 投資理論を以下の書籍

をベースに学ぶこととする。

power-of-awareness.com

今回のまとめ

  • 投資機会集合の変容は、

      ①リスクフリーレートの期間ごとの変化

      ②リスク・プレミアムの変化

      ③リスク資産の価格が長期的に平均回帰性(ないし平均乖離性)を持つこと

      ④インフレ進行により金融商品の実質的リターンが変化すること

    を受けて、すべての金融資産リターンの同時確率分布が変化することに集約できる。
  • 平均回帰性ないし平均乖離性などの自己相関の有無は、投資家の行動に影響を及ぼし得る。

9. ライフサイクルとパーソナル・ファイナンス

9.8 投資機会集合の変容

 多期間投資における問題の1つである、投資機会集合の変化に対する基本的な対応を考える。
 投資機会集合の変容とは、

  ①リスクフリーレートの期間ごとの変化

  ②リスク・プレミアムの変化

  ③リスク資産の価格が長期的に平均回帰性(ないし平均乖離性)を持つこと

  ④インフレ進行により金融商品の実質的リターンが変化すること

を受けて、すべての金融資産リターンの同時確率分布が変化することに集約できる。

9.8.1 リスクフリーレートの変化をどう扱うか

 多期間モデルでは、期初・期末の概念をより明確に規定すべく、無リスク資産を「ある期の期初に立ったときに次期の期初における収益がそのときに実現し得るすべての世の中の状態において同一であるような資産」と定義しなおす。
 リスクフリーレートは、ある期間の期初においてはその期間の値が確定する。しかし翌期ないし翌々期の値は未確定である。こうした異時点間の変化が投資の意思決定に影響する。

9.8.2 リスク資産リターンの平均回帰性

 現在の投資実務では、平均・分散アプローチに基づく1期間モデルを用いるか、同一の投資機会集合の下で同じ1期間モデルを繰り返すことが多い。その場合、たいていは株式リターンを独立かつ同一に正規分布に従う確率変数と仮定し、それらの標本平均によりリターンを、標本分散(標本誤差)によりリスクを推定・表現する。こうした仮定では、真の期待値と分散が異なる期間であっても不変であると仮定することになる。他方で多期間モデルではどのように考えるべきなのか。

 いま投資家がある時点t\geq0にいると仮定する。このとき時点t+1で確定する期間[t,t+1]におけるリターンを\tilde{r}_{p,t+1}とおき、その翌期のリターンを\tilde{r}_{p,t+2}とおく。

 多期間において現実に観察されるリターンの分散が各期の投資リターンに独立かつ同一の分布に従うと仮定した場合に予測される分散よりも小さくなることと定義すると、
 r_{p,t+1}が非常に小さい(もしくは大きい)値を取ったときにr_{p,t+2}が大きい(もしくは非常に小さい)値を取る傾向があるならば、長期間・多期間の投資ホライズンにおいて、投資リターンの分散は平均回帰性をもち、そのような場合には共分散\mathrm{Cov}\left[\tilde{r}_{p,t+1},\tilde{r}_{p,t+2}\right]は独立かつ同一の分布に従うと仮定したときよりも小さくなる。
 より一般に、投資リターンの確率過程に自己相関がある場合、ある期の株式リターンの実現値が観測されたとき、次期の投資リターンの条件付き期待値は、その実現値に依存して変化する。自己相関がある場合、各期の投資リターンの実現値の情報を用いて予測した投資リターンの次期の期待値は、自己相関が無いと仮定した場合とは結果が変わってくる。
 これに対して投資リターンが独立かつ同一の分布に従うと仮定した場合、自己相関はなく、次期の投資リターンの期待値は今期の実現値には依存せず、投資リターンの分散は時間に比例して増大する。平均回帰性が存在しない場合であっても投資ホライズンの長期化に伴って1期間あたりの標準偏差は分散の増加程には増加しないという誤謬(時間分散の誤謬)が生じる。

 もし投資リターンが平均回帰性(ないし平均回帰性)を持つ場合、冪型ないし対数型の効用関数を仮定するかで投資行動が変化する。
 対数型効用を持つ場合、投機投資であっても1期間先のみを見据えた投資行動を反復することになり、2期間以上の投資ホライズンに対して平均回帰性(平均乖離性)を持つとしても、その情報は投資行動には全く反映されない。これに対して冪型効用の投資家では投資機会集合の変容に対して遠い将来までを視野に入れて期待効用の最大化を図る。

 平均回帰性の下では、相対定期リスク回避度\gamma=1の対数型効用を挟んで、\gamma\gt1な冪型効用の投資家は投資ホライズンが長期化するほどリスク資産への投資比率を増大させ、\gamma\lt1であるような冪型効用を持つ投資家はリスク資産への投資比率を減少させる。

9.9 小括

 多期間モデルでは、2つの問題、すなわち1. 2種類のリスクの対応(①異なる状態間の消費変動リスク、②異なる時点間の消費変動リスク)および2. 異時点間での投資機会集合の変化への対応がある。
 前者では、投資家はこれら2つの類型のリスクをいずれも回避しようとするが、標準的な期待効用理論ではこれらのリスクを分離して考慮できない。そこで\mathrm{Kreps}-\mathrm{Porteus}形の再帰的効用関数、特に\mathrm{Epstein}-\mathrm{Zin}の効用関数を導入する。
 後者では、投資機会集合の変容は異なるライフステージ間の消費変動リスクをもたらす要因になり、多期間の投資決定においてリスク資産への投資比率を左右する。

 さらには、リスク・プレミアムの変動およびそれに伴うリスク資産間の共分散構造の変化および労働所得の現在価値(人的資産)の変化も影響を及ぼし得る(これらは以後で検討しない。)。

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