統計学に習熟するには線形代数の習得が不可欠である。が、初等的な線形代数ではカバーしきれないような分野も存在する。そこで以下の参考書
を基により高等な線形代数を学ぶ。
5. 一般化逆行列
5.2 Moore-Penrose形一般逆行列の性質
定理5.6 対称行列の-形一般逆行列 を次対称行列とすれば、 (a) もまた対称行列である。 (b) (c) が冪等行列ならばである。
を得る。
次に-形一般逆行列の定義から、が対称行列であることと、直上で示したことから
を得る。
最後にが冪等行列、すなわちであると仮定する。このときが-形一般逆行列の定義を満たすことを示せばよい。まず
より1つ目と2つ目の条件を満たすことが示され、また
で3つ目および4つ目の条件が示されたことで、自身がの-形一般逆行列であることが示された。 )
(定理5.2)-形一般逆行列の一意性を示す過程で、任意の行列の-形逆行列が、元の行列の特異値分解に含まれる成分の観点から簡便に表現され得る。更に対称行列の場合、元の行列のスペクトル分解の成分、すなわち固有値および固有ベクトルの観点から-形逆行列を表現できる。これを考えるに先立ち、対角行列の-形逆行列を考える。
( -形逆行列の定義を満たすことを調べればよい。
であり、であるから、が成り立つ。
次に
であり、であるから、が成り立つ。
また対角行列が対称行列であること、およびが定義より対角行列であることに注意すれば、
が得られることで、題意は示された。
( とし、を値の大きい順に定義したものとする。このとき
である。が行列になるようにと分割し、のようにブロック対角形式に分割する。ここでとおいた。
このときのスペクトル分解は、
で与えられる。同様にを上記のように表現することでを得る。これらからであるから、
が得られる。これは明らかに対称であるから、が成り立つ。同様にであり、も成り立つ。
さらに
が成り立つ。以上の4つは-形逆行列の定義に他ならない。 )