統計学に習熟するには線形代数の習得が不可欠である。が、初等的な線形代数ではカバーしきれないような分野も存在する。そこで以下の参考書
を基により高等な線形代数を学ぶ。
5. 一般化逆行列
5.3 行列積のMoore-Penrose形一般逆行列
( は最大列階数では最大行階数であるから、で、である。したがってが成り立つ。更に
であるから、これらの行列は対称である。したがってはの-型一般化逆行列である。 )
定理5.9は有用ではあるものの、の分解のための十分条件した与えないという欠点がある。以下の定理はこの分解が成り立つための必要十分条件を与える。
定理5.10 -型一般化逆行列の積が可換な必要十分条件 を行列、を行列とする。このときのための必要十分条件は以下のそれぞれである。
- およびが成り立つこと。
- およびが対称行列であること。
- であること。
- およびであること。
更に積が定義できるようなすべての行列に対して成立するようなの一般表現を求める。そのためにを満たすように、をに変換することを考える。
定理5.11 積の一般表現 を行列、を行列とする。このときかつならばかつである。
であるから、1つ目は成り立つ。
2つ目を示すべく、定理5.10の1番目、すなわち
が成り立つことを示す。
まず
である。これらのうち2つ目の式の転置を取り、-型一般逆行列の定義および上の1つ目の式より
であり、したがって
が成立する。これは定理5.10の1番目の恒等式に他ならない。同定理の2番目の恒等式は
に注目し、この式の両辺にを右から掛けることで
が得られる。 )