統計学に習熟するには線形代数の習得が不可欠である。が、初等的な線形代数ではカバーしきれないような分野も存在する。そこで以下の参考書
を基により高等な線形代数を学ぶ。
前回
5. 一般化逆行列
5.2 Moore-Penrose形一般逆行列の性質
5.2.2 射影行列とMoore-Penrose形一般逆行列
行列の列がベクトル空間における基底を形成しているならば、の射影行列は、
で与えられる。このとき定理5.3 より
で得られる。
例:2次形式と-形逆行列
-形逆行列は、正規確率ベクトルの2次形式を構成する際に有用であり、その2次形式は分布に従う。
標本統計量が得られたときに、次母数ベクトルに対して仮説検定を考える。
もしが正定値ならば、統計量を考えればよい。
いまがを満たす任意の次正方行列であり、と定義すると、であるから、である。したがってはそれぞれ独立かつ同一に正規分布に従うから、
は自由度の分布に従う。この分布はならば中心分布に、宋でなければ非心分布に従う。したがってが充分に大きければ帰無仮説を棄却する。
他方でが半正定値である場合には、が半正定値である場合、-形逆行列を用いることで上述の議論を一般化できる。この場合、もしであり、またであるから、はであるため、である。したがっては独立かつ同一に正規分布に従うから
は分布に従い、ならば、これは自由度の中心分布である。