統計学に習熟するには線形代数の習得が不可欠である。が、初等的な線形代数ではカバーしきれないような分野も存在する。そこで以下の参考書
を基により高等な線形代数を学ぶ。
4. 行列の因数分解と行列ノルム
4.5 Jordan分解
対角行列でなくとも可能な限り対角行列に近いような、の相似な行列を見つけるための方法が標準形である。
標準形 に対して次正方行列が以下の形態
を取るとき、標準形という。
は唯一の線形独立な固有ベクトルを持ち、それはの形を取っている。
は、もしに対してならば、分解定理によりは対角化可能である。しかし次正方行列はただ1つの線形独立な固有ベクトルを持つため、標準形は個の線形独立な固有ベクトルを持つ。したがって少なくとも1つのについてならばは対角行列ではない。が対角行列である場合に限りは対角化可能である。
4.6 Schur分解
任意の正方行列のスペクトル分解定理のもう1つの一般化として分解がある。
スペクトル分解定理
で用いた直交行列に焦点を当てる。直交行列に話を限定したとき、として得られる最も単純な形態はどのようなものか。任意の実正方行列について、が三角行列であるようなが見つかることは分かっている。では実ユニタリ行列は直交行列であるようなユニタリ行列に拡張したらどうなるか。それが分解である。
( をの固有値とする。またをを満たすようなに対応するの固有ベクトルとする。さらにを最初の列にを持つ任意の次ユニタリ行列だとする。と表記すれば、およびに注意すれば、
である。ここで次正方行列である。これらからの特性方程式は
である。またの固有値はの固有値と同じであるから、の固有値はでなければならない。もしならばは上三角行列になる。またならば帰納法により示すことができる。すなわち次正方行列において結果が成り立つと仮定すると、は次正方行列であるからとなるようなユニタリ行列が存在すると仮定しても良い。ここでは対角成分がであるような上三角行列である。次正方行列を
と定義する。はユニタリ行列であるから、もユニタリ行列である。ここでとすればもまたユニタリ行列であり、
が成り立ち、この最後の行列はその対角成分にを持つ上三角行列である。したがって題意は示された。 )