定番書
を基に線形代数を学び直していく。
今日のまとめ
5. 固有値と固有ベクトル
5.2 Unitary空間の正規変換
前回述べた
Unitary空間と随伴変換 次元Unitary空間の2つの線形変換が交換可能ならば、以下を満たすようなの部分空間列が存在する:
(1) は-不変かつ-不変である;
(2) ;
(3)
を行列の言葉に変換すると以下のようになる。
Unitary空間と随伴変換(行列による表現) 2つの正方行列が交換可能ならば、が共に上三角行列になるような適当なUnitary行列が存在する。特にとして任意の正方行列に対してが上三角行列になるようなUnitary行列が存在する。
とすれば、それらはに他ならない。 )( が共に上三角行列になるようにを選べば
が成り立つから、主張は正しい。 )
対角行列と正規変換 Unitary空間の線形変換が適当な正規直交基底に関して対角行列によって表現されるためにはが正規変換であることが必要かつ十分である。
逆にある積直交基底に関するの行列が対角行列ならば、であるからが成立する。 )
この定理は行列の言葉を用いて以下のように言い換えることが出来る。
( の固有ベクトルのみから構成される正規直交基底が存在する。このうち固有値に対応する固有ベクトルのみから張られる部分空間が対応する固有空間であるから、主張は正しい。 )Unitary空間の部分空間に対しての直交補空間をとすれば、
が成り立つ。このときは線形変換である。これをのへの射影子という。
( がの射影子であるならば、は明らかである。をと表せば、
が成り立ち、となる。
逆にがを満たすと仮定する。とおくとき、に対してと書けるから、
が成り立つ。またに対してであるから、に対して
が成り立ち、である。したがってに対して
が成立する。 )
射影子は「固有値がすべてまたはであるようなHermite変換」だと言うことができる。
( が直交するならば、であるから、である。逆にならばに対して
が成り立ち、これはについても成り立つ。
がの正規変換であるとき、の相違するすべての固有値、これらそれぞれに対応する固有空間をとするとき、上で示した定理からはそれぞれ互いに直交し、
が成り立つ。
からへの射影子をとすれば
が成り立つ。これを正規変換のスペクトル分解という。
スペクトル分解は一意である。実際、射影子によるもう1つのスペクトル分解
があるとする。がそれぞれ部分空間への射影子であるとすれば、のへの制限はいずれもスカラー変換であるから、である。したがってでなければならない。
逆に条件
を満たすような射影子があるとき、線形変換
は正規変換である。実際、
が成り立つ。
Hermite変換・Unitary変換と固有値の関係 が正規変換であるとき、
とすれば、
である。ここから1番目の命題は直ちに得られる。
また
であるから2番目の命題が得られる。 )