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やりなおしの数学・線形代数篇(19/26)

 定番書

を基に線形代数を学び直していく。

今日のまとめ

  • 線形空間Vに正規変換Tが定義されているとき、線形空間VTの相違なるすべての固有値にそれぞれ対応する固有空間の直和で表すことが出来、更にTVから各固有空間への射影子の固有値による線形結合で表すことが出来る。その射影子の和は恒等変換であり異なる固有空間への射影子の積は0である。このTを射影子の線形結合で表す方法をスペクトル分解という。

5. 固有値固有ベクトル

5.2 Unitary空間の正規変換

 前回述べた


Unitary空間と随伴変換 n次元Unitary空間Vの2つの線形変換T,Sが交換可能ならば、以下を満たすようなVの部分空間列\{W_i\}_{i=1}^{n}が存在する:
(1) W_i,i=1,2,\cdots,nT-不変かつS-不変である;
(2) \{\boldsymbol{0}\}=W_0\subset W_1\subset\cdots\subset W_n=V
(3) \dim W_i=\dim W_{i-1}+1, i=1,2,\cdots,n

を行列の言葉に変換すると以下のようになる。


Unitary空間と随伴変換(行列による表現) 2つの正方行列A,Bが交換可能ならば、U^{-1}AU,U^{-1}BUが共に上三角行列になるような適当なUnitary行列Uが存在する。特にA=Bとして任意の正方行列Aに対してU^{-1}AUが上三角行列になるようなUnitary行列Uが存在する。
(\because 前述の定理においてV=\mathbb{C}^n,T=T_A,S=T_Bとする。i=1,2,\cdots,nに対して\boldsymbol{u}_i\in W_i\ s.t.\ \|\boldsymbol{u}_i\|=1\land {}^{\forall}\boldsymbol{w}_{i-1}\in\ W_{i-1}((\boldsymbol{w}_{i-1},\boldsymbol{u}_i)=0)を取れば、\mathbb{C}^nの正規直交基底\boldsymbol{u}_1,\cdots,\boldsymbol{u}_nに関するT_A,T_Bの行列は共に上三角行列である。
 U=(\boldsymbol{u}_1,\cdots,\boldsymbol{u}_n)とすれば、それらはU^{-1}AU,U^{-1}BUに他ならない。 \blacksquare)


交換可能性と固有値の和積(1) A,Bが交換可能ならば、A+B,AB固有値はそれぞれA固有値B固有値の和および積である。
(2) A固有値を重複を込めて\alpha_1,\cdots,\alpha_nとすればA^k固有値\alpha_1^k,\cdots,\alpha_n^kである。
(\because U^{-1}AU,U^{-1}BUが共に上三角行列になるようにUを選べば

\begin{aligned}
U^{-1}(A+B)U&=U^{-1}AU+U^{-1}BU,\\
U^{-1}(AB)U&=(U^{-1}AU)(U^{-1}BU)
\end{aligned}

が成り立つから、主張は正しい。 \blacksquare)


対角行列と正規変換 Unitary空間Vの線形変換Tが適当な正規直交基底に関して対角行列によって表現されるためにはTが正規変換であることが必要かつ十分である。
(\because TT^{*}=T^{*}Tが成り立つならば、前述した定理から適当な正規直交基底に関するT,T^{*}の行列A,A^{*}={}^{t}\bar{A}は共に上三角行列になる。{}^{t}\bar{A}が上三角ならばAは下三角であるから、結局Aは対角行列でなければならない。
 逆にある積直交基底に関するTの行列Aが対角行列ならば、AA^{*}=A^{*}AであるからTT^{*}=T^{*}Tが成立する。 \blacksquare)

 この定理は行列の言葉を用いて以下のように言い換えることが出来る。


対角行列と正規変換(行列による表現) 正方行列Aに対してU^{-1}AUが対角行列になるようなUnitary行列Uが存在することの必要十分条件Aが正規行列であることである。


Unitary空間と各固有空間 Unitary空間Vの正規変換Tの相違する固有値に対応する各固有ベクトルは互いに直交し、更にVはこれらの直和で表される。
(\because T固有ベクトルのみから構成される正規直交基底\boldsymbol{e}_1,\cdots,\boldsymbol{e}_nが存在する。このうち固有値\beta_i,i=1,2,\cdots,kに対応する固有ベクトルのみから張られる部分空間が対応する固有空間W_iであるから、主張は正しい。 \blacksquare)

 Unitary空間Vの部分空間Wに対してWの直交補空間をW^{\perp}とすれば、


\begin{aligned}
{}^{\forall}\boldsymbol{x}\in V\left({}^{!\exists}\boldsymbol{x}^{\prime}\in W,{}^{!\exists}\boldsymbol{x}^{\prime\prime}\in W^{\perp}\ s.t.\ \boldsymbol{x}=\boldsymbol{x}^{\prime}+\boldsymbol{x}^{\prime\prime}\right)
\end{aligned}

が成り立つ。このときP:W\rightarrow W,\boldsymbol{x}\mapsto \boldsymbol{x}^{\prime}は線形変換である。これをVWへの射影子という。


射影子と線形変換の関係 線形空間Vの線形変換Pがそれのある部分空間Wへの射影子であるためには、

\begin{aligned}
P^2=P,\ \ P^{*}=P
\end{aligned}
であることが必要かつ十分である。
(\because PWの射影子であるならば、P^2=Pは明らかである。\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}\in V

\begin{aligned}
\boldsymbol{x}&=\boldsymbol{x}^{\prime}+\boldsymbol{x}^{\prime\prime},\boldsymbol{x}^{\prime}\in W,\ \ \boldsymbol{x}^{\prime\prime}\in W^{\perp}\\
\boldsymbol{y}&=\boldsymbol{y}^{\prime}+\boldsymbol{y}^{\prime\prime},\boldsymbol{y}^{\prime}\in W,\ \ \boldsymbol{y}^{\prime\prime}\in W^{\perp}
\end{aligned}

と表せば、


\begin{aligned}
(P\boldsymbol{x},\boldsymbol{y})&=(\boldsymbol{x}^{\prime},\boldsymbol{y}^{\prime}+\boldsymbol{y}^{\prime\prime})\\
&=(\boldsymbol{x}^{\prime},\boldsymbol{y}^{\prime})+(\boldsymbol{x}^{\prime},\boldsymbol{y}^{\prime\prime})\\
&=(\boldsymbol{x}^{\prime},\boldsymbol{y}^{\prime})\\
&=(\boldsymbol{x}^{\prime}+\boldsymbol{x}^{\prime\prime},\boldsymbol{y}^{\prime})\\
&=(\boldsymbol{x},P\boldsymbol{y})
\boldsymbol{}
\end{aligned}

が成り立ち、P^{*}=Pとなる。
 逆にPP^2=P,\ \ P^{*}=Pを満たすと仮定する。W=P(V)とおくとき、\boldsymbol{x}^{\prime}\in Wに対して{}^{\exists}\boldsymbol{x}_0\in V\ s.t.\ \boldsymbol{x}^{\prime}=P\boldsymbol{x}_0と書けるから、


\begin{aligned}
P\boldsymbol{x}^{\prime}=P(P\boldsymbol{x}_0)=P^2\boldsymbol{x}_0=P\boldsymbol{x}_0=\boldsymbol{x}^{\prime}
\end{aligned}

が成り立つ。また{}^{\forall}\boldsymbol{y}\in Vに対してP\boldsymbol{y}\in Wであるから、\boldsymbol{x}^{\prime\prime}\in W^{\perp}に対して


\begin{aligned}
(P\boldsymbol{x}^{\prime\prime},\boldsymbol{y})=(\boldsymbol{x}^{\prime\prime},P\boldsymbol{y})=0
\end{aligned}

が成り立ち、P\boldsymbol{x}^{\prime\prime}=\boldsymbol{0}である。したがって\boldsymbol{x}=\boldsymbol{x}^{\prime}+\boldsymbol{x}^{\prime\prime},\boldsymbol{x}^{\prime}\in W,\boldsymbol{x}^{\prime\prime}\in W^{\perp}に対して


\begin{aligned}
P\boldsymbol{x}=P\boldsymbol{x}^{\prime}+P\boldsymbol{x}^{\prime\prime}=\boldsymbol{x}^{\prime}
\end{aligned}

が成立する。 \blacksquare)

 射影子は「固有値がすべて1または0であるようなHermite変換」だと言うことができる。


射影子と部分空間・直交補空間 W_1,W_2線形空間Vの2つの部分空間、P_1,P_2をそれぞれW_1,W_2への射影子とする。W_1,W_2が直交するためには、P_1P_2=0が成り立つことが必要かつ十分である。
(\because W_1,W_2が直交するならば、W_2\subset W_1^{\perp}であるから、

\begin{aligned}
P_2P_1\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}
\end{aligned}

である。逆にP_1P_2=0ならば\boldsymbol{x}_1\in W_1,\boldsymbol{x}_2\in W_2に対して


\begin{aligned}
(\boldsymbol{x}_1,\boldsymbol{x}_2)=(P_1\boldsymbol{x}_1,P_2\boldsymbol{x}_2)=(\boldsymbol{x}_1,P_1P_2\boldsymbol{x}_2)=0
\end{aligned}

が成り立ち、これはP_2P_1についても成り立つ。 \blacksquare

 TVの正規変換であるとき、Tの相違するすべての固有値\beta_1,\cdots,\beta_k、これらそれぞれに対応する固有空間をW_1,\cdots,W_kとするとき、上で示した定理からW_1,\cdots,W_kはそれぞれ互いに直交し、


\begin{aligned}
V=W_1\oplus W_2\oplus\cdots\oplus W_k
\end{aligned}

が成り立つ。
 VからW_iへの射影子をP_iとすれば


\begin{aligned}
P_1+P_2+\cdots+P_k&=I,\\
P_iP_j&=0,\ i\neq j\\
T&=\beta_1P_1+\cdots+\beta_kP_k
\end{aligned}

が成り立つ。これを正規変換Tスペクトル分解という。
 スペクトル分解は一意である。実際、射影子P_1^{\prime},\cdots,P_k^{\prime}によるもう1つのスペクトル分解


\begin{aligned}
P_1^{\prime}+\cdots+P_k^{\prime}&=I,\\
P_i^{\prime}P_j^{\prime}&=0,\ i\neq j\\
T&=\beta_1P_1^{\prime}+\cdots+\beta_kP_k^{\prime}
\end{aligned}

があるとする。P_i,P_i^{\prime}がそれぞれ部分空間W_i,W_i^{\prime}への射影子であるとすれば、TW_i,W_i^{\prime}への制限はいずれもスカラー変換\beta_i Iであるから、W_i=W_i^{\prime}である。したがってP_i=P_i^{\prime}でなければならない。
 逆に条件


\begin{aligned}
P_1^{\prime}+\cdots+P_k^{\prime}&=I,\\
P_i^{\prime}P_j^{\prime}&=0,\ i\neq j
\end{aligned}

を満たすような射影子P_1,\cdots,P_kがあるとき、線形変換


\begin{aligned}
T=\beta_1P_1+\cdots+\beta_kP_k
\end{aligned}

は正規変換である。実際、


\begin{aligned}
TT^{*}=\beta_1\bar{\beta}_1P_1+\cdots+\beta_k\bar{\beta}_kP_k=T^{*}T
\end{aligned}

が成り立つ。


Hermite変換・Unitary変換と固有値の関係 Tが正規変換であるとき、

  • TがHermite変換である\Leftrightarrow固有値がすべて実数である。
  • TがUnitary変換である\Leftrightarrow固有値がすべて絶対値が1であるような複素数である。

(\because Tのスペクトル分解を

\begin{aligned}
T=\beta_1P_1+\cdots+\beta_kP_k
\end{aligned}

とすれば、


\begin{aligned}
T^{*}=\bar{\beta}_1P_1+\cdots+\bar{\beta}_kP_k
\end{aligned}

である。ここから1番目の命題は直ちに得られる。
 また


\begin{aligned}
TT^{*}=(\beta_1P_1+\cdots+\beta_kP_k)(\bar{\beta}_1P_1+\cdots+\bar{\beta}_kP_k)=|\beta_1|^2P_1+\cdots+|\beta_k|^2P_k
\end{aligned}

であるから2番目の命題が得られる。 \blacksquare)

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