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マクロ経済学(7/17)開放経済における長期経済

 基本的な経済観念を身に付けるべく、マクロ経済学を学んでいく。テキストは古典派をしっかりと扱っているという

を用いることにする。

7.  開放経済での長期の経済分析

7.1  開放経済のマクロ経済モデルの特徴

 海外との財・サービスや資金の取引を考慮に入れた場合にGDPや利子率、物価水準はどのように決定されるか。また経済政策の変更や生産技術のショックは経済にどのように影響を与えるか。外国との輸出入が決 定される仕組み、自国の財や貨幣が好感される比率も考慮する。
 閉鎖経済との比較で以下を仮定する:

  • 自国は小国である:外国の経済活動に影響を与えない
  • 外国の経済活動に関する不確実性は存在しない
  • 国際間で資本はコストなしに移動可能である:国際間で移動可能な財・サービスを貿易財、そうでないものを非貿易財という

●外生変数

  • 第1期の資本ストックK_1
  • 第1期と第2期の政府支出(G_1,G_2)と税収(T_1,T_2)
  • 第1期と第2期の名目為替量(M_1,M_2)
  • 外国の実質利子率r^Sと物価水準P^S

●内生変数

  • 第1期と第2期の実質GDP(Y_1,Y_2)
  • 第1期と第2期の物価水準(P_1,P_2)
  • 自国の実質利子率r
  • 名目為替レートeと実質為替レート\varepsilon

7.2 開放経済の資金市場

 開放経済における第1期の財市場での均衡条件


\begin{aligned}
Y_1=C_1+I+G_1+NX_1
\end{aligned}

に(第一次・第二次)所得収支IB_1を考慮することで


\begin{aligned}
Y_1+IB_1=C_1+I+G_1+NX_1+IB_1
\end{aligned}

が成り立つ。GDPと所得収支の和は国民総所得GNI、純輸出と所得収支の和は経常収支CAであるからT_1を徴税額として


\begin{aligned}
GNI_1-T_1-C_1=I+G_1-T_1+CA_1
\end{aligned}

したがって国民民間貯蓄=設備投資+財政赤字+対外純資産の増加である。
 すなわち、民間の貯蓄は、民間の民間の資金余剰が設備投資および政府の赤字(政府の資金需要)、海外の資金需要を賄っている

7.3 GDPと経常収支の決定

 自国の経済主体は国内で貯蓄を運用することも海外で運用することも可能である中で、どのように貯蓄の運用方法を定めるのか?不確実性がないとの仮定の下では、国内債券および外国債券の2種類を考えれば十分である。国内債券の実質利子率rおよび外国債券の実質利子率r^Sについて


\begin{aligned}
r=r^S
\end{aligned}

 開放経済におけるGDPの決定に関して考えるに当たり閉鎖経済を考える。閉鎖経済では国内実質利子率で開放経済では外国実質利子率で決まる。第1期のGDPは閉鎖経済と同様に所与の資本ストックK_1に等しい。また第2期には資本減耗率\delta=0と仮定すれば、Iを設備投資額として


\begin{aligned}
K_2=K_1+I
\end{aligned}
である。均衡時にはr=r^Sが成り立つから、Fを生産関数として

\begin{aligned}
Y_2=F(K_2)=F(K_1+I(r))=F(K_1+I(r^S ))\equiv Y_2 (r^S)
\end{aligned}

 開放経済における経済収支の決定を考える。国民民間貯蓄は利子率と第1期、第2期の可処分所得に依存する。まず資金の需給式


\begin{aligned}
GNI_1-T_1-C_1=I+G_1-T_1+CA_1
\end{aligned}
において、左辺GNI_1-T_1-C_1が国民民間貯蓄S(r,Y_1^*-T_1,Y_2 (r)-T_2)に等しいことから

\begin{aligned}
&S(r,Y_1^*-T_1,Y_2 (r)-T_2)=I+G_1-T_1+CA_1\\
\therefore&\ S(r,Y_1^*-T_1,Y_2 (r)-T_2 )-(G_1-T_1 )=I+CA_1
\end{aligned}

が成り立つ。更にr=r^Sが成り立つ。r\gt r^Sならば経常収支赤字への、r\lt r^Sならば経常収支黒字への誘因となる。
 開放経済における物価水準の決定については、閉鎖経済と同様だが、r=r^Sであるから


\begin{aligned}
P_1=\displaystyle{\frac{M_1}{L(Y_1,r^S+\pi)}}
\end{aligned}
が成り立つ。すなわち名目貨幣量の増加(減少)が物価水準の上昇(下落)をもたらす

7.4 比較静学分析

  • 第1期の政府支出G_1が拡大した場合(税収T_1は一定だと仮定)

 この拡大した財政赤字が第2期目の返済方法にどうなるかに決まる。第2期目の政府支出削減で第1期の財政赤字が返済されると仮定すれば、G_1が増加するから資金需要が増大し資金の需給式において左辺が減少する。それに伴い等式の右辺(資金供給)も減少するから資金供給線が左にパラレルシフトする


\begin{aligned}
S(r,Y_1^*-T_1,Y_2 (r)-T_2)-(G_1+\Delta G-T_1)=I+CA_1-\Delta G
\end{aligned}


図表1 政府支出拡大時の変化

  • 生産技術ショック

 研究開発や海外からの新しい生産技術導入によって将来の生産技術が改善された場合、資本の限界生産力が増大するため、最適資本ストックの水準が上昇し追加的な設備投資が必要になり投資曲線は右にパラレルシフトする。設備投資の拡大で生産水準が上昇するためGDPも上昇する結果、家計の貯蓄が減退するため、貯蓄関数が左にパラレルシフトする。


図表2 生産技術ショックが起きたときの変化

  • 時間選好率が変化した場合:

 時間選好率が上昇した場合、すなわち将来の消費よりも現在の消費をより先行した場合、家計は貯蓄を減退させ現在の消費に回すため、貯蓄曲線が左にパラレルシフトする一方で、実質利子率は変化しない。


図表3 時間選好率が変化した場合の変化

7.5 為替レート

 為替レートとは自国通貨と外国通貨の交換比率を指す。表示方法として

がある。為替レートにも名目・実質が存在する:

  • 名目為替レート:外国(自国)通貨1単位と交換される自国(外国)通貨の単位数
  • 実質為替レート:外国(自国)の財1単位と交換される自国(外国)の財の単位数

 日本の財の価格をP, 外国の財の価格をP^F, 自国通貨建の名目為替レートと実質為替レートをそれぞれe,\varepsilonとすれば、


\begin{aligned}
\varepsilon=\displaystyle{\frac{eP^F}{P}}
\end{aligned}

が成り立つ。外国の財1単位を売るとP^Fだけ外国通貨を得るから、これを自国通貨に交換するとeP^Fだけ得る。これで日本の財を購入すれば\displaystyle{\frac{eP^F}{P}}だけ得られる。\varepsilon\gt1ならば日本の財が相対的に安く、\varepsilon\lt1ならば日本の財が相対的に高いことを意味する。

 長期的な視点で為替レートが決定される考え方として購買力平価(PPP)がある。割安な財が買われ割高な財が売られるから、長期的には\varepsilon=\varepsilon^*=1に収束するはずである。これは自国と外国で財の価値が一致することを意味する。これを一物一価の法則という。一物一価の法則が成り立つ状況では、均衡名目為替レートe^*


\begin{aligned}
&\varepsilon=\varepsilon^*=\displaystyle{\frac{e^* P^F}{P}}=1 \\
\therefore&\ e^*=\displaystyle{\frac{P}{P^F}} 
\end{aligned}
が成り立つ。購買力平価が成立すれば、財政赤字の拡大は実質為替レートに影響を与えない。また両国の物価水準が一定であれば名目為替レートにも影響を与えない。
 金融政策の変化による影響として、名目貨幣量Mを増加させた場合を考えると、

\begin{aligned}
\varepsilon=\displaystyle{\frac{eP^F}{P}}
\end{aligned}

より実質為替レートは変化しない。他方で名目為替レートは、開放経済における物価水準


\begin{aligned}
P=\displaystyle{\frac{M}{L(Y,r^S+\pi)}} 
\end{aligned}

より


\begin{aligned}
e^*=\displaystyle{\frac{P}{P^F}}=\displaystyle{\frac{M}{P^F L(Y,r^S+\pi)}}
\end{aligned}

財政赤字の拡大
名目貨幣量の増加
実質為替レート(\varepsilon^* 影響なし 影響なし
名目為替レート(e^* 影響なし 円安・ドル高

7.6 経常収支赤字の持続可能性

 経常収支について、資本の国際移動は存在するが労働の国際移動は存在しないと仮定する。このとき所得収支IB_tは対外純資産からの利子所得rE_tに等しい、すなわちIB_t=rE_tが成り立つ。したがって純輸出NXと所得収支IBの和が経常収支CAであること(NX+IB=CA)に注意すれば、経常収支が対外純資産の増加に等しい、すなわち


\begin{aligned}
CA_t=E_{t+1}-E_t
\end{aligned}
が成り立つから


\begin{aligned}
&E_(t+1)-E_t=NX_t+IB_t=NX_t+rE_t\\
\therefore&NX_t=E_{t+1}-(1+r)E_t
\end{aligned}

すなわち、経常赤字は対外純資産の減少、対外純負債の増加を意味する

 2期間で経常赤字がどの程度許されるかを考える。第1期の当初対外資E_1=0と仮定する。このとき


\begin{aligned}
&NX_1=E_2,\\
&NX_2=-(1+r)E_2,\\
\therefore&E_2=-\displaystyle{\frac{NX_2}{1+r}}
\end{aligned}

またこの仮定の下ではCA_1=NX_1,CA_2=NX_2+rE_2であるから経常収支に関して


\begin{aligned}
CA_1+CA_2=0
\end{aligned}

が成り立つ。第1期の期末の対外純負債E_2は第2期の貿易・サービス収支黒字の割引現在価値に等しい。経常収支にも同様のことが言え、第1期が経常収支赤字の場合、第2期の経常収支は黒字でなければならない。
 次は、より多期間で経常収支赤字が持続可能である条件を考える。E_0\lt0であると仮定すると、


\begin{aligned}
E_t=\displaystyle{\frac{E_{t+1}-NX_t}{1+r}}
\end{aligned}

また


\begin{aligned}
E_{t+1}=\displaystyle{\frac{E_{t+2}-NX_{t+1}}{1+r}}
\end{aligned}

であるから


\begin{aligned}
E_{t}&=\displaystyle{\frac{E_{t+1}-NX_{t}}{1+r}}=-\displaystyle{\frac{NX_t}{1+r}-\frac{NX_{t+1}-E_{t+2}}{(1+r)^2}}\\
\vdots&\\
E_{t}&=\displaystyle{\sum_{i=0}^{\infty}-\frac{NX_{t+i}}{(1+r)^{i+1}}}+\lim_{i\rightarrow\infty}⁡\displaystyle{\frac{E_{t+i}}{(1+r)^i}}⁡
\end{aligned}

が得られる。ここで右辺第2項は]0に収束する。なぜならばこの項が負の場合、将来の純負債の割引現在価値が正であることを意味する。したがって自国は外国に対し債務を返済できないため、それが明らかならば当初から外国は自国債権を保有しない。これに対しこの項が正ならば外国が時刻に対し負債を返済できないことになり、今度は自国が外国の債権を保有しない。債務不履行を排除するならば右辺第2項は0に等しくなる。以上から


\begin{aligned}
E_t=\displaystyle{\sum_{i=0}^{\infty}-\frac{NX_{t+i}}{(1+r)^{i+1}}}
\end{aligned}

7.7 開放経済における設備投資と貯蓄の相関

 開放経済では資本移動が自由ならば、貯蓄と設備投資に一定の関係は存在しない。過去には国内投資と設備投資には正の相関関係があり、国際間の資本移動が自由でない可能性があった。しかし今では資本移動は自由かつ活発である。これを「フェルドシュタインとホリオカのパズル」という。
 しかし資本移動が自由であっても経常収支と財政赤字の和が等しくなるような財政政策を行なえば国内貯蓄と設備投資は一致する。

7.8 購買力平価(PPP)の実証研究

 購買力平価が成り立つならば、実質為替レートは1となり、名目為替レートは2国の物価水準の比率に等しくなる。しかし実質ドル円為替レートは1から大きくかけ離れている。

  • 物価の計算に物価指数を用いるから
  • 貿易が不可能な財が存在するから
  • 実際の財取引では関税や輸送費などの費用が存在し一物一価の法則が成り立たないから

 長期的には購買力平価は成り立ち得るものの、ショックが生じて一時的に均衡水準から大きく乖離した場合、ショックが半減するにはかなりの期間が必要であることが実証的にわかっている。

問題*1

1.  購買力平価の下での為替レート

 購買力平価が成立していることを仮定する。また自国財の物価水準が3、外国の物価水準が6のとき、以下の問いに答えよ。
(a) 名目為替レートがいくらになるか、自国通貨建てレートで答えよ。
(b) 名目為替レートがいくらになるか、外国通貨建てレートで答えよ。

2. 2期間の開放マクロ経済モデル

 以下で説明するような2期間の開放マクロ経済モデルに関して次の問いに答えよ。なおこの経済における企業は第1期に資本ストックK_1=100を与えられている。また貯蓄関数はS=100r, 設備投資関数はI=10-100rrは実質利子率を表す。計算の簡略化のために生産関数はY=K^{1/2}で資本減耗と政府の経済活動は考慮しない。さらに対外純資産保有E_1=0であると仮定する。
(a) 第1期の均衡実質GDP\ Y_1^*を求めよ。
(b) 外国の実質利子率r^S=0.06の場合、最適な設備投資I^*, 第1期の最適な消費C_1^*と経常収支CA_{1}を求めよ。
(c) 第2期の資本ストックK_2^*と均衡実質GDP Y_2^*を求めよ。また第2期の最適な消費C_2^*を求めよ。

3. 財政政策変更が経常収支にもたらす影響

 以下のような財政政策の変更が生じた場合に経常収支にどのような影響を与えるか説明せよ。
(a) 第1期の政府支出の拡大が第1期の増税によって賄われる。
(b) 第1期の減税が第2期の政府支出の削減によって賄われる。

4. 貿易政策が与える影響

 以下の貿易政策は経常収支、実質為替レートに如何なる影響を与えるか説明せよ。
(a) 日本の米国製品に対する関税の切り上げ
(b) 日本企業の対米輸出自主規制

5. 生産性変化の与える影響

 生産性の変化が与える影響について以下の問いに答えよ。
(a) 第1期における日本の生産性の上昇は経常収支にどのような影響を与えるか。
(b) 第2期における日本の生産性の上昇は実質為替レートと名目為替レートに如何なる影響を与えるか。

解答

1.  購買力平価の下での為替レート

(a) 自国通貨建ての名目通貨レートおよび実質通貨レートをそれぞれe_1,\varepsilon_1とし、自国財の物価水準をP_N, 外国財の物価水準をP_Fとすると、


\begin{aligned}
e_1 P_F=\varepsilon_1 P_N=P_N\Leftrightarrow e_1=\displaystyle{\frac{P_N}{P_F}}=0.5
\end{aligned}

(b)外国通貨建ての名目通貨レートおよび実質通貨レートをそれぞれe_2,\varepsilon_2、とし、自国財の物価水準をP_N, 外国財の物価水準をP_Fとすると、


\begin{aligned}
e_2 P_N=\varepsilon_2 P_F=P_F\Leftrightarrow e_1=\displaystyle{\frac{P_F}{P_N}}=2
\end{aligned}

2. 2期間の開放マクロ経済モデル

(a)第1期の均衡実質GDP\ Y_1^*は、企業が資本ストックのみを用いて財・サービスを生産すると仮定すれば、


\begin{aligned}
Y_1^*=F(K_1)=100^{1/2}=10
\end{aligned}

(b)外国の実質利子率r^S=0.06において均衡下ではr=r^Sが成り立つから


\begin{aligned}
I^*=10-100r=10-100r^*=4
\end{aligned}
 仮定より対外純資産保有E=0, 政府活動および徴税G=T=0であるから

\begin{aligned}
Y_1^*=C_1^*+I^*\Leftrightarrow C_1^*=10-4=6
\end{aligned}
 また、開放経済における資金の需給の等式から

\begin{aligned}
&S_1=100r^S=I^*+CA_1=6 \\
\therefore&CA_1=6-4=2
\end{aligned}

(c)資本減耗が無いと仮定しているため、(b)より


\begin{aligned}
&K_2^*=K_1+I^*=104\\
\therefore&Y_2^*=\sqrt{K_2^*}=\sqrt{104}=10.19803903\cdots\approx 10.2
\end{aligned}
 2期間開放モデルを考慮しているから、この時点ですべての資金を消費するため、

\begin{aligned}
C_2^*=Y_2^*=10.2
\end{aligned}

3. 財政政策変更が経常収支にもたらす影響

 経常収支の均衡条件から


\begin{aligned}
&CA_1=S(r,Y_1-T_1,Y_2(r)-T_2)-(G_1-T_1 )-I(r^S )\\
\therefore&CA_1+CA_2=0
\end{aligned}

が成り立つ。

(a) 第1期の政府支出G_1G_1+\Delta Gに拡大した(\Delta G\gt0)とし、拡大した分を第1期に増税することで賄うならば徴税T_1T_1+\Delta Gに増加すると、上式から


\begin{aligned}
CA_1&=S(r,Y_1-(T_1+\Delta G),Y_2(r)-T_2)-{(G_1+\Delta G)-(T_1+\Delta G)}-I(r^S )\\
&=S(r,Y_1-(T_1+\Delta G),Y_2 (r)-T_2)-(G_1-T_1)-I(r^S)
\end{aligned}

が成り立つ。したがって政府支出の増大と増税に伴う経常収支への影響は打ち消しあうものの、第1期の可処分所得が減少することで貯蓄が減少するため、経常収支は減少する。

(b) 第1期に徴税額がT_1からT_1-\Delta T(\Delta T\gt0)に減少したとしする。この減税により経常収支は\Delta Tだけ減少するものの、第1期の可処分所得も増大するため、それを受けて第1期の消費、ひいては経常収支も変化する。可処分所得の増大が経常収支に与える影響の度合いが題意からは不明であるため、ここでは増加するか減少するかは判断できない。

4. 貿易政策が与える影響

 経常収支および実質為替レートの定義から、経常収支CAと純輸出NX, 所得収支IBおよび自国通貨建て名目為替レートeと自国・外国の物価水準P^N,P^Fに対して


\begin{aligned}
CA&=NX+IB\\
e&=\displaystyle{\frac{P^N}{P^F}} 
\end{aligned}
が成り立つ。

(a)関税の切り上げを受けて輸入が減少するため、NXが増大することで経常黒字に誘導され得る。購買力平価が成立しているならば、実質為替レートは不変である。
(b)輸出自主規制から輸出が減少するため、NXが減少することで経常赤字に誘導され得る。購買力平価が成立しているならば、実質為替レートは不変である。

5. 生産性変化の与える影響

(a) 経常収支の均衡条件から、日本の国民民間貯蓄S(r,Y_1-T_1,Y_2 (r)-T_2)(r:利子率,Y:GDP.T:徴税), 政府支出G,設備投資I(r), 経常収支CAに対して


\begin{aligned}
&S(r,Y_1-T_1,Y_2 (r)-T_2)-(G-T)=I(r)+CA\\
\therefore&CA=S-(G-T)-I
\end{aligned}
このとき、日本の生産性が増大すれば、GDPの増大が期待されるために貯蓄が増大する。したがって経常収支は増大すると考えられる。

(b) 購買力平価が成立していると仮定すれば、実質為替レートは生産性の上昇から影響を受けない。他方で名目為 替レートe_t


\begin{aligned}
e_t=\displaystyle{\frac{P_t^N}{P_t^F}}=\displaystyle{\frac{M}{P_t^F L(Y_t^*,\pi+r_t^F)}}
\end{aligned}

が成り立つ。第2期の生産性向上によりGDPが増大し実質貨幣需要関数Lが増大するから、名目為替レートは減少する。

*1:二神孝一・堀敬一(2017)「マクロ経済学 第2版」有斐閣 P.173参照

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