「大人の教養・知識・気付き」を伸ばすブログ

一流の大人(ビジネスマン、政治家、リーダー…)として知っておきたい、教養・社会動向を意外なところから取り上げ学ぶことで“気付く力”を伸ばすブログです。データ分析・語学に力点を置いています。 →現在、コンサルタントの雛になるべく、少しずつ勉強中です(※2024年1月21日改訂)。

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年金資産運用(その07/11)

 中長期における資産運用の考え方を学ぶべく、

を整理していく*1

5. 各資産クラスの運用手法

5.3 債券市場と運用

5.3.4 アクティブ運用

 債券のアクティブ運用は、債券ポートフォリオのリバランスを頻繁に行うことで、与えられたベンチマークを超過するリターンを獲得する運用を指す。

  • デュレーション戦略

     将来の金利水準の変化を読んで、ポートフォリオデュレーションを適宜変化させることで超過リターン獲得を狙う戦略である。

     金利rベンチマークおよび運用ポートフォリオのリターンおよびデュレーションをそれぞれr_B,D_Bおよびr_P,D_Pとするとき、\Delta r\geq0(=将来の金利が下落)かつD_P\leq D_Bないし\Delta r\leq0(=将来の金利が上昇)かつD_P\geq D_Bならば、

    \begin{aligned}r_P\approx-D_P\Delta r\geq -D_B\Delta r\approx r_B\end{aligned}

    が成立する。金利の予測が困難であるため、金利予測の可能性、信頼性などに慎重にならなければならない。
  • イールドカーブ戦略

     コンベクシティやその他のリスク・ファクターを考慮してイールドカーブの変化を捉える戦略である。
  • セクターアロケーション戦略

     債券種別間や、社債の特定業種等のセクター間で相対的にリターンの高いものに賭けてウェイトを増減させてアルファを狙う戦略である。
  • 銘柄選択

     企業の信用リスクを精査して、リスクに対してリターンが高いと思われる銘柄でポートフォリオを構築する。 
  • トレーディングによるアルファ戦略

     一時的に銘柄価格が適正価格になった際に、割高銘柄を売却し、同種の割安銘柄を購入することでリターンを嵩上げする。
5.3.5 年金負債インデックス

 年金運用における債券インデックス運用は、債券市場全体を表すインデックスに追随することはできるか。バランスシート型\mathrm{ALM}がそれを為すことは難しい。そこで様々なベンダーがその開発を試みてきた。

5.4 外国証券市場と運用

5.4.1 為替と外国証券のリスク・リターン

 分散投資を追求する場合、外国資産に投資するのは自然なことである(ただし実際の運用では、ホーム・カントリー・バイアスにより、国内資産への投資が合理的水準よりも著しく高い場合がある。)。
 外国証券へ投資する際には、外国為替レートが影響する外国証券へ投資する場合、外国証券の現地通貨建てリターンと為替レートの変化率を合計したリターンを受け取ることになる。

 購買力平価の概念に基づけば、S_0,S_1を現時点および将来時点の為替レート(自国通貨/外国通貨)とし、I_d,I_fをそれぞれ国内および外国のインフレ率とすれば、


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{S_1}{S_0}}=\displaystyle{\frac{1+I_d}{1+I_f}}\approx1+(I_d-I_f)
\end{aligned}

が得られる。しかし実証上、中短期的な為替変動を説明するのに購買力平価が成り立たないことが知られている。これは、購買力平価に非貿易財が含まれていること、モノの消費バスケットが国によって大きく相違していること、国際的な取引コストが存在することがある。他にも、インフレ率としてよく観測される消費者物価指数が、資本市場に内在する商品先物価格を(少なくとも直接的には)反映していないこともある。
 そこで次に登場するのが、為替レートに関する\mathrm{Fisher}仮説である。名目金利rと期待インフレ率I^e、実質金利iには


\begin{aligned}
1+r=(1+i)(1+I^e)
\end{aligned}

が成り立つ。これが二国間(自国dおよび外国f)で成り立つならば、


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{1+r_f}{1+r_d}}=\left(\displaystyle{\frac{1+i_f}{1+i_d}}\right)\left(\displaystyle{\frac{1+I_f^e}{1+I_d^e}}\right)
\end{aligned}

が成り立つ。これに基づけば、為替レートの期待変化率は


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{E\left[S_1\right]}{S_0}}-1\approx I_d^e-I_f^e\approx (r_d-r_f)-(i_d-i_f)
\end{aligned}

と書ける。
 いずれにせよ、外国証券に投資する場合、自動的に為替リスクを負うことになるため、為替を(部分)ヘッジするのかを考えなければならない。

5.4.2 外国株式

 外国証券の運用で最も推奨される資産クラスは株式であると言われている。それは、国内資産との相関が小さい資産を見出す国際分散投資の目的に最も適しているからである。
 為替を考慮しない現地通貨ベースの株式市場の分析手法は、過去に言及した分析手法を用いればよい。外国株式の場合、更には、国による市場の差異という見方と国を超えた多国籍企業の存在によるグローバルな産業セクターという見方もある。
 

5.4.3 外国債

 外国債券リターンの相当部分は、その国の金利変化と為替レートの変化で説明できるため、外国債券をノーヘッジで運用した場合、国際\mathrm{Fisher}関係式の存在を仮定すれば、均衡において


\begin{aligned}
r_{B(f)}\approx \Delta r_f D_{B(f)} \Delta fx &=D_{B(f)}\left\{\Delta\left(r_d-\left[r_d-r_f\right]\right)+\Delta\left(\left[r_d-r_f\right]-\left[i_d-i_f\right]\right) \right\}\\
&=D_{B(f)}\Delta\left(r_d-\left[i_d-i_f\right]\right)
\end{aligned}

が成り立つ。これはヘッジ無し外国証券のリターンが、デュレーションに国内金利および内外実質金利差の変化率を乗じたものに等しいことを意味する。これに基づくと、仮に実質金利差が0だと仮定すれば、同じデュレーションを持つ国内債券で運用すると、余計なリスクを取らずに近いリターンが得られることを意味する。とはいえ、現実にはこのようなことは起こりづらい。

*1:どうも最近の書籍でこれくらいしっかりと書いてある本が見当たらなかったので…

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