金融工学におけるシミュレーションについて学んでいく。テキストとして以下を使う。今回はP.109-111まで。
7. Monte Carlo法を用いたオプション・リスクの計算
7.5 密度関数を微分する方法
原資産価格の満期における分布が陽に分かっているならば、バイアスのないリスク・パラメータをオプション価格と同時に算出できる。またこの方法はペイオフの形に依存しないため、デジタル・オプションやバリア・オプションも利用可能である。
コールオプションを例に考える。原資産価格が
に従うとするとき、満期において株価は確率密度
に従う。すると、ヨーロピアン・コール・オプション価格は
と表現できる。
確率密度関数はに関して滑らかな関数であるから、微分と積分の順序が交換できる。その結果、
が成り立つ。ここで
であるから、
となるので、これで法により算出すればよい。
(1) | あるに対して株価サンプルパスを生成する。 |
(2) | 満期の株価をとして を計算する。 |
(3) | について(1)~(2)を繰り返して によりデルタを計算する。 |
7.6 Monte Carlo法によるリスク・パラメータ計算方法のまとめ
手法 |
特徴 |
差分商近似(標準的方法) | ・リスク・パラメータを増やすたびにシミュレーションをやり直す必要がある。 ・差分商近似の解析的誤差がパス数を増やしても小さくならず、リスク・パラメータにバイアスがある。 ・ペイオフ関数に依存しない。 |
差分商近似 (共通の乱数セットを用いる方法) |
・リスク・パラメータを増やすたびにシミュレーションをやり直す必要はない。 ・差分商近似の解析的誤差がパス数を増やしても小さくならず、リスク・パラメータにバイアスがある。 ・ペイオフ関数に依存して一部オプションには活用できない。 |
サンプル・ペイオフの 微分方法 |
・リスク・パラメータを増やすたびにシミュレーションをやり直す必要はない。 ・差分商近似の解析的誤差を考慮する必要が無い。 ・ペイオフ関数に依存して一部オプションには活用できない。 ・サンプル・ペイオフの微分が陽に求められ、ペイオフ関数がなめらかであるという条件が必要である。 |
密度関数を微分する方法 | ・リスク・パラメータを増やすたびにシミュレーションをやり直す必要はない。 ・差分商近似の解析的誤差を考慮する必要が無い。 ・ペイオフ関数に依存しない。 ・原資産価格の満期における密度関数が陽に既知であり、これが滑らかであることが必要である。 |