金融工学におけるシミュレーションについて学んでいく。テキストとして以下を使う。今回はP.144-152まで。
8. アメリカン・オプションのMonte Carlo法による評価
アメリカン・オプションの価格は、有限差分法またはツリー法によるのが一般的であった。しかし法でも計算できるようになってきた。
8.8 確率的メッシュによる挟みうち法
は確率的メッシュを用いたアメリカン・オプションの評価方法を提唱した。これは他方法に比較して誤差が大きいものの、アルゴリズムが単純で資産数および行使機会数を充分に増やすことが出来る点がメリットである。
本方法では、正のバイアスを持つメッシュ統計量および負のバイアスを持つパス推定量を算出し、解の代替となる点推定値と解の信頼区間を得る。
8.8.1 確率的メッシュ
確率的メッシュはメッシュ点をランダムに与える。
時点をから満期までで
と離散化し、時点における株価を
とする。また状態におけるオプション価格をとする。
いま状態において、時点の株価が条件付き確率密度に従うとき、任意の確率密度関数に対して
が成り立つ。ここでは確率密度関数に従う確率変数である。
最後の式は任意の点から確率密度関数により点を発生させた 法において各点の重みを
で定義しなおす測度変換と解釈できる。
ここで点を別の点に置き換えた場合を考えると、確率密度関数としてに依存しないものを選択しておけば、別の点からスタートする法でも点から始まる法で使用した点列を再利用できる。更に自体任意であったから、はその前の時点から確率密度関数により発生させてもよい。以上から、時点のメッシュ点を確率密度関数により発生させて、点から点への枝の重みを
で定義する確率的メッシュが構成される。
ここで重要なのが
- 各時点のメッシュ点を前の時点の状態に依存しない密度関数により与える
- メッシュ点間の枝の重みをにより計算する
ことである。
8.8.2 メッシュ推定量とパス推定量
で定義され、後進的に解くことで最終的な解を得る。これは確率的メッシュ状における自然なオプション価格推定量であろう。
このメッシュ推定量の計算負荷は資産数、行使機会数、各時点でのメッシュ点個数に対して、各点に個の枝を持つメッシュ点は全体で個ある。したがってメッシュ推定量の計算負荷はである。
次に確率的メッシュ内に新たな点列
を発生させる。これをパス・ポイント列と呼ぶことにする。これはの本来の確率密度関数から発生させればよい。このとき行使時点を
により定め、パス推定量を
で定義する。ただし回は1つの確率的メッシュ内で発生させたパス・ポイント列の数である。
このパス推定量の計算負荷はメッシュ点は予め与えてあるため、パス・ポイントからメッシュ・ポイントへの重みが新たに必要になる。全部で個のパス・ポイントがあり、各パス・ポイントに個の枝がある。したがってパス推定量の計算負荷はである。