金融工学におけるシミュレーションについて学んでいく。テキストとして以下を使う。今回はP.99-103まで。
7. Monte Carlo法を用いたオプション・リスクの計算
7.1 Black-Scholesモデルにおけるリスク・パラメータ
-モデルを前提とすればヨーロピアン・コール・オプションのリスク・パラメータは以下の通りとなる*1:
パラメータ |
計算式 |
デルタ | |
ガンマ | |
カッパ | |
ロー | |
シータ |
7.2 差分商による近似
デルタの近似を例として差分商による近似を考える。
法によるヨーロピアン・コール・オプション価格の近似解を
とする。
株価パスの初期値の微笑変化値をとすると、法における差分商デルタは、以下のように初期値をだけずらした2回の法
により算出できる。
(1) | あるについてを発生させる。 |
(2) | 株価サンプルパスを発生させる。 |
(3) | に対して(1)および(2)を繰り返しを算出する。 |
(4) | あるについてとは独立なを生成する。 |
(5) | を用いて株価サンプルパスを発生させる。ただし初期値をとする。 |
(6) | に対して(4)および(5)を繰り返しオプション価格を算出する。 |
(7) | 差分商デルタを計算する。 |
カッパ、ロー、シータについても同様に計算すればよい。ただしガンマは中心差分
を計算する。
7.3 最適な微小変化量
法で差分商近似を求める場合、を小さくすると法の誤差分散をより顕在化してしまう。パスの発生数を一定とすると、「差分商近似による解析的誤差」と「法における誤差分散」にはに関するトレードオフが存在し、最適な微小変化量が存在する。
理論価格をもつヨーロピアン・コール・オプションのデルタについて考える。理論価格の法による推定値をとし、法による差分商デルタを
で定義する。
株価の初期値をとし、
とすると、展開から
が成り立つ。したがって解析的差分商デルタは
と表現できる。ここで
とおき、を考える。
であり、
を代入することで
が成り立つ。
ここで最右辺第1項について相加相乗平均の関係から
が成り立つ。等号が成り立つのは、
のときである。
これはの分散が、差分商近似による解析誤差と法による誤差分散に分離できることを意味している。
- 最適なを知るにはが必要である。
- はのオーダーで小さくなる。
- がに近いと分散は大きく減りやすい。
- サンプル数を増やしてを小さくしても差分商近似の解析的誤差は減らない。