金融工学におけるシミュレーションについて学んでいく。テキストとして以下を使う。今回はP.103-109まで。
7. Monte Carlo法を用いたオプション・リスクの計算
7.3 共通の乱数セット
リスク・パラメータ推定における複数回の法では、共通の乱数セットを用いた方が良い。
これは、たとえばの分散において
であるが、もし別々の乱数セットを用いると、
であるが、共通の乱数セットを用いれば
となるから、の誤差分散は減少する場合が多い*1。
共通の乱数セットを用いれば、
である。
(1) | とする。 |
(2) | 標準正規乱数列を生成する。 |
(3) | として株価サンプルパスを生成する。 |
(4) | サンプルパスを基にを計算する。 |
(5) | として繰り返し、オプション価格を計算する。 |
(6) | 加えてを計算し、差分商デルタを計算する。 |
7.4 サンプル・ペイオフを微分する方法
解析的な微分形を活用しつつ、バイアスのないリスク・パラメータとオプション価格を同時に算出できる。
アイディアのコアは
ヨーロピアン・コール・オプションのデルタを計算することを考える。以下ではオプション・ペイオフがの関数であることに注意し、サンプル・ペイオフと呼称するものとする。
まず
と出来る。これをサンプル・デルタと呼ぶこととする。ここで
が得られ、
から
である。
ここで理論値はに関して滑らかな関数であるから、期待値演算(積分)と微分の順序は入替可能である。したがって
が成立する。
これらを踏まえたデルタを算出するアルゴリズムは以下の通りである:
(1) | 標準正規乱数列を生成する。 |
(2) | 株価サンプルパスを生成する。 |
(3) | サンプル・デルタを計算する。 |
(4) | に対して(1)-(3)を繰り返し、デルタを計算する。 |
他のグリークスについても考える。
- サンプル・カッパ
- サンプル・ロー
- サンプル・シータ
一方、サンプル・ガンマはサンプル・デルタが定義関数を含むから一般には導出が困難である。
したがってデジタル・オプションなどペイオフ関数に定義関数
を含む場合などは別の方法で計算する。
*1:ただしバリア・オプションやデジタル・オプションには不向きである。