「大人の教養・知識・気付き」を伸ばすブログ

一流の大人(ビジネスマン、政治家、リーダー…)として知っておきたい、教養・社会動向を意外なところから取り上げ学ぶことで“気付く力”を伸ばすブログです。

MENU

マクロ経済学(4/17)資産市場

 基本的な経済観念を身に付けるべく、マクロ経済学を学んでいく。テキストは古典派をしっかりと扱っているという

を用いることにする。

4. 資産市場

4.1 資産価格とマクロ経済

 資産市場とは有価証券や銀行預金など様々な資産を取引する市場の総称である。

4.2 資産市場の機能と制度

 資産市場の機能は2つある:

  • 役割① 異時点間の資源再配分機能:資金の黒字主体が赤字主体から有価証券を購入することで資金を供給する
  • 役割② リスクの評価・再配分機能:リスクを評価して経済主体が合意できるような金額を決定する

 家計の資産選択要因は3つある:

  • 資産の安全性:収益が変動する資産を危険資産、現時点で将来受け取る収益が確定している資産を安全資産という。
  • 家計のリスクに対する態度:リスクが存在するときに可能であればリスクを避けるべく行動する主体を危険回避的であるという。
  • 資産の収益性:危険回避的な家計が危険資産を保有するためには危険資産は収益性で安全資産よりも優れていなければならない。

4.3 無裁定条件と資産価格

 収益の種類は2つある:
   ①インカム・ゲイン:利息や配当から得る収益
   ②キャピタル・ゲイン:証券価格の上昇から得る利益
 前節でも述べたように、安全資産と危険資産とが存在する。それらそれぞれについて利子率を考える。
 まず安全資産の利子率は以下の通りである:


\begin{aligned}
r_0=\displaystyle{\frac{d_1+p_1-p_0}{p_0}}
\end{aligned}

 不確実な将来配当(利息)、将来資産価格を評価するのにその期待値を用いた収益率を期待収益率という:


\begin{aligned}
r_1=\displaystyle{\frac{E\left[d_1+p_1\right]-p_0}{p_0}}
\end{aligned}

これら安全資産の利子率と期待収益率とを比較することで、資産市場が評価したリスクと収益の関係(\rho:リスク・プレミアム)として無裁定条件を課すこととする:


\begin{aligned}
r_1=\displaystyle{\frac{E \left[d_1+p_1 \right]-p_0}{p_0}}=r_0+\rho
\end{aligned}

これは危険資産のリスクへの対価としてリスク・プレミアム\rhoがあるという考え方である。

 他方で、安全資産の利子率を変形するとd_1+p_1割引現在価値p_0に等しい」ことを意味する:


\begin{aligned}
r_0=\displaystyle{\frac{d_1+p_1-p_0}{p_0}}\Leftrightarrow p_0=\displaystyle{\frac{d_1+p_1}{1+r_0}}
\end{aligned}

これにより将来の財・サービスやお金を現在の価値で評価できる

 他方で、債券価格の理論値を考える。この債券の利子率が一定だと仮定すると


\begin{aligned}
p_0=\displaystyle{\frac{d_1+p_1}{1+r}}&=\displaystyle{\frac{d_1}{1+r}}+\displaystyle{\frac{d_2}{(1+r)^2}}+\cdots+\displaystyle{\frac{d_n+p_n}{(1+r)^n}}\\
&=\sum_{t=1}^{\infty}\displaystyle{\frac{d_t}{(1+r)^t}}+\lim_{t\rightarrow\infty}{\displaystyle{\frac{p_t}{(1+r)^t}}}
\end{aligned}

 ここで


\begin{aligned}
\lim_{t\rightarrow\infty}{\displaystyle{\frac{p_t}{(1+r)^t}}}=0
\end{aligned}

 ならば


\begin{aligned}
p_0=\sum_{t=1}^{\infty}\displaystyle{\frac{d_t}{(1+r)^t}}
\end{aligned}
となる。これを配当割引現在価値モデルという。d_tを所与とすれば「利子率の上昇(下落)⇔債券価格の下落(上昇)」という関係がある。

 危険資産の場合、


\begin{aligned}
p_0=\sum_{t=1}^{\infty}\displaystyle{\frac{E\left[d_t\right]}{(1+r+ρ)^t}}+\lim_{t→∞}\displaystyle{\frac{E\left[p_t\right]}{(1+r+ρ)^t}}
\end{aligned}

であり、


\begin{aligned}
\lim_{t→∞}\displaystyle{\frac{E\left[p_t\right]}{(1+r+ρ)^t}}=0
\end{aligned}

ならば


\begin{aligned}
p_0=\sum_{t=1}^{\infty}\displaystyle{\frac{E\left[d_t\right]}{(1+r+ρ)^t}} 
\end{aligned}

が成り立つ。
 上記は理論価格であり実際の価格からは乖離し得る。この理論価格をf_0と書き換えて、実際の価格p_0はこれ以外の要因b_0との合計に等しいと仮定、すなわち


\begin{aligned}
p_t=f_t+b_t
\end{aligned}

と仮定すると、


\begin{aligned}
b_0(1+r)=b_1
\end{aligned}

を満たす。このb_0およびb_1を合理的バブルという。なぜならば


\begin{aligned}
p_0=f_0+b_0&=\sum_{t=1}^{\infty}\displaystyle{\frac{d_t}{(1+r)^t}}+\displaystyle{\frac{b_1}{1+r}}=\cdots\\
&=\displaystyle{\frac{d_1+f_1+b_1}{1+r}}\\
&=\displaystyle{\frac{d_1+p_1}{1+r}}
\end{aligned}
と割引現在価値の式を満たしているために合理的な投資家の行動と矛盾していないからである。

4.4 金利の期間構造

 利回りの計算方法は割引債なのか利付債によって相違する。

  • 割引債の計算方法:


\begin{aligned}
p_{n,t}=\displaystyle{\frac{f}{(1+r_{n,t})^n}}
\end{aligned}

 債券利回りは残存期間が異なる債券ごとにそれぞれ存在する。このことの背景には各債券の間で無裁定条件が成立していると考えるのが自然である。これらの無裁定条件の考え方の1つに純粋期待仮説がある。
 たとえば2つの投資戦略を考える:
   ①残存期間がn年の長期債券を保有し続ける
   ②残存期間が1年の短期債券をn年間毎年購入して資金運用する
 このとき、②の戦略の方が①の収益を上回る収益を提供する場合、金利変動のリスクを無視すれば、①のような長期保有のメリットが薄れる。その結果として短期債券が購入される一方で長期債券が売却され、長期債券の利回りは①と②の収益率が均衡するまで上昇するようになる。


\begin{aligned}
(1+r_{n,t})^n=E\left[(1+r_{1,t})\cdots(1+r_{t+n-1,t})\right]
\end{aligned}

この仮説を前提とすれば、長期債券の利回りは将来の短期金利に対して情報を提供する。

4.5 名目利子率と実質利子率

 金利においても名目利子率iと実質利子率rとが存在し、期待インフレ率E[\pi]を用いて以下のFisher方程式が成立している:


\begin{aligned}
i=r+E[\pi]
\end{aligned}

 Fisher方程式について詳述する。ある財を消費する権利に関わる債券の存在を仮定する。この債券を購入することで今期、その財の消費をx_0諦める代わりに次期においてその財をx_1だけ消費できるとすれば、この債券の実質的な収益率は


\begin{aligned}
r_1=\displaystyle{\frac{x_1-x_0}{x_0}}
\end{aligned}

 財の現時点および次期の価格をそれぞれp_0,p_1とすれば


\begin{aligned}
i&=\displaystyle{\frac{E\left[p_1 x_1\right]-{p_0}{x_0}}{p_0 x_0}}\\
&=E\left[\displaystyle{\frac{p_1}{p_0}}\right]\displaystyle{\frac{x_1}{x_0}} -1\\
&=E\left[1+\pi_1\right](1+r_1)-1\\
&=E\left[\pi_1\right](1+r_1 )-r_1
\end{aligned}

E\left[\pi_{1}\right]r_1\approx 0と仮定することでFisher方程式を説明できる。

4.6 資産価格に関する実証研究

 株価の説明理論として、①ファンダメンタルズに基づく理論値、②合理的バブル、③その他、があるが、どれが有効かについての合意は存在しない。

補論:危険回避的な投資家とリスク・プレミアム

 ある投資家を考え、配当Cに対する効用関数をU(C)とする。危険資産と安全資産が存在し、前者は配当として確率\frac{1}{2}C_A,\frac{1}{2}C_Bだけ支払われるとする。この危険資産から得られる期待効用は


\begin{aligned}
E[U(C)]=\displaystyle{\frac{1}{2}\left(U(C_A)+U(C_B)\right)}
\end{aligned}

である。投資家が危険回避的な場合、危険資産と安全資産の期待収益が等しければ、誰も危険資産を保有しないはずである。
 そこで危険資産が保有されるためには、安全資産の収益を危険資産の期待収益よりも引き下げなければならない。そのためには安全資産の収益は


\begin{aligned}
U(\bar{C} )=E[U(C)]=\displaystyle{\frac{1}{2}\left(U(C_A)+U(C_B)\right)}
\end{aligned}

を満たすような\bar{C}になればよい。その結果、危険資産の保有と安全資産の保有は無差別になる。この場合の危険資産の期待収益と安全資産の収益の差


\begin{aligned}
\rho=E[C]-\bar{C}
\end{aligned}

をリスク・プレミアムという。

問題*1

1. 債券価格と株価

 以下の問いに答えよ。

(a) 債券価格理論値

 債券のすべての期の配当額d_t=d(一定)と仮定する。配当割引モデルで債券価格が決定される場合、利子率をr_t=r(一定)として債券価格の理論値p_0を答えよ。

(b) 配当

 安全資産の収益率が3\%であると仮定する。(a)の設定下において理論価格が200である場合、この安全資産を保有することで毎期、いくらの配当を受け取ることが可能か。

(c) 利子率と債券価格

 利子率が上昇すると債券価格が下落する理由を直観的に説明せよ。

(d) 配当割引モデル

 ある株式の期待配当E\left[d_t\right]=dとおく。利子率をr、リスク・プレミアムを\rhoとするとき、配当割引モデルでこの株式の理論価格p_0を求めよ。

(e) 理論株価の計算

 ある株式のt+1期における株式の1株当たり期待配当額E\left[d_{t+1}\right]=10、キャピタル・ゲインの期待値を5\%、安全資産の収益率を3\%、リスク・プレミアムは7\%であるならば、t期の株価p_tはいくらか。

2. 債券市場の金利の期間構造

 2種類の債券が存在する債券市場の金利の期間構造を考える。1つ目の再建は残存期間が2年の長期債で、もう1つは残存期間が1年の短期債である。このとき以下の問いに答えよ。

(a)将来の短期債利回り①

長期債の利回りが20\%、今年の短期債券の利回りが10\%の場合、期待仮説によれば市場は来年における短期債の利回りを何\%と想定していることになるか。

(b)将来の短期債利回り②

長期債の利回りが20\%, 今年の短期債券の利回りが30\%の場合、期待仮説によれば市場は来年における短期債の利回りを何\%と想定していることになるか。

3. リスクの回避

 ある経済にAさんとBさんの2人が存在する。Aさんは晴れのときに90の所得を得、雨が降れば所得は0となる。Bさんは晴れのときには所得は0で雨のときには所得を90だけ得る。晴れの確率が2/3で雨の確率が1/3だとし、自分で貯蓄することが不可能であると仮定するとき、2人の間でどのような契約を結べば所得リスクを解消することができるか。

4. 合理的バブル

 時点t=0,1,\cdotsにおける資産価格をp_tとして合理的バブル


\begin{aligned}
b_0 (1+r)&=b_1,\\
p_0&=b_0+f_0\\
&=b_0+\sum_{t=1}^{\infty}\displaystyle{\frac{d_t}{(1+r)^t}}
\end{aligned}

を考える。ここでrは利子率、d_tを時点tにおける利子(または配当)額である。

(a) 合理的バブルが存在しない理由

 b_tが負の値を取るような合理的バブルが存在しない理由について説明せよ。

(b) 将来の合理的バブル

 100年後の合理的バブルb_100=0と仮定する。このとき現在の合理的バブルの値b_0を答えよ。

解答

1. 債券価格と株価

(a) 債券価格理論値

 配当割引モデルに基づくと、


\begin{aligned}
p_0&=\sum_{t=1}^{\infty}\displaystyle{\frac{d}{(1+r)^t}}\\
&=d\sum_{t=1}^{\infty}\displaystyle{\frac{1}{(1+r)^t}} \\
&=\displaystyle{\frac{d}{r}}
\end{aligned}

(b) 配当

 題意よりr=0.03,p_0=200を代入すると


\begin{aligned}
d=r\cdot p_0=6
\end{aligned}

(c) 利子率と債券価格

 利子率が上昇すると、銀行の付利が大きくなるため、債券保有機会費用が増大する。そのため債券需要が減退し、債券価格は下落する。

(e) 理論株価の計算

 時点tにおける株価をp_tとし、利子率、リスク・プレミアムをそれぞれr,\rhoとすれば


\begin{aligned}
p_t&=\displaystyle{\frac{E\left[d_t\right]+p_{t+1}}{1+r+ρ}}\\
&=\displaystyle{\frac{10+(1+0.05)p_t}{1+0.03+0.07}}\\
\therefore 0.05p_t=10\\
\therefore p_t=200
\end{aligned}

2. 債券市場の金利の期間構造

(a)将来の短期債利回り①

 来年における短期債の利回りをr_1とすれば期待仮説により


\begin{aligned}
(1+10\%)(1+r_1 )&=(1+20\%)^2\\
\therefore r_1&=\displaystyle{\frac{1.2^2}{1.1}}-1=0.309090909\approx31\%
\end{aligned}

(b)将来の短期債利回り②

 来年における短期債の利回りをr_1とすれば期待仮説により


\begin{aligned}
(1+30\%)(1+r_1)&=(1+20\%)^2\\
\therefore r_1&=\displaystyle{\frac{1.2^2}{1.3}}-1=0.107692308\approx11\%
\end{aligned}

3. リスクの回避

 Aの期待所得は


\begin{aligned}
90\times\frac{2}{3}+0\times\frac{1}{3}=60
\end{aligned}

であり、Bの期待所得は


\begin{aligned}
0\times\frac{2}{3}+90\times\frac{1}{3}=30
\end{aligned}

である。したがって、天気に拘わらず両者が期待所得を得られるような契約、すなわち晴れの場合にはAからB30支払い、雨の場合にはBからAに対して60支払う契約を締結すればよい。

4. 合理的バブル

(a) 合理的バブルが存在しない理由

 利子率 r\gt0と仮定すれば、合理的バブル下において


\begin{aligned}
b_t=(1+r) b_{t-1}
\end{aligned}

であるから、ある時点t_0においてb_{t_0}\lt0ならばすべての時点tにおいても負の値を取る。したがって任意の時点において資産価格が常にファンダメンタルズよりも小さく、これは投資家がこぞってその資産を売却していることを意味するため、合理的バブルは生じ得ない。

(b) 将来の合理的バブル

 100年後の合理的バブルについて


\begin{aligned}
b_{100}=(1+r)^{100}b_0=0
\end{aligned}

が成り立つから、利子率r\neq -1ならばb_0=0,r=-1ならば不定

*1:二神孝一・堀敬一(2017)「マクロ経済学 第2版」有斐閣 P.96-97参照

プライバシーポリシー お問い合わせ