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【ロシア・メモ】ロシア共産党員の一斉検挙は中国共産党が遠因?

 既に先週末のことではあるが、興味深いニュースがあった:

www.visiontimesjp.com

ロシア当局がこのほど、突然ロシア共産党の幹部を大量に逮捕している。「ロシアで何が起きているのか」と外野を驚かせた。弊社は、独占的な内幕情報を入手した。それは、ロシア共産党中国共産党(以下、中共)の密かな支援を受けて、プーチン政権を転覆させようと準備しているという情報を得たプーチン大統領が激怒し、直ちに多数のロシア共産党幹部の逮捕を命じた。

 先月(9月)20日に実施されたロシア連邦議会下院選挙では共産党が躍進したばかりであった。


図表1 下院選挙結果
f:id:suguru_125:20211016234518p:plain
出典:Radio Free Europe Radio Liberty*1

実はプーチン政権にとってロシア共産党は目の上のタンコブといった存在であるという認識が、米国を中心にここ最近、流布されてきた(たとえば米Washington Post産経新聞を参照。)。

そこでロシア共産党について少し調べてみる。

1. ロシア共産党とは?

 ロシア共産党は、厳密にはロシア連邦共産党(Коммунистическая партия Российской Федерации КПРФ, Communist Party of the Russian Federation)という。ソ連崩壊後に旧ソ連共産党保守派の党員が結集して結党した。「2014年のノヴォシビルスク市長選、2015年にはイルクーツク州の知事選で共産党統一ロシアに勝利しており、シベリアで勢力を伸ば」*2すなど、特に極東地方において強い勢力を誇っている。
 その影響、特に内政にえる影響力は無視できない*3

プーチン以上に歴史認識問題で保守的な発言を繰り返し、政策への反映を求めているのがロシア連邦共産党である。同党は戦勝を重視するだけではなく、独裁者とも評されるスターリンを二〇世紀史における偉人として極めて高く評価しており、彼に対する郷愁を隠していない。こうした姿勢に対して批判があるのも事実だが、同党はそれらに耳を傾けることなく自らの正当性を主張しスターリンを称賛する活動をロシア全土で展開している。
(・・・中略・・・)
共産党はロシア政治において一定の支持層を有しており、歴史認識問題といった特定のイシューにはそれなりの影響力を有している

2. 極東地域におけるロシア共産党

 伝統的にロシア共産党は極東地域では根強い影響力を有してきたようだ。

meduza.io

3. ロシア共産党中国共産党

 下院選挙の直後にはロシア警察当局が共産党員の一斉検挙に向けて動いたのだった。
www.themoscowtimes.com

こうした動きに対し、共産党側も反発してきた。
www.rt.com

その背景に中国共産党との関係があったというのが冒頭に引用した記事の趣旨であった。
 ロシア共産党中国共産党との関係は未だに深い。
global.chinadaily.com.cn

4. ロシアと中国の論点:ガスパイプライン

 ロシアと中国の間にはガスパイプラインも敷設されており、そのラインとして中国との隣接州に影響力を持つ共産党の排除という側面もあるのだろうか。


図表2 中露天然ガス供給パイプライン「シベリアの力」の概要
f:id:suguru_125:20211016233759p:plain
出典:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)*4

5. 中露関係の今後

 先月には、締結から20年経った善隣友好協力条約の延長を発表したばかりである*5

ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は28日、ビデオ形式で会談し、善隣友好協力条約の延長を発表した。露中両国は、同条約を5年間延長することで合意した。

 これだけ考えれば、両国の仲が悪いとは考えづらい所ではある。しかし、かつて1960年代、中国とソ連(当時)はそれまでの表面的な友好関係から一転して対立を披露してきた。その当時について外務省はこう説明している*6

1949年中共政権が成立してから1950年代の後半まで,中ソは表面上いわゆる「一枚岩」の団結を誇っていた。しかし,もともとソ連は,結局毛沢東党主席が,モスクワの指令によらずに中国共産党を指導し,革命を成就させたことに対して危惧の念を有し,他方,毛沢東を初めとする中国共産党指導部は,1920年代のコミンテルン国共合作工作が,中国共産党の勢力伸長を阻害したこと,第二次大戦後,ソ連は中国における国民党政府の立場を認め,中国共産党の勝利が決定的になるまで,中国共産党路線を全面的に支持しなかったこと等について,ソ連の政策について懐疑的であったことは否めず,その他,歴史的な両国の民族感情の対立,国境問題等もあり,中ソ両国は,「一枚岩」の団結を誇示していた時にすら,潜在的な不安定要素を有していたものと考えられる。
(・・・中略・・・)
中共が1966年に文化革命を開始して以来,中・ソの国家関係は極度に悪化した。すなわち,文化革命の方針を打ち出した1966年8月の11中全会公報において,中共は,ソ連修正主義と米帝国主義を同列の敵とみなし,中ソ間には中間の道はないと定義したのに対し,ソ連は「毛沢東とそのグループ」の推進している文化革命は「マルクス・レーニン主義と全く無縁のものである」として,中共「毛林派」との対決姿勢を示した。その後,文化革命を通じて中ソ両国は,ヴィエトナム問題,中近東問題等すべての機会を捉えて,従来にない論争と非難を交わし,特に,67年1月の赤の広場事件等を契機として,相互非難の言辞にも激しさが加わった。イデオロギー面については既に文化革命以前に議論し尽された観があり,文化革命後特に新しい発展はない。

 無論、今回の端緒となった記事は反中系メディアであり、その内容を直ちに正しいとするわけにはいかないものの、「無くはない」ことではある。古典地政学の理論によれば、隣国が友好的になるのはあり得ない。中国とロシアもその例に倣うことになるのだろうか。

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