金融工学におけるシミュレーションについて学んでいく。テキストとして以下を使う。今回はP.85-89まで。
6. 分散減少法
法は
- 問題に沿った(同時)分布に従う(多変量)乱数列の生成
- その乱数列を使った計算
の2つの部分に分けて考えられる。乱数列の生成は更に
- 一様分布に従う乱数列の生成
- それを元にした必要な同時分布に従う乱数列の生成
に分けられる。
法は高次元問題を取り扱うことはできるものの、誤差を減らすには大きな時間が掛かり時間効率が低い。そこで本章では時間効率を上げるための手段の1つとして分散減少法を説明する。法における解の統計的誤差は点列数に対してに出来る。分散減少法はこのを減らす試みである。
法による関数の積分値を
と書くことにすると、法のアイディアは以下の2つに分けることが出来ると言える:
- 関数を同じ積分値を取る別の関数に置換え
- 期待値の取り方を変更
関数を同じ積分値を取る別の関数に置換え |
期待値の取り方を変更 |
(1) 負の相関法 | (1) 条件付き法 |
(2) 制御変量法 | (2) 層別化法 |
(3) 回帰分析法 | (2-1) ラテン・ハイパーキューブ法 |
(4) マルチンゲール分散法 | (2-2) の方法 |
(3) 加重サンプリング法 | |
(4) 測度変換法 |
6.3 層別化法
層別化法は条件付き法と同様に解の誤差分散よりも解の誤差分散の方が小さいことを利用する。ただし条件を積分範囲の分割として与える。
積分
したがって
により得ることが出来る。ここでな一様乱数である。また第区間における推定では個の乱数を発生させたとする。
このとき解の分散は各が互いに独立であることに注意すれば
である。ここでは第区間での法におけるサンプルの分散である。
特にとすれば
が成り立つ。なおの変化幅が小さければ誤差分散も小さくなるので、分割は変化の小さい所で小さく分割し変化の大きいところで細かく分割すれば、より誤差分散を小さく出来る。
6.3.1 ラテン・ハイパーキューブ法
算術平均ヨーロピアン・コール・オプションの価格評価のように、満期までの時間を次元に離散化する場合、各次元の区間分割数に対して次元積分が個の層別化を必要とするため、層別化の適用は困難になる。それを解決する方法としてラテン・ハイパーキューブが考えられた。
次元区間において、各次元を分割したうえでからを要素とするランダム順列を用いてサンプリング・セルを決め、そこから1点のサンプリングを行なう。たとえば、2次元を考え、各区間を6等分したとする。たとえばランダム順列が得られたとすると、それらが定めるセルから乱数を1つずつ抽出する。すなわち個の乱数を得る。
図表 法におけるサンプリング・セルのイメージ
法による一様乱数を用いたサンプリング点はランダム順列を用いて
である。は次元次元一様乱数のうち番目に発生させた次元目の値である。または第ランダム順列の第番目の要素である。たとえばおよびとすれば、
である。
誤差分散は、サンプリング点を、解をとした場合、誤差分散は
となる。なお
が成り立つため、法はを大きくすれば必ず機能する。