【今日のまとめ】
- 金融とはお金を融通することを指す。
- 金融の機能は資金を流すと共にリスクを流すことにある。
- 金融機関の意義はお金が余っている人からお金が足りない人へお金を仲介することである。
- 1. 金融とは何ですか?
- 2. 金融機関とは?
- 3. 投資家にとっての金融:投資と投機、裁定取引
- 4. 借り手にとっての金融
- 5. 主要な金融機関の分類
- 6. 金融商品の分類
- 7. 金融の役割
- 8. 金融理論における考え方
- 9. 金融システム
- 次回
- 参考文献
1. 金融とは何ですか?
1.1 金融とは何ですか?
金融とはお金を融通することを指す。
- 金融とは、お金を融通し合うことである。
- お金が足りない人がお金が余っている人から借りたり(貸出)、お金が余っている人が自身の余ったお金をより増やすために人に預かってもらったり(預金)、お金を払わなければならない人への支払を代行してもらう(為替)こと等などが該当する。
図1 金融のイメージ

1.2. 金融の機能とは何ですか?
金融の機能は、資金を流すと共にリスクを流すことにある。
- 資金提供者は資金を資金受領者へ提供する。資金提供者は、資金提供の見返りとして手数料を得る
- (加えて提供資金の返済を受ける場合もある)と同時に、資金回収不可能のリスクを負う
図2 金融の機能

2. 金融機関とは?
金融機関の意義は、お金が余っている人からお金が足りない人へお金を仲介することにある。
- 個人では、資金受領者を探すコストが高い。
- 資金回収のモニタリング技術、事務負担を行う。
図3 金融機関の機能

金融機関は、
図4 金融機関の事業例

3. 投資家にとっての金融:投資と投機、裁定取引
金融で利益を得る手段は厳密には3つに分類できる:
- 投資(Income Gain) 投下資本に対し、配当や利息として利益を得る行為を投資という。
- 投機(Capital Gain) 投下資本に対し、投下資産の価格変動から利益を得る行為を投機という。通常の売買とは異なり、デリバティブの利用や信用取引等で、資産価格下落時でも利益を上げる事ができる点が特徴的である。
- 裁定取引(アービトラージ Arbitrage) 同一の価値を持つ商品の価格にズレが生じた際(裁定機会)に、割安な方を購入し割高な方を売却することで利益を上げる行為を裁定取引という。裁定取引によって、割安な商品は値段が上がり割高な方は値段が下がり、最終的には両者は一致する。したがって、裁定取引の存在が、市場価格が一物一価に則った「正しい」価格とされる所以である。
図5 信用売りで利益を得る方法

4. 借り手にとっての金融
資金受領者は、事業等の資金調達のために金融を利用する。方法に応じてメリット・デメリットが異なるため、事業に応じて最適な資金調達方法を採る必要がある。
図6 資金拠出の受け方

5. 主要な金融機関の分類
機関名 |
概要 |
---|---|
(商業)銀行 | 預金の形で拠出された資金を貸出に回し、利鞘を取る金融機関。又、資金決済等による手数料ビジネス等も行う。 |
信託銀行 | 信託業務(((金融での)信託とは、他人財産を自己名義で預かり、運用・管理を行ない他人(財産寄託者でもよい)に利益を供与すること。))を行なうことのできる銀行。(通常の銀行業務もできる)。 |
証券会社 | 有価証券に関わる売買・事務等を行う(代行する)会社。 |
保険会社 | 多数の者が保険料を出し合い、保険事故が発生したときには、生じた損害を埋め合わせるため、保険金を給付する機関。又、保険加入者から集めた保険料を運用するファンド(基金)でもある。 |
投資ファンド | 投資家から集めた資金を企業等に投資し、配当や上場利益を投資家に還元する基金、運用会社。余剰資金の投資を請け負う金融機関。 |
投資ファンドには以下のようなものがある:
ファンド種類 |
概要・例 |
---|---|
(1) 投資信託: | 信託機能を利用したファンド。 |
(2) ヘッジファンド: | リスクを積極的に取り市況に依らず絶対利益を追求するファンド。 |
(3) 企業のライフステージに応じたファンド: | 例:ベンチャーキャピタル、事業再生ファンド。 |
(4) 投資対象を限定したファンド: | 例:商品ファンド、債券ファンド、プライベート・エクイティ。 |
6. 金融商品の分類
種類 |
概要 |
種類 |
概要 |
---|---|---|---|
預金 | 銀行の貸出原資を拠出する代わりに利息を得る金融商品。 | 有価証券 | それ自身が財産価値を持ち、容易に譲渡が可能な財。 -株式 –債券 –現金 –手形 –小切手 |
為替 | 隔地間での債権債務関係を相殺することを請け負う金融サービス。 | 証券化商品 | ある資産が生み出す現金を元手として組成した有価証券。 |
外国為替 | 国を跨ぐ為替で、通貨の交換を伴うもの。 | デリバティブ | 左記または上記の資産から派生した金融商品。 例:先物、先渡、オプション、スワップ、コモディティ。 |
手形 | 将来の支払を約束した有価証券。 | ||
小切手 | 呈示されると即座に支払がされる有価証券。 | ||
貸付金 | 将来の返済を約して拠出した資金。 |
7. 金融の役割
金融(特に銀行)の重要な役割は、「信用創造」である。
- 銀行は預金を原資に融資する。
- しかし、預金者から求められれば、銀行は預金を返却する義務がある。
- 但し、預金者は預金額の全額を一度に引出すとは限らない。又、返却に備えるべき金額は、統計的に推計可能(大数の法則)である。そこで、全預金額の一部のみ手許に残しておけば*1、『概ね』返却義務に応じることが可能である。
- そこで、預金準備率分だけ手許に残し、残額を融資に回すこととする。
- 融資により相手の口座に入った預金を元手にさらに別の主体に融資する。
- 当初の預金に対し、当該銀行内の預金額は増加する。
- 以上が連鎖することで、当初預金された現金以上の資金を様々な主体に提供することができる。
以上の仕組みを信用創造という。但し、結局の元手は当初の預金額でしかないため、いずれかの主体が問題を起こすと信用収縮が発生し、連鎖的に負債が発生する(バブルの崩壊)。
信用創造の例
預金者Aが銀行Bへܺ万円を預金したとする。このとき、預金準備率
とすれば、銀行Bは日銀に対し預金準備として
万円を預託することとなる。その後、預金者Aの預金を元手に、銀行Bが企業Cへ
万円融資したとする。このとき、銀行BはA への債務
万円および日銀への債権
万円、企業C への債権
万円を生んだこととなり、社会的に見れば、預金ܺ
万円を元手に
万円の資産を生み出したこととなる。
但し、これらを相殺した正味価値(ネット価値)で見れば、債権債務の相殺により、 Aへの債務万円のみとなる。このズレがバブルを生むこととなる。
8. 金融理論における考え方
金融を考えるに当たって4つの基本的な考え方がある:
- 投資には見返り(ex. 利子・配当)が要求される 投資を受ける際には、相手が他に資金を使う機会を失う分の手数料+出資が毀損する可能性への手数料+etc…を支払う必要がある。
図8 投資の見返り

- リスクのある1円は、安全な1円よりも価値が低い いずれかのルールでお金を得られるとしたら、どちらを好むか? (A) 明日正午100%の確率で1万円貰える。(B) 明日正午50%の確率で1万円貰えるが、50%の確率で1円も貰えない。 ・では、以下の条件ではどちらを好むか? (C) 明日正午100%の確率で1万円貰える (D) 明日正午50%の確率で2万円貰えるが、50%の確率で1円も貰えない。 ・以上の質問から、二つのことが分かる: (1) 受け取る(支払う)お金の評価には、リスク(≒不確実性)を織り込む必要がある。 (2) 受取(支払)額が減(増え)る可能性があるならば、その金融商品は無リスクで同額の受取がある金融商品よりも価値が低い。
- お金は時間価値を持つ=明日貰える1円は、今日の1円よりも価値が低い:時間価値 今
手許にある
万円は
年後
に貰える
万円と同価値か?今の方が高価値だと考える。例えば今から1年間預金すれば、
万円+利息(=
万円)が期待される。受取(支払)が異なる期間で生じる場合は、その期間を価格に織り込む必要がある。
図9 時間価値の概念

9. 金融システム
金融システムとは、金融取引のルールを規定する法律・規制・制度から構成される金融取引に関わる枠組みあるいは金融サービスの在り方に関する制度的取決めを指す。実際の金融取引は、市場又は金融機関同士が取引慣行や自主的なルール等で補いつつ、取引参加者のニーズに合致する形で行われる。
金融システムが持つ機能は以下の5つに整理できる:
- 支払の清算・決済を行うこと。
- 資金をプールし必要とするものに資金提供を行うメカニズムを提供すること。
- 時間、空間、産業を超えて経済資源を移転すること。
- 不確実性を調整し、リスクをコントロールする手段を提供すること。
- 情報を提供すること。
9.1 支払の清算・決済
支払の清算・決済を行うことが、金融システムの機能の一つである。振込等に加え、売買した債券・株式の受け渡しも含む。これにより、遠隔地であっても売買取引の金銭支払を簡単にし、支払のリスクを削減することができる。
9.2 資金提供メカニズムの提供
資金が余っている主体は、銀行に預金する。当該預金を元手に銀行は資金が不足する主体へ貸出を行い資金提供する。または、株式を購入することを通じて企業へ投資することができる。家計を事業法人へ投資すること等を通じて資金提供メカニズムを金融システムは提供する。
9.3 時間、空間、産業を超えた経済資源の移転
資金が余った主体から、資金不足の主体へと資金を移転するのみならず、時間、空間、産業を超えて経済資源を効率的に移転することを可能にする。
9.4 リスクのコントロール
金融の自由化、グローバル化、情報化の中でスワップ取引や先物取引、オプション取引といったデリバティブ取引を通じて、主体が抱えるリスクをヘッジ、転嫁することが可能となった。またそのリスクを進んで引き受けることでリスクが発現しなかった場合の利益を得る業を営む主体も登場した(例:ヘッジファンド)。これにより、より自由かつ容易にリスク転嫁が可能となった。
9.5 情報の提供
デリバティブ取引によるリスクの分解、再配分を通じて、キャッシュフローやリスクの評価が市場でなされるようになった。これにより、借手の返済能力やデリバティブが対象とするリスク等の情報が市場で観測できるようになった。
9.6 金融制度における直接金融と間接金融
市場 |
取引内容 |
リスクの取り手 |
---|---|---|
直接金融 | 金融市場を通じて資金提供者(投資家)と資金調達者が直接的に資金の融通を行う取引。*2 | 投資家がリスクを負担している。 |
間接金融 | 主に銀行を通じて資金提供者(預金家)と資金調達者が間接的に資金の融通を行う取引。 | 銀行がリスクを負担している。 |
日本の金融システムは幾度の改革があったものの、未だに銀行が金融システムの中心を占めている。
参考文献
- Crane, D.B., et al. (1995) “The Global Financial System: A Functional Perspective,“ Harvard Business School Press
- Brealey, R.A., Myers, S.C., et al.(2013) "Principles of Corporate Finance Global Edition," McGraw Hill
- 鹿野嘉昭(2012)「日本の金融制度 第3版」東洋経済新報社