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一流の大人(ビジネスマン、政治家、リーダー…)として知っておきたい、教養・社会動向を意外なところから取り上げ学ぶことで“気付く力”を伸ばすブログです。データ分析・語学に力点を置いています。 →現在、コンサルタントの雛になるべく、少しずつ勉強中です(※2024年1月21日改訂)。

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年金資産運用(その01/11)

 中長期における資産運用の考え方を学ぶべく、

を整理していく*1

目次

1.1 年金運用を巡る環境の変化

1.1.1 米国の環境変化

 1960年代まで、投資顧問会社の参入があったものの、銀行信託部門及び生命保険会社が団体年金分野の主要な管理者であった。第1次石油ショックで小型成長株のパフォーマンスが鈍化すると、資産運用経験は無いものの最先端の理論を好く\mathrm{MBA}が年金資産管理者に殺到した。
 米国での運営規制は\mathrm{1974}年に\mathrm{ERISA}法が制定されたことに始まった。企業年金制度の加入者保護を目的とする\mathrm{ERISA}法は\mathrm{Prudent}-\mathrm{man\ Rule}の基準および具体的解釈が示されることになった。\mathrm{1979}年初めには投資が同法に基づき適当かを判断する具体的な解釈として

  (1) リスク多様化の観点からの全年金ポートフォリオの構成
  (2) 株価水準に対する全年金ポートフォリオの変動
  (3) 退職給付の支払スケジュールに対応した全年金ポートフォリオ流動性
  (4) 年金プランの投資目的の観点からの全年金ポートフォリオの期待リターン
  (5) 年金プランが投資を提案する対象資産の現行および将来の経済環境

\mathrm{1982}年には一般の年金スポンサーがベンチャー・キャピタル投資および不動産投資が本格化することになった。

1.1.2 日本の環境変化

 \mathrm{1990}年になると、日本でも投資顧問会社企業年金運用が認められた。

1.2 株式運用の時代

1.2.1 米国の株式運用シフト

 \mathrm{1970}年までに金融革命の第1局面が終了し、年金資金が流入したことで株式相場上昇に貢献した。
 \mathrm{1970}年代になって一見パフォーマンスが低下したものの、長期金利が高めで長期国債で運用すれば高利回りを約束されていたため、運用環境としてはそれほど悪くなかった。\mathrm{1982}年から大規模に行われたベンチャー・キャピタル投資や不動産投資もニューエコノミーの中でも高収益をもたらし年金財政改善に役立った。

1.2.2 日本の株式運用シフト

 日本の企業年金での株式運用増加はバブル崩壊前後の日経平均急落の過程でのもので、最悪のタイミングだった。

1.2.3 年金ファンド社会主義

 米国では\mathrm{1970}年代までには年金基金が株式市場で大きな影響力を持つようになった。\mathrm{1990}年代に米国の外国株保有は、米国株式投資全体の1割近くにまで上昇した。
 わが国では年金資金が保有している日本株式は2003年でも10\%程度と考えられる。

1.3 国債投資の増加

1.3.1 米国の企業年金による国際投資

 1980年代半ば以降には国際投資が大きく増加した。それ以降も国際投資を増大させた。

1.3.2 日本の企業年金による国際投資

 日本の企業年金による国際投資も大きく比率を増大させてきたが、財政状態が米国よりも悪いためにリスク許容度が低い中で為替リスクなどを取ることが望ましいかは要検討である*2

1.4 (エンハンスト・)インデックス・ファンドの普及

1.4.1 米国におけるインデックス・ファンド

 米国でインデックス・ファンドがはじめて開発されたのは1969年であった。当初誕生したインデックス・ファンドは1973年に解散し、代わりに組成がより容易で取引コストの低いS&P500のインデックス・ファンドが発売された。1980年代になるとインデックス・ファンド市場は一層拡大したものの、競争が熾烈を極めたことで運用収益が消滅した。そのためにエンハンスト・インデックス・ファンドが開発された。
 エンハンスト・インデックス・ファンドはリスク水準をインデックス・ファンドと同程度としつつもインデックス・ファンドよりもわずかに超過したリターンを目指すファンドである。

1.4.2 日本におけるインデックス・ファンド

 日本では、投信分野で1985年に開発されたのが最初である。同年に企業年金向けにも発売した。

2. 年金運用におけるPlan-Do-Seeプロセス

 年金基金管理で最も重要なのが規律を持った運用プロセスの確立である。

2.1 政策アセット・ミックスの重要性

 年金制度運営上の責任を持つ飢饉は年金キャッシュフローの長期性を十分に考慮した運用基本方針を策定する義務を負っている。その中でも策定が重要なのが政策アセット・ミックスである。政策アセット・ミックスは、

  • ①長期運用の規範としての役割
  • ②飢饉と運用受託機関の基本的関係の中で責任分担の明確化や意思疎通の効率化を図る役割

を担う。
 投資の意思決定において最も重要なプロセスは、まず政策アセット・ミックスの決定で、その次にアクティブ・アロケーションおよび銘柄選択である。実証研究上、

  • 基金の期中の平均的なアロケーションに基づき市場インデックスで構築したポートフォリオ(政策ポートフォリオ)のリターンで年金基金のリターンの変動を9割近く説明できた
  • 政策の総意でファンド間のリターンのバラつきを40%近く説明できた(=アクティブのタイミング効果やスタイル、銘柄選択効果でファンドの相違を説明できる)
  • 政策リターンで実績リターンの水準をほぼ説明できる

ことが分かっている。

2.2 投資意思決定の仕組みと運用基本方針

 年金運用は、普通の資産運用とは異なり、運用収益が高ければ高いほど良いわけではなく、年金加入者が受給者になったときに約束した年金を支払えるようにすることが最終目的である。
 とはいえ長期的にリターンを生み出すにはリスクを取ることが必要であり、過度なリスクテイクに注意しなければならない。そのため、ステークホルダーの納得を得るための手続きや組織建て、コミュニケーションが重要になってくる。
 しかし運用は過度に専門的であるため、専門家に委託する面もある。そこで継続に一貫した運用基本方針を守るべく、文書で明確に「運用政策書(Investment Policy Statement)」の作成が不可欠になる。「運用政策書」に重要事項を記載することで、受託責任を果たしつつ安心して業務に専念できる。

2.3 マネージャ・ストラクチャー

 以下が論点になる:

  • 委託運用か自家運用か:自家運用にするか委託運用にするかには、委託運用コスト比較などのメリット・デメリット分析の上、運用管理体制を充実できるかで決める。その中でも体制整備をプラン・スポンサーである企業自ら決定することが必要である。
  • アクティブ・パッシブ比率:アクティブ・パッシブ比率は年金基金の資産運用市場の見方とそれに対する確信度合いにより決める。
  • バランス型運用か特化型運用か
  • リバランス:当初決めたリスク以上のリスクを取らないという決意表明に他ならない
  • モニタリングとリスク管理

※自家運用のメリット・デメリット

 
メリット
デメリット
  ①外部委託手数料が不要 ①運用体制の整備に掛かるコスト
  ②運用効率の向上 ②総合的なリスク管理体制の充実が不可欠
  ③運用能力の向上 ③運用マネージャーの処遇面での対応が必要
  ④商品選択の高自由度 ④従来の掛金・給付の仕組みを自前で行うための体制整備が必要
  ⑤機動的・効率的なキャッシュ・マネジメント  

*1:どうも最近の書籍でこれくらいしっかりと書いてある本が見当たらなかったので…

*2:この書籍が書かれた当時(2003-4年)のことである。

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