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一流の大人(ビジネスマン、政治家、リーダー…)として知っておきたい、教養・社会動向を意外なところから取り上げ学ぶことで“気付く力”を伸ばすブログです。目下、データ分析・語学に力点を置いています。今月(2022年10月)からは多忙につき、日々の投稿数を減らします。

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ファイナンスのための確率過程を丁寧に(01/X)

 ファイナンスのために基礎から

を基に確率過程を学んでいきます。

1. デリバティブとは

1.1 デリバティブ

 デリバティブ金融派生商品と訳され、元になる金融商品(原資産と呼ぶ)から新しく作られた金融商品である。原資産はさまざまな金融商品(ないし契約内で客観的に参照し得るもの(指標))を選べる。デリバティブはプレーンバニラと呼ばれる基本的なものとエキゾチックと呼ばれる複雑に加工されたものに分類できる。また先物取引やオプションがデリバティブに含まれる。

1.1.1 先物取引

 先物取引は原資産を予め定めた受渡価格Kで満期時Tに売買することを決める契約である。契約時に金銭の授受が生じないように受渡価格Kは決められる。そのため先物買いも先物売りはいずれも現在価値は0である。したがって先物ペイオフ*1は、


\begin{aligned}
\mathrm{ペイオフ}=\mathrm{収益}
\end{aligned}

を満たす。また同じ先物の買い・売りの損益は完全に反対となり、合算すれば常に0になる。以上から、受渡価格Kペイオフ


\begin{aligned}
P_{\mathrm{buy}}&=S_T-K,\\
P_{\mathrm{sell}}&=K-S_T
\end{aligned}

を満たす。
 他方で先物取引は以下の特徴を持つ:

  • 先物取引を契約した時点は現金の授受が生じない。したがって契約時点での契約のためには現金は不要である*2
  • 差金決済が可能である。特に指数など実際の原資産が取引可能でない先物の場合は差金決済しかできない。
  • 先物取引契約は義務で、履行しなければならない。
1.1.2 オプション

 オプションは原資産を予め定めた受渡価格Kで満期時Tに売買する権利を売買する契約である。買う権利を付与するオプションをコール・オプション、売る権利を付与するオプションをプット・オプションである。オプションの詳細は以下を参照:

power-of-awareness.com

1.2 利子率と現在価値割引

 1年間の利子率(年利率)をrとすれば、単位通貨分をその率で運用すると1+rになる。複利であればその年数乗しただけに増やすことができる。

1.3 無裁定

 裁定は確率1で利益を上げることができることを意味する。実際の市場では、もし裁定機会が存在すれば、即座にその裁定取引を行ってその機会は解消されるはずであるから、基本的に無裁定性を仮定するのである。このことは、ペイオフが全く同じ金融商品は現在価値も同じでなければならないということを要求することにつながる。これを「一物一価の法則」という。無裁定性は確率とも関係を持つ。

2. 離散モデルのデリバティブ価格理論I

2.1 2項1期間モデル

 市場に原資産と安全資産しか存在せず、これらの資産価格の観測時点としてt=0,1の2時点しかないと考える。さらに原資産はt=1において2通りの値しか取り得ないと仮定する。このようなモデルを2項1期間モデルという。



これらの2資産のポートフォリオで行使価格Kコールオプション単位を複製することを考え、原資産をx,安全資産をyだけ保有するとすれば、時点t=1におけるペイオフは、t=0での原資産価格をSとすれば、


\begin{aligned}
\begin{cases}
xuS+(1+r)y&=\max(uS-K,0),\\
xdS+(1+r)y&=\max(dS-K,0)
\end{cases}
\end{aligned}

である。uS-K\geq0,dS-K\lt0と仮定すれば、


\begin{aligned}
\begin{cases}
xuS+(1+r)y&=uS-K,\\
xdS+(1+r)y&=0
\end{cases}
\end{aligned}

であるから、


\begin{aligned}
x&=\displaystyle{\frac{uS-K}{(u-d)S}},\\
y&=-\displaystyle{\frac{d}{1+r}}\displaystyle{\frac{uS-K}{u-d}}
\end{aligned}

が得られる。無裁定性から、このモデルにおけるこのコールオプションの価格C


\begin{aligned}
C=xS+y=\displaystyle{\frac{uS-K}{u-d}}\left(1-\displaystyle{\frac{d}{1+r}}\right)
\end{aligned}

で与えられる。

2.2 リスク中立確率

 2項1期間モデルを改めて以下のように設定する。



さらに無裁定条件として0\lt1+d\lt1\lt1+r\lt1+uと仮定する。原資産を\Delta単位、安全資産B単位のポートフォリオで複製するとすれば、


\begin{aligned}
\begin{cases}
(1+u)S\Delta+(1+r)B&=\max( (1+u)S-K,0),\\
(1+d)S\Delta+(1+r)B&=\max( (1+d)S-K,0)
\end{cases}
\end{aligned}

が成り立つ。これを\Delta,Bについて解くことで


\begin{aligned}
\Delta&=\displaystyle{\frac{\max( (1+u)S-K,0)-\max( (1+d)S-K,0)}{(u-d)S}},\\
B&=\displaystyle{\frac{(1+u)\max( (1+d)S-K,0)-(1+d)\max( (1+u)S-K,0)}{(1+r)(u-d)}}
\end{aligned}

が成り立つ。無裁定性からコールオプションの価格C


\begin{aligned}
C=&S\Delta+B\\
=&\displaystyle{\frac{\max( (1+u)S-K,0)-\max( (1+d)S-K,0)}{u-d}}\\
&+\displaystyle{\frac{(1+u)\max( (1+d)S-K,0)-(1+d)\max( (1+u)S-K,0)}{(1+r)(u-d)}}\\
=&\displaystyle{\frac{1}{(1+r)(u-d)}}\left((r-d)\max( (1+u)S-K,0)+(u-r)\max( (1+d)S-K,0)\right)
\end{aligned}

である。ここでQ(X=1+u)=\displaystyle{\frac{r-d}{u-d}}とおけばQ(X=1+d)=\displaystyle{\frac{u-r}{u-d}}=1-Q(X=1+u)であるから、このQ(\cdot)は確率と見なすことができ、


\begin{aligned}
C=&\displaystyle{\frac{1}{(1+r)(u-d)}}\left((r-d)\max( (1+u)S-K,0)+(u-r)\max( (1+d)S-K,0)\right)\\
=&\displaystyle{\frac{1}{1+r}E^{Q}[\max(XS-K,0)]}
\end{aligned}

が成り立つ。このQをリスク中立確率と呼ぶ。すなわちコールオプションの現在価値は、コールオプションペイオフ\max(XS-K,0)のリスク中立確率測度Qでの期待値を取り、それを現在価値に\displaystyle{\frac{1}{1+r}}で割り引いたものに他ならない。

2.3 Black-Scholes偏差分方程式、偏微分方程式

  • 時刻tにおける株価S_tは時刻t+1

    \begin{aligned}S_{t+1}=\begin{cases}(1+\mu+\sigma)S_t\\(1+\mu-\sigma)S_t\end{cases}\end{aligned}

    になるとする。また時刻tにおける安全資産B_t=1は時刻t+1

    \begin{aligned}B_{t+1}=(1+r)B_t\end{aligned}

    になるとする。満期時Tにおいてペイオフf(S_T)であるようなデリバティブの時刻tにおける価格をC(t,S_t)とするとき、時刻tにおいてデリバティブ1単位および株式x単位で組むポートフォリオが安全資産の複製になるようなxを求め、さらにC(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t),C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t)およびC(t,S_t)の関係式を求めよ。
  • 次に前問でスケール変換を行い単位時間を1から\Delta tに変換し、併せて\mu\mu\Delta t,\sigma\sigma\sqrt{\Delta t}に変換して\Delta t\rightarrow0にすることで偏微分方程式を導出せよ。更に受渡価格がKであるような先物買いのtにおける価格が関数gを用いてC(t,s)=S-g(t)(境界条件C(T,S)=S-K)とおけるとしてこれを求めよ。

 まず時刻tにおいてデリバティブ1単位および株式x単位で組むポートフォリオについて、安全資産を複製しているのであれば、t+1において


\begin{aligned}
C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)+x(1+\mu+\sigma)S_t=&C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t)\\&+x(1+\mu-\sigma)S_t
\end{aligned}

が成り立つから、


\begin{aligned}
2x\sigma S_t&=C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t)-C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)\\
x&=\displaystyle{\frac{C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t)-C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)}{2\sigma S_t}}
\end{aligned}

が得られる。
 またこのポートフォリオが安全資産を複製していることから、


\begin{aligned}
C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)+x(1+\mu+\sigma)S_t=(1+r)(C(t,S_t)+xS_t)
\end{aligned}

が成り立ち、ここにxを代入することで



\begin{aligned}
&C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)+x(1+\mu+\sigma)S_t=(1+r)(C(t,S_t)+xS_t)\\
\Leftrightarrow&2\sigma C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)+x(1+\mu+\sigma)=(1+r)(2\sigma C(t,S_t)+x)\\
\end{aligned}


である。さらに



\begin{aligned}
&2\sigma C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)+x(1+\mu+\sigma)=(1+r)(2\sigma C(t,S_t)+x)\\
\Leftrightarrow&2\sigma C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)+(C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t)\\
&\ \ \ \ -C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t) )(1+\mu+\sigma)\\
&\ \ \ \ =(1+r)(2\sigma C(t,S_t)+C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t)-C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t) )\\
\Leftrightarrow&(r-\mu+\sigma)C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)+(\mu+\sigma-r)C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t)\\
&\ \ \ \ =2(1+r)\sigma C(t,S_t)\\
\Leftrightarrow&\displaystyle{\frac{\sigma}{2}}C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)+\displaystyle{\frac{r-\mu}{2}}C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)\\
&\ \ \ \ +\displaystyle{\frac{\sigma}{2}}C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t)-\displaystyle{\frac{r-\mu}{2}}C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t)\\
&\ \ \ \ =(1+r)\sigma C(t,S_t)\\
\Leftrightarrow&\displaystyle{\frac{1}{2}}C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)+\displaystyle{\frac{r-\mu}{2\sigma}}C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)\\
&\ \ \ \ +\displaystyle{\frac{1}{2}}C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t)-\displaystyle{\frac{r-\mu}{2\sigma}}C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t)\\
&\ \ \ \ =(1+r)C(t,S_t)\\
\Leftrightarrow&\displaystyle{\frac{1}{2}}(C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)+C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t) )\\
&\ \ \ \ +\displaystyle{\frac{r-\mu}{2\sigma}}(C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)\\
&\ \ \ \ -C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t) )-C(t+1,S_t)+C(t+1,S_t)-(1+r)C(t,S_t)=0\\
\Leftrightarrow&\displaystyle{\frac{1}{2}}(C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)-2C(t+1,S_t)+C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t) )\\
&\ \ \ \ +\displaystyle{\frac{r-\mu}{2\sigma}}(C(t+1,(1+\mu+\sigma)S_t)\\
&\ \ \ \ -C(t+1,(1+\mu-\sigma)S_t) )+C(t+1,S_t)-(1+r)C(t,S_t)=0
\end{aligned}

を得る。


 次に1\rightarrow\Delta tと変換すると、\mu\rightarrow\mu\Delta t,\ \sigma\rightarrow\sigma\sqrt{\Delta t}と変換されることを踏まえると、


\begin{aligned}
&\displaystyle{\frac{1}{2\Delta t}}(C(t+\Delta t,(1+\mu\Delta t+\sigma\sqrt{\Delta t})S_t)-2C(t+\Delta t,S_t)\\
&\ \ \ \ \ \ \ \ +C(t+\Delta t,(1+\mu\Delta t-\sigma\sqrt{\Delta t})S_t) )\\
&\ \ \ \ +\displaystyle{\frac{r-\mu}{2\sigma\sqrt{\Delta t}}}(C(t+\Delta t,(1+\mu\Delta t+\sigma\sqrt{\Delta t})S_t)\\
&\ \ \ \ -C(t+\Delta t,(1+\mu\Delta t-\sigma\sqrt{\Delta t})S_t) )\\
&\ \ \ \ \ \ \ \ +\displaystyle{\frac{1}{\Delta t}}\{C(t+\Delta t,S_t)-C(t,S_t)\}-rC(t,S_t)=0
\end{aligned}

である。
 ここで\Delta t\rightarrow0とすれば、


\begin{aligned}
C(t+\Delta t,S+\Delta S)\approx&C(t,S_t)+\displaystyle{\frac{\partial C}{\partial t}}\Delta t+\displaystyle{\frac{\partial C}{\partial S}}\Delta S\\
&+\displaystyle{\frac{1}{2}\left(\displaystyle{\frac{\partial^2 C}{\partial t^2}}(\Delta t)^2+2\displaystyle{\frac{\partial^2 C}{\partial t\partial S}}\Delta t\Delta S+\displaystyle{\frac{\partial^2 C}{\partial S^2}}(\Delta S)^2\right)}
\end{aligned}

により得られる



\begin{aligned}
&C(t+\Delta t,S_t+(\mu\Delta t+\sigma\sqrt{\Delta t}S_t) )\\
\approx&C(t,S_t)+\displaystyle{\frac{\partial C}{\partial t}}\Delta t+\displaystyle{\frac{\partial C}{\partial S}}(\mu\Delta t+\sigma\sqrt{\Delta t}S_t)\\
&+\displaystyle{\frac{1}{2}\left(\displaystyle{\frac{\partial^2 C}{\partial t^2}}(\Delta t)^2+2\displaystyle{\frac{\partial^2 C}{\partial t\partial S}}\Delta t(\mu\Delta t+\sigma\sqrt{\Delta t}S_t)+\displaystyle{\frac{\partial^2 C}{\partial S^2}}(\mu\Delta t+\sigma\sqrt{\Delta t}S_t)^2\right)}\\
&C(t+\Delta t,S_t+(\mu\Delta t-\sigma\sqrt{\Delta t}S_t) )\\
\approx&C(t,S_t)+\displaystyle{\frac{\partial C}{\partial t}}\Delta t+\displaystyle{\frac{\partial C}{\partial S}}(\mu\Delta t-\sigma\sqrt{\Delta t}S_t)\\
&+\displaystyle{\frac{1}{2}\left(\displaystyle{\frac{\partial^2 C}{\partial t^2}}(\Delta t)^2+2\displaystyle{\frac{\partial^2 C}{\partial t\partial S}}\Delta t(\mu\Delta t-\sigma\sqrt{\Delta t}S_t)+\displaystyle{\frac{\partial^2 C}{\partial S^2}}(\mu\Delta t-\sigma\sqrt{\Delta t}S_t)^2\right)}
\end{aligned}


を踏まえれば、


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{1}{2}}\sigma^2 S_t^2\displaystyle{\frac{\partial^2 C}{\partial S^2}}+\displaystyle{\frac{\partial C}{\partial t}}+\mu\displaystyle{\frac{\partial C}{\partial S}}-rC=0
\end{aligned}

が得られる。このとき境界条件C(T,S)=f(S)である。
 最後に先物買いのt時点価格は、C(t,S)=S-g(t)を上式に代入すればよい。


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{\partial^2 C}{\partial S^2}}&=0,\\
\displaystyle{\frac{\partial C}{\partial S}}&=1,\\
\displaystyle{\frac{\partial C}{\partial t}}&=-g^{\prime}(t)
\end{aligned}

より、g(T)=Kに注意して


\begin{aligned}
&rS-g^{\prime}(t)-rC=0\\
\Leftrightarrow&g^{\prime}(t)=rg(t)\\
\Leftrightarrow&\displaystyle{\frac{dg}{g}}=rdt\\
\Leftrightarrow&\displaystyle{\int_t^T \frac{dg}{g}}=r\displaystyle{\int_t^T ds}\\
\Leftrightarrow&log\left|\displaystyle{\frac{g(T)}{g(t)}}\right|=r(T-t)\\
\Leftrightarrow&g(t)=Ke^{-r(T-t)}
\end{aligned}

を得る。したがってC(t,S)=S-Ke^{-r(T-t)}である。

*1:満期時に受け取る(支払う)金額を指す。

*2:実際には、証拠金を必要とするため、額面未満だが一定額の資金は必要である。

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