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国際金融(その04/X)

 国際金融を

を基に学んでいく。

5. 金利と為替レート

 為替レートと他の重要なマクロ経済変数の関係を考察する。まずは金利と為替レートの関係などを議論する。

5.1 金利裁定とカバー付き利子平価

5.1.1 外貨建資産

 異なる通貨建資産同士の比較をするには、各資産は通常、将来の異なる複数時点にキャッシュを発生させるため、異なる将来時点における為替レートを検討しなければならない。以下では利子付資産*1を考えることにする。

5.1.2 利子率と資産収益率

 預金は利子率が確定しているから、



\begin{aligned}
自国通貨建預金の資産収益率=利子率
\end{aligned}


が成り立つ。デフォルトを考えないとすれば、自国通貨建預金は元本も利息も自国通貨で受取り、収益率は確定値である。
 これに対して外貨預金の場合、収益計算に名目為替レートを用いた元利の換算が必要なため、



\begin{aligned}
外貨建預金の資産収益率&=利子率+外国通貨増価率\\
&=利子率+国内通貨減価率
\end{aligned}


が成り立つ。このように利子率のみでなく名目為替レートを考慮する必要がある。

5.1.3 先渡取引とカバー付利子平価

 開始と終了が共にt時点およびt+k時点であるような自国通貨建預金と外貨建預金を考える。
 簡単のためにk=1とすれば、自国通貨の1期間利子率をr_{t,t+1}^Dについて元金1単位あたりの利息は



\begin{aligned}
1\cdot(1+r_{t,t+1}^D)=1+r_{t,t+1}^D
\end{aligned}


である。
 一方で外貨については、第t時点には1期間利子率r_{t,t+1}^F、第t期における名目為替レートS_t*2が既知である。これに対して第t期時点では第t+1時点における直物レートS_{t+1}は未知である。しかし先渡取引を活用すれば第t+1期に得られる利息の為替リスクをヘッジできるようになる。この方法を用いて、自国通貨1単位を元手に第t期に外貨預金を始めることにする。
 このとき、まずは元手である自国通貨1単位を外貨に換えることになる。この交換比率は第t期における名目為替レートS_tであるから、



\begin{aligned}
1[自国通貨]\div S_t[自国通貨/外貨通貨]=\displaystyle{\frac{1}{S_t}}[外貨通貨]
\end{aligned}


の外貨が得られ、これが預金の元金になる*3。またこれと同時点に外貨預金が満期を迎える第t+1時点に外国通貨を売り自国通貨を買う先渡取引をF_{t,t+1}[自国通貨/外国通貨]のレートで締結する。預金は満期において



\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{1}{S_t}(1+r_{t,t+1}^F)}[外国通貨]
\end{aligned}


となる。予め締結した先渡レートが適用され、最終的に



\begin{aligned}
\left(\displaystyle{\frac{1}{S_t}}\right)(1+r_{t,t+1}^F)F_{t,t+1}
\end{aligned}


を得る。
 この元利金は当初の元金を自国通貨建預金で1期間運用した元利金1+r_{t,t+1}^Dと等価でなければならない。なぜならば、もし一方の方が高ければ、先渡取引を契約した一方の主体が損失を出してしまうため、そもそもそのような損失を許容するような先渡レートをその主体が許容しないからである。このような裁定を許容しないのであれば、



\begin{aligned}
1+r_{t,t+1}^D=\left(\displaystyle{\frac{1}{S_t}}\right)(1+r_{t,t+1}^F)F_{t,t+1}
\end{aligned}


が成り立つ。この等式をカバー付利子平価(もしくはカバー付金利平価)*4という。
 この両辺の自然対数を取ると



\begin{aligned}
\log\left(1+r_{t,t+1}^D\right)=\log F_{t,t+1}-\log S_t+\log\left(1+r_{t,t+1}^F\right)
\end{aligned}


が得られる。もしr_{t,t+1}^D,r_{t,t+1}^FS_t,F_{t,t+1}の差が充分に僅少*5であるならば、これを近似した



\begin{aligned}
r_{t,t+1}^D\approx \displaystyle{\frac{F_{t,t+1}-S_t}{S_t}}+r_{t,t+1}^F
\end{aligned}


が用いられることも多い。この式はいずれもt時点において確定している変数を用いている点が肝要である。

5.1.4 カバー付金利平価と資本の可能性

 カバー付金利平価が成立しているならば、異なる通貨建資産に金利差が存在していても、直物取引と先渡取引を併用しても利益を上げることができないはずである。
 無論、自由な取引が制限されている、たとえば政府によって外貨建資産の取引が自由にできない場合*6にはこれは成り立たない。このような観点から、カバー付金利平価の成立は資本の完全可動性と呼ばれる。

5.2 カバー無し金利平価と均衡為替レート

5.2.1 カバー無し金利平価

 次に先渡取引を行わない場合を考える。預金開始時に満期時の直物レートの予想である予想為替変化率を考えればよい。現時点(t時点)における将来t+1時点の予想為替レートをS_{t,t+1}^{e}とすれば、



\begin{aligned}
1+r_{t,t+1}^D=\left(\displaystyle{\frac{S_{t,t+1}^e}{S_t}}\right)(1+r_{t,t+1}^F)
\end{aligned}


が成り立ち、前節と同様の議論から、近似的に



\begin{aligned}
r_{t,t+1}^D\approx r_{t,t+1}^F+\displaystyle{\frac{S_{t,t+1}^e-S_t}{S_t}}
\end{aligned}


が成立する。このような裁定をカバー無し金利平価と呼ぶ*7

5.2.2 カバー無し金利平価と資本の代替性

 異なる通貨建ての債券を比較するに当たり、予想収益率が等しければ、両者は無差別である、すなわち一方を他方よりも好むことがない投資家はリスク中立的であるという。また投資家が異なる通貨建ての債券に対して無差別であるとき、これらの債券は投資家にとって完全代替物であるという。カバー無し金利平価の成立は、相違する通貨間での資産取引が全くもって自由、すなわち資本が完全に可動的でかつ投資家にとって自国通貨建て債券と外貨建て債券が完全代替的であることを意味する。
 カバー無し金利平価に基づくと、自国通貨建資産と外貨建資産の予想収益率が等しくなければ、金利裁定取引が発生する。通貨の一方には売り圧力が、もう一方には買い圧力が掛かり、両通貨間の名目為替レートはカバー無し金利平価条件が達成されるまで調整される。もし平価条件が達成されれば、名目為替レートはその水準で落ち着くはずである。この値を均衡為替レートという。
 均衡為替レートを知るために、他の変数r_{t,t+1},r_{t,t+1}^{*},S_{t,t+1}^{e}が所与の値に固定されていると仮定して、S_tがどのように決定されるかを考える。



 外国通貨建債券の予想収益率は


\begin{aligned}
r_{t,t+1}^{*}+\displaystyle{\frac{S_{t,t+1}^{e}-S_t}{S_t}}=r_{t,t+1}^{*}+\displaystyle{\frac{S_{t,t+1}^{e}}{S_t}}-1
\end{aligned}

と書くことができるため、S_t以外が一定ならば、S_tが大きくなるにつれて予想収益率は低下する。

5.3 貨幣市場と外国為替市場:利子率と名目為替レート

 カバー無し利子平価には自国利子率と外国利子率が登場するが、これらは各国の貨幣市場において決定されるものである。まず自国利子率がr_Dに決定し、外国の利子率がr_Fに決定したとする。他方で予想為替レートが所与でその値がS_D^eであると仮定する。
 国内貨幣市場において決定される貨幣価格を表す利子率と外国為替市場において決定される外国貨幣の価格を示す名目為替レートの関係が問題になる。貨幣市場における需給および均衡金利ならびに外国為替市場における需給と名目為替レートとを考える。

5.3.1 マネー・サプライと名目為替レート

 自国の通貨当局はマネー・サプライを変化させたときに名目為替レートはどのような影響が生じるか。物価Pが変動しないような短期では、マネー・サプライM^Sが増加するとそのまま実質総貨幣供給量\displaystyle{\frac{M^S}{P}}が増加する。実質総貨幣供給量\displaystyle{\frac{M^S}{P}}が増加すれば自国の均衡利子率が下落するから、均衡為替レートは上昇する。すなわち他の条件を一定として自国のマネー・サプライが増加すれば、短期的には自国通貨の外国通貨に対する減価をもたらす
 外国におけるマネー・サプライが増加(減少)した場合、外国利子率の低下(上昇)を招く。これは均衡為替レートの下落をもたらし、その結果、自国通貨の増価および外国通貨の減価をもたらす。

5.3.2 生産量と名目為替レート

 生産量の変化は実質総貨幣需要を変化させるため、マネー・サプライが一定であるという条件下で貨幣市場における均衡利子率の変化をもたらす。生産量が増大した安倍、実質総貨幣需要も増大し、マネー・サプライに変化が無いのであれば貨幣市場において均衡利子率の上昇をもたらす。これにより自国通貨建債券利子率が上昇し、金利裁定の圧力により外国為替市場において自国通貨の増価および外国通貨の減価が生じる。

5.3.3 将来の予想レートと現在の均衡レート

 将来の予想レートが変化した場合、現在の均衡為替レートに如何なる影響を与えるか。予想為替レートは外国通貨建債券の予想収益率の決定要因の1つであるから、その変化は外債の予想収益率曲線のシフトをもたらす。たとえばもし市場の予想為替レートが自国通貨を減価させる方向に調整した場合、外債の予想収益率曲線が上方にシフトする。その結果、均衡為替レートも上昇し、自国通貨の減価および外国通貨の増価をもたらす。すなわち将来的に自国通貨が減価するとの見通しを持つと、即座に現在の自国通貨を減価させる

5.4 リスク・プレミアム

5.4.1 利子平価とリスク中立性

 カバー付き利子平価とカバー無し利子平価を比較すると、内外金利r_{t,t+1}^D-r_{t,t+1}^Fは、カバー付き金利平価


\begin{aligned}
r_{t,t+1}^D=r_{t,t+1}^F+\displaystyle{\frac{F_{t,t+1}-S_t}{S_t}}
\end{aligned}

における自国通貨のフォワードディスカウント率\displaystyle{\frac{F_{t,t+1}-S_t}{S_t}}に等しく、またカバー無し利子平価


\begin{aligned}
r_{t,t+1}^D=r_{t,t+1}^F+\displaystyle{\frac{S_{t,t+1}^e-S_t}{S_t}}
\end{aligned}


における自国通貨の予想減価率\displaystyle{\frac{S_{t,t+1}^e-S_t}{S_t}}に等しい。2つの条件が共に成立するならば、F_{t,t+1}=S_{t,t+1}^eが成り立つ。
 カバー付き利子平価の場合、第t期の時点でF_{t,t+1}を含めたすべての変数が確定しており、為替変動リスクは存在しない。したがって自国通貨建債券と外国通貨建債券の収益率が異なるならば、投資家はカバー付き金利裁定によりリスクなしにその差分だけ利益を上げることができる。このため、資本取引に対する制約が無い通貨間では、カバー付き利子平価が成立すべきである。
 これに対してカバー無し利子平価は、リスク中立的であれば、両方の利子平価条件が成立しF_{t,t+1}=S_{t,t+1}^eが成り立つ。しかしリスク回避的であれば、危険性の高い通貨を持つことに対する追加的な利払いを要求するはずである。この追加的な利益率をリスク・プレミアムという。

5.4.2 リスク・プレミアム

 カバー無し利子平価条件とカバー付き利子平価条件の関係を書き換えると、



\begin{aligned}
r_{t,t+1}^D-r_{t,t+1}^F-\displaystyle{\frac{S_{t,t+1}^e-S_t}{S_t}}=\left[r_{t,t+1}^D-r_{t,t+1}^F-\displaystyle{\frac{F_{t,t+1}^e-S_t}{S_t}}\right]-\displaystyle{\frac{S_{t,t+1}^e-F_{t,t+1}}{S_t}}
\end{aligned}


と書ける。この右辺において第1項はカバー付き利子平価条件からの乖離、第2項がリスク・プレミアムを表す。カバー付き利子平価条件の成立により右辺の第1項はゼロと考えられるならば、リスク・プレミアムもゼロならば式の右辺全体がゼロとなりカバー無し利子平価が成立する。
 リスク・プレミアムRPは更に



\begin{aligned}
RP=-\displaystyle{\frac{S_{t,t+1}^e-F_{t,t+1}}{S_t}}=\displaystyle{\frac{F_{t,t+1}-S_{t}}{S_t}}-\displaystyle{\frac{S_{t,t+1}^e-S_{t}}{S_t}}
\end{aligned}


と分解できる、すなわちリスク・プレミアムは自国通貨のフォワード・ディスカウント率と自国通貨の予想減価率との差である。

5.5 時間経過と均衡の変遷

5.5.1 マネー・サプライの恒久的増加と短期的均衡

 十分に時間が経過し、物価も完全に調整されたような状態を考える。前期まで一定だったマネー・サプライを今期になったと同時に増加させてその水準を維持させたとする。この措置はいずれ長期的には自国通貨単位で測った全価格がマネー・サプライの増価率に比例して上昇することが予想される。したがって自国通貨建外国通貨予想価格S_{t,t+k}^eも即座に上昇する。
 時刻における物価調整には時間を要するため、マネー・サプライの増加に伴い、実質総貨幣供給量は当初増大する。このとき均衡利子率は下落し、均衡為替レートは上昇する。このように

 金利下落による自国通貨債券の収益率低下

 ②マネー・サプライの増大が恒久的であるために将来予想為替レートの上昇とこれに伴う外国債の予想収益率の上昇

が関わる。

5.5.2 オーバーシューティング

 前節の前提で、時間が経過するにつれて各変数がどのように推移していくかを考える。

  • マネー・サプライは第t期に水準を引き上げそれ以後同水準を維持するものとする
    \begin{aligned}M_{t-1}^s\lt M_t^s=M_{t+1}^s=\cdots M_{t+j}^s\end{aligned}
  • 物価は硬直的であるために当初固定されているものの徐々に上昇し始める。この変動がt+j期までに終了すると仮定すれば
    \begin{aligned}P_{t-1}=P_t\lt P_{t+1}\lt\cdots\lt P_{t+j}\end{aligned}
  • マネー・サプライの増加率は長期的には比例的な物価上昇率を引き起こすため
    \begin{aligned}\displaystyle{\frac{M_{t}^s}{M_{t-1}^s}}=\displaystyle{\frac{P_{t+j}}{P_{t-1}}}\end{aligned}


以上を踏まえると実質総貨幣供給量の変遷として


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{M_{t-1}^s}{P_{t-1}}}=\displaystyle{\frac{M_{t+j}^s}{P_{t+j}}}\lt\displaystyle{\frac{M_{t+-1}^s}{P_{t+j-1}}}\lt\cdots\lt \displaystyle{\frac{M_{t+1}^s}{P_{t+1}}}\lt\displaystyle{\frac{M_{t}^s}{P_{t}}}
\end{aligned}

である。また貨幣市場における均衡利子率の変化は


\begin{aligned}
r_t\lt r_{t+1}\lt \cdots\lt r_{t+j}=r_{t-1}
\end{aligned}

で表される。
 以上を踏まえて名目為替レートの均衡を考えることができる。 



  • 貨幣市場においてマネー・サプライの増加に比例してインフレーションが生じる。
  • インフレを受けて実質総貨幣供給量を期前の水準に戻す。
  • 実質総貨幣供給量の減少は利子率を元の水準にまで上昇させる。
  • 以上により外国為替市場のうち減価要因だった

     ①実質総貨幣供給量

     ②利子率

    は元に戻ったものの、マネー・サプライに起因する将来予想価格が高水準を維持するために、名目為替レートは当初の水準よりも減価した水準に収束する。


 このように、長期に収束するまでに一時的に行き過ぎな水準にまで減価することで短期的な均衡に至った後、調整が入り長期的な均衡へと収束する。このような為替レートの動きをオーバー・シューティングと呼ぶ。為替市場の苛烈な変動要因は完全に明らかになっている訳ではないものの、このオーバー・シューティングが一因である可能性がある。

*1:たとえば定期預金を考えることとする。

*2:外国通貨1単位当たりの自国通貨価値

*3:[]は単位。

*4:カバーとは先渡取引により為替リスクをヘッジ=カバーしていることを指す語である。

*5:より厳密に言えば、対数関数\log(1+x)\mathrm{MaClaurin}展開

\begin{aligned}\log(1+x)=x-\displaystyle{\frac{x^2}{2}}+\cdots\end{aligned}
において2次以降の項を無視できるような水準を指す。

*6:キャピタル・コントロールという。

*7:これはヘッジをしているということではなく、無裁定になるような将来の直物レートを求めているのみである。

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