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長期投資の理論と実践(11/X)

 投資理論を以下の書籍

をベースに学ぶこととする。

今回のまとめ

  • 1期間モデルの枠組みにおいて最適ポートフォリオを構築し期末に最適な消費を行うという前提で、投資対象としての金融資産価格と最適消費はプライシング・カーネルという概念で関係づけることができる。
  • 資産評価の基本方程式
    \begin{aligned}E\left[\displaystyle{\frac{U^{\prime}(\tilde{W})}{E[U^{\prime}(\tilde{W})](1+r_f)}}\tilde{X}_i\right]=P_{i,0}\end{aligned}
    において将来キャッシュフローをその現在価値に対応させる役割を担い、プライシング・カーネル(確率的割引ファクター)と呼ぶ
  • 次回から多期間モデルを考える。

8. プライシング・カーネルの考え方

 1期間モデルの枠組みにおいて最適ポートフォリオを構築し期末に最適な消費を行うという前提で、投資対象としての金融資産価格と最適消費はプライシング・カーネルという概念で関係づけることができる。

8.1 プライシング・カーネルとは

 投資機会集合としてn種類のリスク資産および1種類の無リスク資産があると仮定する。またリスク資産のリターンを\tilde{r}_iとしリスクフリー・レートをr_0とおく。
 1期間モデルを前提として、時点t=0において投資可能な資金として正の初期富W_0を持つ投資家の最適投資行動を考える。この投資家は期末時点t=1においてW_0とその運用結果を合算した期末財\tilde{W}のすべてを消費する。
 各資産への投資ウェイトを\omega_i,i=0,1,\cdots,nとすれば、このポートフォリオのリターンは、便宜上、\tilde{r}_0=r_0として


\begin{aligned}
\tilde{r}_P=\displaystyle{\sum_{i=0}^{n}\omega_i \tilde{r}_i}
\end{aligned}

である。
 この投資家の効用関数をUとすれば、期末富\tilde{W}=W_0(1*\tilde{r}_P)をすべて消費するから、期待効用最大化問題は



\begin{aligned}
\mathrm{Maximize}\ \ \ &E[U(\tilde{W})]\\
\mathrm{subject\ to}\ \ \ &\tilde{W}=W_0(1+\tilde{r}_P)=W_0\left\{\displaystyle{\sum_{i=0}^{n}\omega_i \tilde{r}_i}\right\}\\
&\displaystyle{\sum_{i=0}^{n}\omega_i}=1
\end{aligned}


と定式化できる。これは典型的な線形制約下の最適問題であるから、\mathrm{Lagrange}の未定乗数法を用いることとして\lambda\in\mathbb{R}として



\begin{aligned}
L=E\left[U\left(W_0\left\{\displaystyle{\sum_{i=0}^{n}\omega_i \tilde{r}_i}\right\}\right)\right]+\lambda\left(1-\displaystyle{\sum_{i=0}^{n}\omega_i}\right)
\end{aligned}

を定義する。これを\omega_iについて偏微分して


\begin{aligned}
&\displaystyle{\frac{\partial L}{\partial \omega_i}}=E\left[U^{\prime}\left(W_0\left\{\displaystyle{\sum_{i=0}^{n}\omega_i \tilde{r}_i}\right\}\right)\cdot W_0(1+\tilde{r}_i)\right]-\lambda=0\\
\Leftrightarrow&E\left[U^{\prime}(\tilde{W})\cdot(1+\tilde{r}_i)\right]=\displaystyle{\frac{\lambda}{W_0}}
\end{aligned}

が導かれる。
 ここで資産iの時点t=0における価格をP_{i,0}とし、その資産が期末にもたらすキャッシュフローを配当および元本を含めて\tilde{X}_i=\tilde{P}_i+\tilde{D}_iとすれば、


\begin{aligned}
1+\tilde{r}_i=\displaystyle{\frac{\tilde{X}_i}{P_{i,0}}}
\end{aligned}

であるから、


\begin{aligned}
&E\left[U^{\prime}(\tilde{W})\displaystyle{\frac{\tilde{X}_i}{P_{i,0}}}\right]=\displaystyle{\frac{\lambda}{W_0}}\\
\Longleftrightarrow&E\left[U^{\prime}(\tilde{W})\tilde{X}_i\right]=\displaystyle{\frac{\lambda P_{i,0}}{W_0}}
\end{aligned}

が得られる。上式は無リスク資産にも成り立つから、無リスク資産1単位への投資は、P_{0,0}=1,X_0=1+r_0=1+r_fとして


\begin{aligned}
&E[U^{\prime}(\tilde{W})(1+r_f)]=\displaystyle{\frac{\lambda}{W_0}}\\
\Longleftrightarrow&\lambda=E[U^{\prime}(\tilde{W})](1+r_f)W_0
\end{aligned}

を導く。これを代入することで\lambdaを消去して


\begin{aligned}
&E[U^{\prime}(\tilde{W})\tilde{X}_i]=E[U^{\prime}(\tilde{W})](1+r_f)P_{i,0}\\
\Longleftrightarrow&E\left[\displaystyle{\frac{U^{\prime}(\tilde{W})}{E[U^{\prime}(\tilde{W})](1+r_f)}}\tilde{X}_i\right]=P_{i,0}
\end{aligned}

で、さらに\tilde{M}=\displaystyle{\frac{U^{\prime}(\tilde{W})}{E[U^{\prime}(\tilde{W})](1+r_f)}}とおいて


\begin{aligned}
E\left[\tilde{M}\tilde{X}_i\right]=P_{i,0}
\end{aligned}

を得る。この式は消費理論において\mathrm{Euler}方程式と呼ばれているが、資産評価の基本方程式とも呼ばれている。この\tilde{M}は常に正値を取り将来キャッシュフローをその現在価値に対応させる役割を担い、プライシング・カーネル(確率的割引ファクター)と呼ばれる。
 プライシング・カーネルの関数形は、

 ①効用関数Uの具体的な形状、

 ②リスク資産のリターンによって定まる期末財\tilde{W}の確率分布

により変わる。
 \tilde{M}はプライシング理論に応じて様々ン関数形を取り、効用関数の情報が必須だという訳ではない。
 プライシング・カーネル\tilde{M}ポートフォリオ・リターンの実現値が大きいような将来状態には資産の収益を小さく評価し、将来消費が小さくなるような将来の状態では資産収益を大きく評価する役割を担う。
 ここまでの議論はある1人の消費者個人に関する期待効用最大化問題に対する解である。この消費者を市場価格を自ら定めるような消費者(代表的経済主体)として選択すれば、プライシング・カーネルは市場における金融資産価格を与えることになる。

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