投資理論を以下の書籍
をベースに学ぶこととする。
今回のまとめ
8. プライシング・カーネルの考え方
1期間モデルの枠組みにおいて最適ポートフォリオを構築し期末に最適な消費を行うという前提で、投資対象としての金融資産価格と最適消費はプライシング・カーネルという概念で関係づけることができる。
8.1 プライシング・カーネルとは
投資機会集合として種類のリスク資産および種類の無リスク資産があると仮定する。またリスク資産のリターンをとしリスクフリー・レートをとおく。
1期間モデルを前提として、時点において投資可能な資金として正の初期富を持つ投資家の最適投資行動を考える。この投資家は期末時点においてとその運用結果を合算した期末財のすべてを消費する。
各資産への投資ウェイトをとすれば、このポートフォリオのリターンは、便宜上、として
である。
この投資家の効用関数をとすれば、期末富をすべて消費するから、期待効用最大化問題は
と定式化できる。これは典型的な線形制約下の最適問題であるから、の未定乗数法を用いることとしてとして
を定義する。これをについて偏微分して
が導かれる。
ここで資産の時点における価格をとし、その資産が期末にもたらすキャッシュフローを配当および元本を含めてとすれば、
であるから、
が得られる。上式は無リスク資産にも成り立つから、無リスク資産単位への投資は、として
を導く。これを代入することでを消去して
で、さらにとおいて
を得る。この式は消費理論において方程式と呼ばれているが、資産評価の基本方程式とも呼ばれている。このは常に正値を取り将来キャッシュフローをその現在価値に対応させる役割を担い、プライシング・カーネル(確率的割引ファクター)と呼ばれる。
プライシング・カーネルの関数形は、
はプライシング理論に応じて様々ン関数形を取り、効用関数の情報が必須だという訳ではない。
プライシング・カーネルはポートフォリオ・リターンの実現値が大きいような将来状態には資産の収益を小さく評価し、将来消費が小さくなるような将来の状態では資産収益を大きく評価する役割を担う。
ここまでの議論はある1人の消費者個人に関する期待効用最大化問題に対する解である。この消費者を市場価格を自ら定めるような消費者(代表的経済主体)として選択すれば、プライシング・カーネルは市場における金融資産価格を与えることになる。