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長期投資の理論と実践(12/X)

 投資理論を以下の書籍

をベースに学ぶこととする。

今回のまとめ

  • E[\tilde{r}_i]-r_f=-(1+r_f)\mathrm{Cov}[\tilde{M},1+\tilde{r}_i]とプライシング・カーネルはリスク・プレミアムを表す。
  • 市場ポートフォリオのリターンと資産のリターンが2変量正規分布に従うことを仮定すれば、\mathrm{CAPM}はプライシング・カーネルから導出することができる。
  • ファクターモデルを導入しても、プライシング・カーネルから
    \begin{aligned}E[\tilde{r}_i]-r_f=\displaystyle{\sum_{j=1}^{k}b_{i,k}\lambda_k}\end{aligned}
    とリスク・プレミアムを導出できる。

8. プライシング・カーネルの考え方

8.2 プライシング・カーネルとリスク・プレミアム

 プライシング・カーネルを用いると、1期間モデルにおける無リスク利子率およびリスク資産のリスク・プレミアムについて統一的に展望できる。資産評価の基本方程式

8.2.1 プライシング・カーネルとリスク・プレミアム


\begin{aligned}
P_{i,0}=E[\tilde{M}\tilde{X}_t],\ \tilde{M}=\displaystyle{\frac{U^{\prime}(\tilde{W})}{E[U^{\prime}(\tilde{W})](1+r_f)}}
\end{aligned}


の両辺をP_{i,0}で割ることで



\begin{aligned}
1=E[\tilde{M}(1+\tilde{r}_i)],\ \tilde{r}_i=\displaystyle{\frac{\tilde{X}_i-P_{i,0}}{P_{i,0}}}
\end{aligned}


と表すことができる。この式から明らかなように、プライシング・カーネルは1期間将来における収益をその現在価値に対応させる役割を担っている。
 一般に2つの確率変数X,Yの共分散について、\mathrm{Cov}[X,Y]=E[XY]-E[X]E[Y]が成り立つことに注意して上式を書き換えると、



\begin{aligned}
&1=E[\tilde{M}(1+\tilde{r}_i)]=E[\tilde{M}]E[(1+\tilde{r}_i)]+\mathrm{Cov}[\tilde{M},1+\tilde{r}_i]\\
\Leftrightarrow&E[1+\tilde{r}_i]=\displaystyle{\frac{1}{E[\tilde{M}]}}-\displaystyle{\frac{\mathrm{Cov}[\tilde{M},1+\tilde{r}_i]}{E[\tilde{M}]}}
\end{aligned}


と表すことができる。資産iグロスベースでの期待リターンは上式の右辺から明らかなように2つの項に分解でき、第1項はプライシング・カーネル、すなわち市場全体の動向にのみ依存して定まり、第2項はプライシング・カーネルとこのリスク資産のリターンの共分散で表されている。
 第1項は、リスクフリーレートr_fについて本式を適用することで



\begin{aligned}
1=E[\tilde{M}(1+r_f)]\Leftrightarrow 1+r_f=\displaystyle{\frac{1}{E[\tilde{M}]}}
\end{aligned}


が得られる。すなわちこの第1項はリスクフリーレートを表す項である。
 第2項は、第1項に関する展開式を代入することで



\begin{aligned}
&E[1+\tilde{r}_i]=1+r_f-\displaystyle{\frac{\mathrm{Cov}[\tilde{M},1+\tilde{r}_i]}{E[\tilde{M}]}}\\
\Leftrightarrow&E[\tilde{r}_i]=r_f-(1+r_f)\mathrm{Cov}[\tilde{M},1+\tilde{r}_i]
\end{aligned}


が得られるが、これは上式右辺第2項全体がリスク・プレミアムを表していることになる。

8.2.2 CAPMとプライシング・カーネル

 プライシング・カーネルは全資産の価格付けを行う変数であるから、市場全体に依存して決定されると考えるのは自然である。他方で\mathrm{CAPM}はプライシング・カーネルが市場全体の動向を表す市場ポートフォリオのリターン\tilde{r}_Mのみに依存して決定されると考え、\tilde{M}=f(\tilde{r}_M)で表現可能だと仮定する理論である。以上から\mathrm{CAPM}



\begin{aligned}
E[\tilde{r}_i]=r_f-(1+r_f)\mathrm{Cov}[f(\tilde{r}_M),1+\tilde{r}_i]
\end{aligned}


と書ける。
 ここで資産iおよび市場ポートフォリオのリターンが2変量正規分布に従い、更に\mathrm{Stein}の補助定理から、



\begin{aligned}
\mathrm{Cov}[f(\tilde{r}_M),1+\tilde{r}_i]=E[f^{\prime}(\tilde{r}_M)]\mathrm{Cov}[\tilde{r}_M,\tilde{r}_i]
\end{aligned}


が成立する。これを代入することで



\begin{aligned}
E[\tilde{r}_i]&=r_f-(1+r_f)\mathrm{Cov}[f(\tilde{r}_M),1+\tilde{r}_i]\\
&=r_f-(1+r_f)E[f^{\prime}(\tilde{r}_M)]\mathrm{Cov}[\tilde{r}_M,\tilde{r}_i]\\
\end{aligned}


である。これは市場ポートフォリオに対しても成り立つから、



\begin{aligned}
&E[\tilde{r}_M]=r_f-(1+r_f)E[f^{\prime}(\tilde{r}_M)]V[\tilde{r}_M]\\
\Leftrightarrow&E[\tilde{r}_M]-r_f=-(1+r_f)E[f^{\prime}(\tilde{r}_M)]V[\tilde{r}_M]
\end{aligned}


を得る。したがって



\begin{aligned}
&\displaystyle{\frac{E[\tilde{r}_i]-r_f}{E[\tilde{r}_M]-r_f}}=\displaystyle{\frac{\mathrm{Cov}[\tilde{r}_M,\tilde{r}_i]}{V[\tilde{r}_M]}}\\
\Leftrightarrow&E[\tilde{r}_i]-r_f=\beta_i(E[\tilde{r}_M]-r_f),\ \beta_i=\displaystyle{\frac{\mathrm{Cov}[\tilde{r}_M,\tilde{r}_i]}{V[\tilde{r}_M]}}
\end{aligned}


を得る。このように、市場ポートフォリオのリターンと資産のリターンが2変量正規分布に従うことを仮定すれば、\mathrm{CAPM}はプライシング・カーネルから導出することができる。

8.3 プライシング・カーネルとファクターモデル

 1期間マルチ・ファクターモデルにおいてリスクプレミアムが得られるのは、どのようなファクターの変動なのかを考える。そのためにファクターモデル



\begin{aligned}
\tilde{r}_i&=\mu_i+\displaystyle{\sum_{j=1}^{k}b_{i,k}\tilde{f}_k}+\tilde{\varepsilon}_i,i=1,2,\cdots,n,j=1,2,\cdots,k,\\
E[\tilde{\varepsilon}_i]&=E[\tilde{f}_k]=0,\\
\mathrm{Cov}[\tilde{\varepsilon}_i,\tilde{f}_k]&=0,\\
\mathrm{Cov}[\tilde{\varepsilon}_i,\tilde{\varepsilon}_j]&=0,i\neq j
\end{aligned}


を導入する。ここで\mu_i=E[\tilde{r}_i]\equiv0と規格化する。

8.3.1 固有リスクが存在しない場合

 まずポートフォリオに固有リスクが存在しない場合、すなわち十分にリスク分散されたポートフォリオを考える。このとき



\begin{aligned}
\tilde{r}_P=\mu_P+\displaystyle{\sum_{j=1}^{k}b_{P,k}\tilde{f}_k},i=1,2,\cdots,n,j=1,2,\cdots,k
\end{aligned}


が与えられる。これを代入することで



\begin{aligned}
&E[\tilde{r}_P]=r_f-(1+r_f)\left(\displaystyle{\sum_{j=1}^{k}b_{P,k}\mathrm{Cov}[\tilde{M},\tilde{f}_k]}\right)\\
\Leftrightarrow&E[\tilde{r}_P]=r_f+\left[\displaystyle{\sum_{j=1}^{k}b_{P,k}\left\{-(1+r_f)\mathrm{Cov}[\tilde{M},\tilde{f}_k]\right\}}\right]
\end{aligned}


が得られる。ここで\lambda_k=-(1+r_f)\mathrm{Cov}[\tilde{M},\tilde{f}_k]とおけば、



\begin{aligned}
E[\tilde{r}_P]-r_f=\displaystyle{\sum_{j=1}^{k}b_{P,k}\lambda_k}
\end{aligned}


とリスク・プレミアムを得ることができる。このリスク・プレミアムは負値を取り得る。これはシステマティックリスクを増やす方向にリスク・プレミアムが変動すると、投資家がリスク回避的であるから、負のリスク・プレミアムを形成するからである。

8.3.2 固有リスクが存在する場合

 より一般に、\tilde{\varepsilon}_i\equiv0とは限らない



\begin{aligned}
\tilde{r}_i&=\mu_i+\displaystyle{\sum_{j=1}^{k}b_{i,k}\tilde{f}_k}+\tilde{\varepsilon}_i,i=1,2,\cdots,n,j=1,2,\cdots,k,\\
E[\tilde{\varepsilon}_i]&=E[\tilde{f}_k]=0,\\
\mathrm{Cov}[\tilde{\varepsilon}_i,\tilde{f}_k]&=0,\\
\mathrm{Cov}[\tilde{\varepsilon}_i,\tilde{\varepsilon}_j]&=0,i\neq j
\end{aligned}


を考える。固有リスクとプライシング・カーネルは無相関だと仮定する。
 このとき\mathrm{Cov}[\tilde{M},\tilde{\varepsilon}_i]=0に注意すれば、



\begin{aligned}
&E[\tilde{r}_i]=r_f-(1+r_f)\mathrm{Cov}[\tilde{M},\tilde{r}_i],\\
\Leftrightarrow&E[\tilde{r}_i]=r_f-(1+r_f)\mathrm{Cov}\left[\tilde{M},\mu_i+\displaystyle{\sum_{j=1}^{k}b_{i,k}\tilde{f}_k}+\tilde{\varepsilon}_i\right],\\
\Leftrightarrow&E[\tilde{r}_i]=r_f-(1+r_f)\mathrm{Cov}\left[\tilde{M},\displaystyle{\sum_{j=1}^{k}b_{i,k}\tilde{f}_k}\right]-(1+r)\mathrm{Cov}\left[\tilde{M},\tilde{\varepsilon}_i\right],\\
\Leftrightarrow&E[\tilde{r}_i]=r_f-(1+r_f)\mathrm{Cov}\left[\tilde{M},\displaystyle{\sum_{j=1}^{k}b_{i,k}\tilde{f}_k}\right]
\end{aligned}


を得る。
 \lambda_k=-(1+r_f)\mathrm{Cov}[\tilde{M},\tilde{f}_k]とおけば、



\begin{aligned}
E[\tilde{r}_i]-r_f=\displaystyle{\sum_{j=1}^{k}b_{i,k}\lambda_k}
\end{aligned}


を得る。

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