以下の書籍
を中心に時系列解析を勉強していきます。
6. 単位根過程
ここまでの議論は過程が(弱)定常であることを前提としてきたが、一般的には解析したい過程がすべて(弱)定常であるという保証はない。そうしたデータを扱うために有用な概念として単位根過程を導入する。
6.2 単位根過程
頻用される拡張-検定および-検定を扱う。
6.2.1 Dickey-Fullar検定
-検定は、真の過程を過程と仮定し、仮説検定
- 帰無仮説:過程が単位根過程である。
- 対立仮説:過程が定常過程である。
を検定する。
多くの単位根過程は、帰無仮説におけるモデル内に定数項があるか否か、対立仮説のモデルが定数項とトレンド項を含むか否かで検定統計量の漸近分布が異なるため、棄却点が相違し得る。良く用いられるのは以下の3つである:
場合の選択に際して重要なのは、帰無仮説と対立仮説の双方で適当なモデルを選定することである。以上を整理すると、選択基準は、
- 場合1:データがトレンドを持たず、過程の期待値がであるとき
- 場合2:データがトレンドを持たず、過程の期待値がでないとき
- 場合3:データがトレンドを持つとき
どの場合が適当か定かではない場合には場合3を採用する。
検定は帰無仮説および対立仮説の双方を含むモデル、すなわち対立仮説と同一のモデルを推定し、そのモデルにおいて帰無仮説を対立仮説に対して検定することと同一である。検定を用いればよいように思われるが、過程の非定常性が問題になる。すなわち単位根過程では非定常性から通常の漸近理論が成り立たないのである。そこで単位根過程に対する正しい漸近理論から検定を行うのが検定なのである。
ここでは場合1を考える。そのときには、回帰モデルとして
を考える。このときの最小二乗推定量は
で与えられる。
に関する検定を行うには、の漸近分布が分からなければならない。もし過程が定常ならば、大数の法則および中心極限定理から、
が得られる。更にの定理から、
が成立する。
またの検定には統計量を用いることが多い。ここで統計量は
で定義される。この統計量は漸近的に標準正規分布に従うことが知られている。
他方でもしであるならば、自己共分散がいつまで経っても減衰しないから、大数の法則と中心極限定理が成立しない。このとき、の漸近分布は運動の汎関数になることが知られている。
ランダムウォークをに縮小し、そこで定義された確率過程として見たものに対して連続時間極限を考えると、それは運動に収束するのである。そのためにに関係してくる。この結果を汎関数中心極限定理といい。更に連続写像定理から、運動に収束する確率過程を連続汎関数で写像したものは運動を同じ連続汎関数で写像したものに収束する。これにより、
が得られるから、
が成立する。
検定の手段