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を中心に時系列解析を勉強していきます。
7. 見せかけの回帰と共和分
今回は、単位根が重要な役割を果たす①見せかけの回帰と②共和分を議論する。
見せかけの回帰は無関係の単位根過程の間にまるで有意な関係が存在するかのように見える現象であり単位根過程を用いた分析において注意しなければならないもので、共和分は単位根過程を用いて変数間の均衡関係を記述する手段である。
7.1 見せかけの回帰
2つの独立なランダムウォーク
を考える。このとき回帰モデル
は、これらが独立なランダムウォークであることから、真のである。したがっての推定値に対してに関する仮説検定を行えば、が採択される確率が高いはずである。しかし
となることが知られている。ここでを独立な運動として
である。これはがの速度で発散し、がある確率変数に収束することを表している。これはが一致推定量でないことを意味し、これらに関する統計量は発散することを意味する。すなわちが大きければ、帰無仮説がという仮説検定においてはいずれも帰無仮説を棄却してしまうのである。また回帰の決定係数が漸近的にに収束することも知られているのである。これらはすなわち、ランダムウォーク(単位根過程)同士を回帰すると、一見説明変数が一定の説明力があるように見えてしまうのである。このような現象を見せかけの回帰という。
見せかけの回帰 単位根過程を定数およびと関係を持たない単位根過程に回帰すると、に有意な関係があり、回帰の説明力が高いように見える現象は見せかけの回帰と言われる。
このように見せかけの回帰があり得るために、変数が単位根過程にあるかどうかに注意しなければならないのである。
見せかけの回帰を避けるためには、
- 説明変数と目的変数のラグ変数を回帰に含める
- 単位根過程に従う変数の差分を取り定常過程に変換してから解析を行う
という方法がある。
の関係性を判断するには、誤差項を調べればよい。なぜならば、それが定常過程ならば両者には共和分(後述)の関係、またそれが単位根過程ならば両者は見せかけの回帰になることが知られている。この関係を基に(もしくはその推定値)に単位根検定を行えばよい。この検定を-共和分検定という。
7.2 共和分
共和分 単位根過程について、が定常過程になるようなが存在するならば、の間には共和分の関係があるという。
またベクトル過程について、が定常過程となるようなが存在するとき、は共和分の関係があるといい、このときのを共和分ベクトルという。
なおここで共和分ベクトルは一意に限っておらず、一般に一意とは限らない。
一般の系では共和分が1つとは限らず、個の変数を考えたときには、最大で個共和分関係が存在し得る。ある系における共和分関係の数を共和分ランクという。
共和分関係を同様に解釈すべきか。まず2つの変数に共和分関係がある場合、これらはそれぞれ単位根過程であり、いずれも平均回帰性を有さず、長期的な予測の平均二乗誤差は限りなく大きくなっていく。そのためそれぞれの長期的な挙動を予測することは困難である。他方で両者に共和分関係があるということは、が定常過程になるようなが存在することになる。このときは平均回帰的になり、その長期的な挙動は一定程度の精度で予測できることになる。したがって共和分関係はの間にという均衡関係が成立することを表していると解釈できる。