以下の書籍
を中心に時系列解析を勉強していきます。
7. 見せかけの回帰と共和分
今回は、単位根が重要な役割を果たす①見せかけの回帰と②共和分を議論する。
見せかけの回帰は無関係の単位根過程の間にまるで有意な関係が存在するかのように見える現象であり単位根過程を用いた分析において注意しなければならないもので、共和分は単位根過程を用いて変数間の均衡関係を記述する手段である。
7.3 Granger表現定理
表現定理は共和分を含んだモデルが一般にベクトル誤差修正モデル()で表現できることを示す。
まずは具体例を考えながらを定義する。共和分システム
を考える。これらはいずれも定常過程だが、が単位根過程であるから、共和分である。
これらをモデルとして書き下すと、
と書けることから、
である。ここで
である。この表現の特性方程式は
であるから、この表現が単位根を持つことが分かる。
原系列が単位根過程である場合、差分系列にモデルを当てはめることが多いため、実際に差分系列にモデルを当てはめることにする。
であるから、差分系列の表現が
となることが分かる。この差分系列の特性方程式は
であるから、これも単位根を持つ。
これは差分系列の表現が反転不可能であることを意味し、したがって差分系列はモデルで表現できず、仮にモデルを当てはめた場合、モデルが誤って特定化されることを意味し、これが共和分を持たない単位根過程との大きな相違点である。
共和分システムの差分系列に対する正しい表現は、
であり、これをベクトルで表示すれば、
である。ここで
である。さらに
と書き換えることができるから、このモデルは更に
と表現可能である。は共和分ベクトルに等しいから、は共和分関係を表し、均衡から乖離した部分と解釈することもできる。他方では均衡からの乖離が大きくなったときに均衡へ戻っていく力が働くことを表現しており、は均衡からの乖離に対する調整の速度と方向を表すパラメータと解釈できる。このためは誤差修正項と呼ばれ、差分系列に関する表現
はベクトル誤差修正モデル()と呼ばれる。
以上の結果は一般に過程で表現できる共和分システムにおいても成立することが知られている。
表現定理 表現を持つ共和分システムについて、
- 表現は単位根を持つ。
- の表現は反転不可能である。
- の表現は存在しない。
- はとして
- には定常な変数しか含まれておらず、またのすべての解の絶対値はよりも大きい。
が成り立つ。