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6. 単位根過程
ここまでの議論は過程が(弱)定常であることを前提としてきたが、一般的には解析したい過程がすべて(弱)定常であるという保証はない。そうしたデータを扱うために有用な概念として単位根過程を導入する。
6.1 単位根過程とは?
非定常過程の典型として単位根過程は以下のとおり定義される。
単位根過程 原系列が非定常過程でありその差分系列が(弱)定常過程であるような過程を単位根過程という。
単位根過程の名前は、もし単位根過程を誤差項が定常であるような過程を用いて表現した場合に特性方程式
が解(根)としてを持つことに起因する。他方で他にも様々な呼称があり、たとえば差分定常過程とも呼ばれ、さらに1次和分過程()と表記する。しかももし単位根過程の差分系列が定常かつ反転可能な過程であるとき、単位根過程は過程とも呼ぶ。これらをそれぞれまとめて以下のように言うことができる。
和分過程 階差分を取った系列は非定常である一方で解差分を取った系列が定常であるような過程を次和分過程もしくは過程と呼ばれる。
例:ランダムウォーク
過程について
が成り立つとき、はランダムウォークと呼ばれる。このときの定数項はドリフト率と呼ばれる。
定義から明らかにランダムウォークは攪乱項が期待値の系列で係数がであるような過程と呼ぶこともできる。
6.1.1 単位根過程のトレンド
単位根過程は線形トレンドを記述できるという特徴がある。ランダムウォークを例に考えると、簡単のためにとして
が成り立つ。このときを確率的トレンドと呼ぶ。このようにドリフト率のランダムウォークは線形トレンドを記述できる。
線形トレンドを記述できるモデルとして、トレンド定常過程も存在する。
トレンド定常過程 を定常過程として
と表される過程をトレンド定常過程と呼ぶ。
トレンド定常過程は、定常過程部分の分散が有限であることもあり、全体の分散もある程度一定の大きさを持つ、すなわち過程とトレンドの差はほぼ一定の範囲内に収まる。これに対して単位根過程は確率的トレンドを有するために不確実性を線形的に増大させていくという特徴がある。
単位根過程は
が成り立つため、一般的にが成立するという意味で単位根過程は線形トレンドを記述している。