国際金融を
を基に学んでいく。
1. 基本的な視点の設定
1.1 経済学の基本的な考え方
1.1.1 予算制約と最適化
経済学の究極的な議論内容は「有限資源をいかに配分することで達成可能なうち最良の結果をもたらせるか」を考えるものである。ある選択をすることが同時に他の選択肢から得られる利潤を諦めることにつながるトレード・オフが発生するのは、予算に限りがあることから生じる。そうした予算や資源が有限であることによる制約を予算制約(budget constraint)または資源制約(resource constraint)と呼ぶ。達成可能な最大元の結果を生むような配分方法を追求することを最適化と呼ぶ。
1.1.2 市場と均衡
経済学の最大の特徴は市場が有する効率的な資源配分機能を最大限活用しようとすることにある。需要側である買い手も供給側である売り手も利益を追求する中で両者をバランスさせるのが価格である。需給が一致しそれ以上の調整が不必要な状況を均衡といい、その時の価格を均衡価格(equilibrium price)と呼ぶ。
経済学では効率的な資源配分を達成する限り市場メカニズムを活用し、それを歪めるような人為的コントロールを排除する。ただし2点留意点がある。
市場の失敗 | あらゆる状況で市場が最良の結果をもたらすとは限らない。 |
---|---|
自由化は必須とは限らない | すべての国で国際金融取引を取引化することは必ずしも最良の選択肢ではない。 |
1.1.3 金融市場と資本の価格
需給および近郊の概念は、財を売買する生産物市場のみならず、資本を取引する金融市場にも有効である。
資本の価格に相当するのは利子(利息)である。需給のバランスが取れたときの金利を均衡利子率という。
1.2 金融取引の意味と効果
1.2.1 時間と最適化
予算制約化の最適化において時間の概念は非常に重要である。消費と貯蓄の問題では時間の経過に応じて都度都度最適な推移を考えなければならない。通期で最大の結果が達成されるように予算配分することを異時点間の最適化という。国際金融を含めた金融は異時点間の最適化において効果を発揮する。
1.2.2 消費の平準化と恒常所得
家計における消費行動を観察すると、①消費が激しく変動することを回避し、その水準を安定的に保つという消費の平準化を図る、②給料日の収入が恒常的に続くわけではないと認識し、受け取った時点に次の給料日までの消費を決定しなければならない消費の恒常所得理論が導かれる。
1.2.3 貸借
消費が微小に増えたことで追加的に得られる効用を消費の限界効用と呼ぶ。消費の限界効用は時点に応じて異なると考えられ、もし金融を通じて異時点間で資金の移転が自由にできるならば、総効用は増大するはずである。
1.2.4 利子率と主観的割引率
金利が正であるという前提下では、現在の所得の一部を貸し付けることで将来その貸付額を超える返済を受けることができる。現在の所得と現在の消費の差を貯蓄と呼び、これが他社への貸付原資になる。
家計が現在と将来の効用から通期での総効用を算出する際に現在の効用に対して将来の効用を割引く比率を主観的割引率と呼ぶ。これも金利と同様に異時点間の最適化に影響を及ぼす。
1.2.5 金融取引の意味
異時点における貸借取引が金融による取引行為の本質である。すなわち予算に余裕のある主体から不足する主体へと資金を融通することで全体での効用を増大させる。期間ごとに課せられた予算制約を期間をまたいだ予算制約へと置き換えることでより柔軟な経済活動を可能にしつつ、現在と将来という意時点間で所得の一部を貸借し、結果的に自らの生涯効用がより高くなるように各期の消費を調整する。
1.3 国際的視点
1.3.1 国際金融
潜在的な取引相手を増やすことにつながり得るから、金融取引の相手を外国にも求めることは有用である。国境を越えて資本を貸借する行為を国際金融と呼ぶ。
1.3.2 外国通貨建資産
異なる国の経済主体間で資本が一時的に移転することを資本の国際移動という。
1.3.3 国際貿易と最適化
生涯の総効用を最大化するには、配分対象である所得自体を可能な限り増大させることも必要である。開放経済であれば他国と生産物を売買する国際貿易が選択肢としてあり得る。自らが比較的得意とする財の生産に集中的に資源を配分することを特化と呼び、特価による生産の効率的分業によって自給自足の場合に比べて財・サービス単位で測った実質的な所得の増大をもたらす。
2. マクロ的視点の導入:国民経済計算と国際収支会計
2.1 国民経済計算:国内経済活動の集計
一定期間における一国の経済活動を集約し、その生産・所得・支出の総計と内訳をまとめたものを国民経済計算という。マクロ経済の規模を示す最も重要な変数が生産量である。その具体的な指標として国内総生産(GDP)が用いられる。
GDPは(1)何がどれだけ生産されたか、(2)どれだけの所得がどのように分配されたか、(3)どのような用途にどれだけの支出がされたか、という3つの側面から算出でき、これらは同じものを異なる方式で計算しているため一致する。これを三面等価の原則という。
2.2 GDPとGNP
生産量を測る別の重要指標が国民総生産(GNP)である。
一般的なマクロ経済学ではの利用が標準であるものの、国際金融ではが重要になる。それはとの差である純要素受取が日本人の対外投資収益や外国人の対日投資収益を表し、それが金融の国際化を具現するものであるから意味を持つためである。
2.3 名目GDPと実質GDP
GDPの変化には提供される財・サービスの数量変化または財・サービスの価格変化の2つの要因が考えられる。経済厚生の観点では生産され消費される財・サービスの質量が向上・増加するのが望ましく、そのために前者を検討すべく、物価変化の影響を除去した実質GDPベースで議論を行う。
物価の上昇をインフレーションといい、下落をデフレーションという。物価の影響を控除せずに計算したGDPを名目GDPといい、物価の影響を控除したGDPを実質GDPという。
名目GDPと実質GDPの相違は物価の変化から生じるため、両者の比率は国内生産物の価格推移を対基準年度で測るのに重要な指標と言える。これをGDPデフレーターという。
この式を変形すると、と書き換えられるから、
が得られる。