「大人の教養・知識・気付き」を伸ばすブログ

一流の大人(ビジネスマン、政治家、リーダー…)として知っておきたい、教養・社会動向を意外なところから取り上げ学ぶことで“気付く力”を伸ばすブログです。データ分析・語学に力点を置いています。 →現在、コンサルタントの雛になるべく、少しずつ勉強中です(※2024年1月21日改訂)。

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安倍晋三の死は何をもたらすのか? 蘇る血盟団事件

1. はじめに ~なぜあえて“陰謀論的”議論を行うのか~

 安倍元総理大臣の事件以来、再度、世の中について考える世界に少しだけ戻りたいと思った。

power-of-awareness.com


そして自分なりの方法で、もう少し世の中に関わって、役に立ってみたいとも思った。そこでこの問題について考えたことをもう少し語りたい。そのために、少し補足(という名の言い訳)をしておきたい。


 ニュースを見ていると、極端な意見というのは存在する。たとえば

コロナウイルスは人口減少を目的としたものだ」


といったものである。

www.arabnews.jp

これに対して、「陰謀論」だという手合いは非常に多い。
 しかし冷静に考えると、双方に問題があることに気付く。まずこうした「陰謀論」自体を主張する主体は、

  • 主張の突飛さ

     主張(論理)が粗い、もしくは検証不可能ないし困難な論拠が混在しているために、納得感が無い。レトリックを利かせた論理展開をしがちで心理面でも違和感を感じさせる場合がある
  • ポジション・トーク

     特定の主張に帰結させるために(強引に)主張している。特に、特定の主体を批判・非難することで自身の存在を確立させる方法で論理展開している場合は、とりあえずその主体への反対意見を述べればよいだけなので、独自主張や意義のある結論を持たない場合がある

といった疑問を有しており、世間一般からの支持を得ることが無い。特に後者の場合は質が悪く、少し変わっていて孤立気味ないし少数派を経験しがちな人々に“居場所”を与えることで一定層の支持を得続けることができる点で、目立たずに勢力を持つことができる。

 他方で「陰謀論」だと主張する主体は、

  • 一定の「枠組み」内でしか議論しない・できない

     これは専門家と呼ばれる手合いに成り立ち、プロとしての流儀とも限界とも言えるが、理論の中でしか議論できない、またはしない。他方でその理論に拘泥してなぜそこまで断言できるのかと疑問視したくなる議論を行う手合いもいる*1

といった問題点が散見される。
 いずれにも共通するのは、「議論が閉じている」ことにある。すなわち自説の正しさを力説するのみで、相手の意見と併せてジンテーゼへと止揚するような生産的な方向にいかないのである。筆者としては、その止揚により自身の思考を磨くために敢えて「陰謀論」に挑むのは有益だと考えている。それは、自らの修養になるという利己的な観点を超えて、そうしたアマチュアリズムが事態を変える力になるのかもしれないと信じているからでもある。

[T]he problem for the intellectual is to try to deal with the impingements of modern professionalization…, not by pretending that they are not there, or denying their influence, but by representing a different set of values and prerogatives. These I shall collect under the name of amateurism, literally, an activity that is fueled by care and affection rather than by profit and selfish, narrow specialization.*2


www.bbc.co.uk

2. 時事問題を語るということ

 より具体的に、時事問題(特に政治事件など)について議論することを考えよう。典型的な「陰謀論」はインテリジェンス機関の介在である。CIAやFSB、SISといったインテリジェンス機関が非公然活動(covert action)を行なう場合、その活動の痕跡は消される。「もっともらしい否認(Plausible deniability)」と呼ばれるそうした行動は、生じた事象から(真)犯人を追及することができないように証拠を削除することで、自身やその活動を指示した人物および所属国家をその活動をしたことによる責任から逃れさせるために行う。したがってインテリジェンス機関による非公然活動を事象から辿ることは普通できない。
 言うまでもなく、それは非公然活動が存在しないという訳ではない*3。インテリジェンス機関自体が過去の非公然活動を公表する場合があることを踏まえてもこれは自明である。であれば世の中の事件・事故は、(真)犯人を捜すことが意味を持つものが存在し得るのである。
 他方で、もっともらしい否認(Plausible deniability)」を実現させるために、カバー・ストーリーが用意されることが多い。すなわち本当の事件プロットを隠すような偽の事件経緯が用意され、巧妙に事件がミスリードされることがある。それにマスコミ(や今ではSNSなどの個人が発信メディアも含まれ得る)は知ってか知らずか、意図してか意図せずにかはさておき、そこに加担してしまう。その結果、真犯人は分からずじまいになる*4。これはすなわち門外漢には“真実”を知ることができないことを意味する。
 ではカバー・ストーリーを猛進するしかないのだろうか。その“真実”を考察することは無駄なのだろうか。自分はそう思わない。何でも「CIAがやった」などというのは白痴で馬鹿馬鹿しいとしか言い様が無いものの、仮にそういった別の主体の存在を考えることは、普段は想定できないないし見逃してしまう筋道への“気付き”につながり得るという意味で大変に刺激的である。
 以上のように考えるので、敢えて「陰謀論的」なものを扱うが、それを妄信してはいないし、逆に世の「専門家」*5に納得していないということでしかない。

3. 「安倍晋三」を偶像化するのは疑問

 安倍元総理大臣襲撃が「民主主義への攻撃」という言説で批判されることは少なくない。それは否定しようのない事実であり、許されるべきではない。


mainichi.jp


他方で、では安倍元総理大臣がそんな民主主義の擁護者なのかといえば、全くもって許容し難いのは誰も否定できないだろう。森友学園問題・加計学園問題は縁故主義の典型であって、それで民主主義を歪めてきたと言えよう。そして自らに苦言を呈する部下の排斥など、多様性の排除という意味で、民主主義を損なうこととは言えないだろうか。


www.asahi.com


 また気になるのは、元総理大臣がここまで政府や内閣の方向性に影響力を残しているのは行き過ぎではないだろうか。


news.yahoo.co.jp

4. 統一教会自民党の関係が切れる意味

 と通り一遍の議論はしてみたものの、それ以上に気になるのが、槍玉に挙げられている「統一教会」と「国際勝共連合」である。


 統一教会岸信介(と自民党)の関係は1960年台にまで遡るものであり、当初は反共組織として日本側からも多数の援助があった。


統一教会本部にて文鮮明と握手する岸信介元首相

     

出典:人類史の大真実


それ以来、両者の関係は自民党に深く根付いている。



統一教会本部にて文鮮明と握手する岸信介元首相

出典:週刊現代*6

news.yahoo.co.jp


 統一教会だけでなく、日本の政治は汚れすぎているように見える。

 冷戦期に活動した自民、社会、公明、民社、共産五党のうち、公明党を除く四党が米国とソ連から、政治資金をひそかに導入していたことが、冷戦後解禁された米ソの公文書で判明した*7

 『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道(引用者註:CIAが1950-60年代に日本の右派を支援するのに数百万ドルを投入していたという主旨の記事を同紙は1994年10月9日付で報道した。)直後、自民党がこれ以上の情報公開をやめるよう米側に要請する奇妙な動きがあった。報道が日本で伝えられた月曜日の十月十日、村山内閣の副総理兼外相だった河野洋平自民党総裁はモンデール駐日大使と極秘に会談し、「資金供与が政府や自民党にとって重大な問題になる」との認識を示し、資金援助問題の拡大に懸念を表明した(…中略…)。自民党は当初(引用者註:左記の報道に対し)、森幹事長が「そんな事実はない」「迷惑至極」などと簡単にコメントしていたが、実際は危機感を強め、裏工作に走っていたのだろう*8

Of the politicians recruited by the KGB outside the JSP(引用者註:日本社会党(Japan Socialist Party) ), the most important was Hirohide Ishida (codenamed HOOVER), a prominent parliamentary deputy of the ruling Liberal Democratic Party (LDP), formerly Minister of Labour. [...(中略)...] According to Stanislav Levchenko, then working on the FCD Japanese desk, [...(中略)...] Ishida was also co-opted into the network of global flattery which the KGB used to service Brezhnev's voracious appetite for world-wide recognition. [...(中略)...] During the remainder of the 1970s, Ishida continued to be used as an agent of influence within both the LDP and the Parliamentary Japanese-Soviet Friendship Association.*9


確かに外国も同様であろうし、また過去の政党政治における歴史を振り返っても、珍しいことではない。とはいえ、もはやこういう穢れに対する忌避が限界にきているようにも見える。



血盟団事件の初公判光景

出典:週刊文春


思えば、血盟団事件といい二・二六事件五・一五事件の一因は議会制民主主義の歪だった。そうした事件のアナロジーとして、今回の事件は解釈できるのではなかろうか。すなわちこれまでは政権の腐敗で済んできたのが、いよいよ実力を以て議会制民主主義への攻撃が加わるという局面が現われつつあるのである。



米議会議事堂襲撃事件(2021年)

出典:nippon.com

おわりに ~“浄化”は成功するのか~

 政治に直接関与しない我々でも、職場や学校での経験から、政治は綺麗事ではないということは誰でも納得できる。ましてや国政ともなれば、汚いことをするのは仕方無いという議論もあり得る。が、それは内政干渉であったりと問題視すべきであり、受け入れるべきとは言い難い。今回の事態が政界の“禊”につながっていくことになるだろうか。

*1:自分では判断できないのであれば、返答を留保したり、分からないと断言するのが真の専門家だと自分は思っている。

*2:Edward Said, “Professionals and Amateurs,” in Representations of the Intellectual (New York: Vintage Books, 1996) PP.73-83参照

*3:逆に存在するとも断言できないのではあるが。

*4:厳密に言えばその人が本当に真犯人かを同定する手段がない。

*5:上述の意味で専門家でない、すなわち「自分の枠組みに拘泥して“真実”や新たな発見を目指さない」という批判的な意味で専門家を捉えるのに「専門家」と呼ぶ。

*6:「スクープ! 公安の極秘資料入手現職国会議員128人の『勝共連合統一教会』関係度リスト」(週刊現代, 99年2月27日号)。画像はスクープ! 公安の極秘資料入手現職国会議員128人の「勝共連合・統一教会」関係度リスト(週刊現代, 99年2月27日号) passenger

*7:名越健郎(2019)「戦後資金の戦後政党史 米ロ公文書に刻まれた「依存」の系譜」(新潮選書) P.4参照

*8:名越健郎(2019)「戦後資金の戦後政党史 米ロ公文書に刻まれた「依存」の系譜」(新潮選書) P.51参照

*9:Christopher Andrew and Vasili Mitrokhin, "The Mitrokhin archive II : the KGB in the world"(Org. by Allen Lane in 2005; reissued by Penguin Books in 2018) PP.300-302

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