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を中心に時系列解析を勉強していきます。
前回
4. 予測
4.4 時系列解析における区間予測
将来時点の値を1つの値として予測する方法を点予測と呼ぶのに対し、特定の確率を与えてその確率の範囲内で実現し得る値の区間として予測するものを区間予測という。現時点までの情報を基に将来時点の値、すなわち期先の値を%の確率で含むような区間を推定することを期先%区間予想という。
区間予想は
- 確率的に評価できる
- 不確実性が区間の長さで表されるために不確実の程度が理解しやすい
- 平均的な値以外のシナリオ的な予測に用いやすい
という点で優れている*1。
4.4.1 AR過程の区間予測
期先区間予測を構築するためには、を所与としたきのの条件付き分布を得る必要がある。ここでは定常過程
の条件付き分布と区間予測を考えよう。
このとき
であるから、を所与とすれば、のみが確率的な変数であり、これが正規分布に従うことを仮定していたから、も正規分布に従う。すなわち、
である。したがって標準正規分布の両側%点()をとおけば
であるから、
が得られ、したがって1期先%区間予測は
で与えられる。
ただしを計算するのは困難である。対処するには、
- を用いて正確に推測する
- シミュレーションにより区間予測する
という方法が考えられる。を扱うには紙幅が少なすぎるため、これは省略し後者の概略を示す。
- (1)逐次予測により点予測値を算出する。
- (2)とする。
- (3)をから独立に発生させる。
- (4)を初期値として、(3)で発生させたを用いてを計算し保存する。
- (5)ならばとして(3)に戻り、そうでなければ(6)に移る。
- (6)の標本分散を用いてを推定する。
- (7)点予測値およびをに代入して期先%区間予測を構成する。
4.4.2 MA過程の予測
反転可能な過程の予測を考える。
有限個のの値を用いた予測を考えるために、まずは無限個のの観測値があると仮定した場合を考える。反転可能な過程は
と過程として書き直すことができる。したがってが既知ならば、
により、過去のがすべて計算できる。
ここから、
が導かれる。家庭の場合はは将来ないし過去のしか含まないため、それらの条件付き期待値は
から完全に算出することができる。
以下では過程
を例に最適予測を行うことにする。
まず1期先予測は、
であることに注意すれば、
を用いることで、
が得られる。このとき
である。
区間予測は過程と同様の議論をすればよい。
過程の最適予測が持つ性質 過程の最適予測は以下の性質を持つ:
- (1)期までの最適予測はすべての観測値に依存する。
- (2)期先以上の予測は過程の期待値に等しい。
- (3)期までの予測のは予測期間が増大するにつれて単調増加していき、期先以上のは過程の分散に等しい。
次に有限個の観測値しかない場合、すなわちが既知な場合を考える。過程において期先では無限個のの観測値が分かっている場合と同様である。そのため、過程の期待値g最適予測である。それに対して期以内先の場合ではを計算する必要がある。
が成り立つことから、
と逐次的にの近似値を求めればよい。
4.4.3 ARMA過程の予測
過程の予測は過程と過程の予測を組み合わせればよい。すなわちを過去のおよびで表現し、
を用いて計算すればよい。ただし有限個のの観測値しか利用できない場合、家庭の予測で議論したように、の初期値をとしての近似値を逐次的に求めてそれらを用いればよい。
参考文献
*1:無論、ピンポイントで値が得られないことでデメリットにもなり得る。