証券投資(現代ポートフォリオ理論)をコンパクトに学ぶべく、比較的最近に発刊され薄めの本である
を参考に学んでいく。
- 前回:
https://power-of-awareness.com/entry/2022/05/11/050000power-of-awareness.com
8. オプション評価理論
企業が資金調達のために発行するオプションや展開社債などの金融派生商品に対する評価方法を概説する。
8.5 転換社債
転換社債(convertible bond)は、予め決められた期間内に予め定められた価格で発行企業の株式に転換する権利が付与された社債である。そのため株価が上昇した場合には株式に転換して売却することで利益が得られるのに加え、株価が下落した際には社債のまま保有してクーポンと償還額面価額を受け取ることができる社債である。
この転換社債は普通社債にオプションを組み込んだ仕組債(エキゾティック・オプション)と見なすことができる。
転換社債が株式へ転換される際、株式に希薄化が起こる。それを考慮するために本節ではリスク中立確率測度の下で、企業価値が幾何運動
に従うと仮定する。ここではそれぞれ企業価値に対する連続的な配当率およびボラティリティである。
時刻での企業価値がの転換社債の層価値をとする。その企業価値は転換社債と株式との和からなるとする。すなわち
である。転換社債は満期を持ち、における額面総額をとする。時刻で投資家が転換したときの価値はである。ここでは転換の際に受け取る企業価値に対する転換率である(これが希薄化をもたらす因子である。)。企業の償還価格をとするとき、満期前の時刻で企業が償還したとき、企業は投資家にを支払う。
そのとき時刻での償還条項付転換社債の価格は
で与えられる。ここで
である。また転換社債の最適償還時刻および最適転換時刻
はそれぞれ転換社債の価値と償還もしくは転換したときの価値が等しくなる最小到達時刻で与えられる。