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証券投資論(18/21)

 証券投資(現代ポートフォリオ理論)をコンパクトに学ぶべく、比較的最近に発刊され薄めの本である

を参考に学んでいく。

  • 前回:

https://power-of-awareness.com/entry/2022/04/27/050000power-of-awareness.com

8. オプション評価理論

 企業が資金調達のために発行するオプションや展開社債などの金融派生商品に対する評価方法を概説する。

8.1 オプションとリスクヘッジ

 オプションはある定められた時点(または期間内)に予め定めた価格である金融資産(オプションに対して原資産という。)を売買する権利(義務を伴わない。)の付いた証券である。定められた時点(または期間の終わり)を満期、定められた価格を行使価格という。原資産を買う権利をコール・オプション、売る権利をプット・オプションという。満期時点でのみ売買権利があるものをヨーロピアン(・オプション)、満期までであればいつでも行使可能なのがアメリカン(・オプション)、満期までの事前に定めた(複数の)特定時点で売買権利があるバミューダン(・オプション)、売り手と買い手の双方に権利があるゲーム(・オプション)が存在する。
 満期T、行使価格Kで、時刻t\leq Tの株価がS_tであるような株式のヨーロピアン・コール・オプションを考える。このオプションの買い手は満期t=TにおいてS_T\gt Kならばオプションを行使して行使価格Kで資産を購入し、すぐに市場で売却すればS_T-K\gt0の利益を得る。これに対してS_T\lt Kならば権利を放棄して利益は0である。したがって満期におけるヨーロピアン・コール・オプションの価値は


\begin{aligned}
(S_T-K)^{+}:=\max\{S_T-K,0\}
\end{aligned}

で与えられる。他方で満期におけるヨーロピアン・プット・オプションの価値は


\begin{aligned}
(K-S_T)^{+}:=\max\{K-S_T,0\}
\end{aligned}

で与えられる。オプション評価理論はこのように満期での利得が決定されたときに満期以前の任意時点におけるオプション価格を評価する理論である。評価方法の基本的な考え方は、オプションの原資産の価格ダイナミクスが与えられたとき、満期または行使時点での利得の割引期待値をリスク中立確率を用いて計算することである。

8.1.1 リスクヘッジ

 ヨーロピアン・コール・オプションの買い手に対して売り手は満期Tにおいて権利行使された場合、(S_T-K)^{+}を支払える状態でなければならない。オプションの契約時点t=0では満期における株価は未確定で不確実である。このような金融資産の価格変動に伴う市場リスクを回避若しくは軽減させるために複数の金融資産を組み合わせて同時に保有する方法が取られる。
 リスク回避のためにポートフォリオを組む取引をヘッジ取引という。またヘッジ取引により原資産価格の変動に対応するポートフォリオの価値の減少を避ける行動をリスクヘッジという。

8.1.2 プット・コール・パリティ

 オプション評価理論における基本的な仮定として裁定機会は存在しないとする。この仮定から、満期T、権利行使価格Kで時刻tでの株価がS_tの株式のヨーロピアン・コール・オプションとヨーロピアン・プット・オプションの価格には一定の関係が成り立つ。他方で一定の利率で資金の借り入れ、預け入れが可能だと仮定する。
 時刻t\in[0,T]での株価がS_tである場合のヨーロピアン・コール・オプションとヨーロピアン・プット・オプション価値をそれぞれV_{\mathrm{ec}}(S_t,t),V_{\mathrm{ep}}(S_t,t)とする。時刻t=tにおいて以下の2つのポートフォリオを構築する:

   (1) 1単位の株式および1単位のヨーロピアン・プット・オプションを購入するS_t+V_{\mathrm{ep}}(S_t,t)
   (2) Ke^{-r(T-t)}単位の無リスク資産と1単位のヨーロピアン・コール・オプションを購入するKe^{-r(T-t)}+V_{\mathrm{ec}}(S_t,t)

 この2つのポートフォリオを満期t=Tまで保有し満期にて清算したとする。t=Tでは2つのポートフォリオキャッシュ・フローS_T+(K-S_T)^{+}=\max\{S_T,K\}K+(S_T-K)^{+}=\max\{S_T,K\}となり一致する。無裁定性の仮定から、この2つのポートフォリオは任意の時点t\in[0,T]において等しいはずである。したがって任意のt\lt Tにおいて


\begin{aligned}
&S_t+V_{\mathrm{ep}}(S_t,t)=Ke^{-r(T-t)}+V_{\mathrm{ec}}(S_t,t),\\
\Leftrightarrow\ &V_{\mathrm{ec}}(S_t,t)-V_{\mathrm{ep}}(S_t,t)=S_t-Ke^{-r(T-t)}
\end{aligned}

が成り立つ。これをプット・コール・パリティという。

8.2 ヨーロピアン・オプション

 連続時間モデルにおいてリスク中立確率測度の下でBlack-Scholesの公式を用いたヨーロピアン・オプションの価格評価を行う。
 リスク中立確率測度の下で株価過程が幾何\mathrm{Brown}運動


\begin{aligned}
dS_t=(r-\delta)dt+\sigma S_td\tilde{Z}(t)
\end{aligned}

に従うと仮定する。ここでrは無リスク金利\delta,\sigmaはそれぞれ株式に対する連続的な配当率とボラティリティとする。また確率過程\{\tilde{Z}(t);0\leq t\leq T\}はリスク中立確率測度の下での標準\mathrm{Brown}運動だとする。
 このとき時刻t=tにおける株価がS_tで与えられるならば、時刻t=tでのヨーロピアン・コール・オプションの価格V_{\mathrm{ec}}(S_t,t)


\begin{aligned}
V_{\mathrm{ec}}(S_t,t)=E_{t}^{s}[e^{-r(T-t)}(S_T-K)^{+}]
\end{aligned}

で与えられる。ここでE_{t}^{s}S_t=sという条件の下での条件付き期待値を表す。これを解くと


\begin{aligned}
V_{\mathrm{ec}}(s,t)=s e^{-\delta(T-t)}\Phi(d^{+}(s,t))-Ke^{-r(T-t)}\Phi(d^{-}(s,t) )
\end{aligned}

が成り立つ。ここで\Phi(x)は標準正規分布の分布関数で


\begin{aligned}
\Phi(x)=\displaystyle{\frac{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{x}\exp\left(-\displaystyle{\frac{y^2}{2}}\right)}dy
\end{aligned}

であり、


\begin{aligned}
d^{\pm}(s,t)=\displaystyle{\frac{\log\left(\displaystyle{\frac{s}{K}}\right)-\left\{(r-\delta)\pm \displaystyle{\frac{\sigma^2}{2}}\right\}(T-t)}{\sigma\sqrt{T-t}}}
\end{aligned}

で与えられる。これを配当がある場合の\mathrm{Black}-\mathrm{Scholes}の公式という。
 同時にヨーロピアン・プット・オプションの価格は


\begin{aligned}
V_{\mathrm{ep}}(s,t)=Ke^{-r(T-t)}\Phi(-d^{-}(s,t) )-s e^{-\delta(T-t)}\Phi(-d^{+}(s,t))
\end{aligned}

で与えられる。

8.3 アメリカン・オプション

 アメリカン・オプションの場合、任意時点において権利行使が可能であるから、いつ権利を行使するのが最適なのかを考えなければならない。t=tにおける株価がS_tで与えられるとき、時刻tでのアメリカン・コール・オプションおよびアメリカン・プット・オプションの価格をそれぞれV_{\mathrm{ac}}(S_t,t),V_{\mathrm{ap}}(S_t,t)とする。他方で権利行使のタイミングを表す停止時刻\tau\in[0,T]の集合を\mathcal{T}_{0,T}とする。このとき時刻t=tにおけるアメリカン・コール・オプションおよびアメリカン・プット・オプションの価格は


\begin{aligned}
V_{\mathrm{ac}}(s,t)&=\displaystyle{\sup_{\tau\in\mathcal{T}_{t,T}}E_t^s\left[e^{-r(T-t)}(S_T-K)^{+}\right]},\\
V_{\mathrm{ap}}(s,t)&=\displaystyle{\sup_{\tau\in\mathcal{T}_{t,T}}E_t^s\left[e^{-r(T-t)}(K-S_T)^{+}\right]}
\end{aligned}

で与えられる。a\land b=\min(a,b)とおけばアメリカン・コール・オプションおよびアメリカン・プット・オプションそれぞれの最適な権利行使時刻は


\begin{aligned}
\tau_t^{\mathrm{ac}}&=\inf\left\{\tau\in[t,T)|V_{\mathrm{ac}}(S_{\tau},\tau)=(S_{\tau}-K)^{+}\right\}\land T,\\
\tau_t^{\mathrm{ap}}&=\inf\left\{\tau\in[t,T)|V_{\mathrm{ap}}(S_{\tau},\tau)=(K-S_{\tau})^{+}\right\}\land T
\end{aligned}

とそれぞれのオプション価値と権利行使したときの価値が等しくなるような最小到達時刻によって与えられる。

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