8. 多変数関数の積分
8.1 二重積分
上の有界領域
で定義された実数値関数
のグラフにより限られる3次元領域の体積
を求めたい。
の場合を考える。
は
上で有界、すなわち
だとする。の分割
を与える。これは個の座標軸に平行な長方形に領域を分割することを意味する。
分割の幅を
で定義し、の幅という。また
とおく。これは長方形
の面積を表す。また
を
の分点という。
いまの2つの分割
を取る。もし
の分点の集合が
の分点の集合に含まれるとき
は
の細分といい、
と表すことにする。
以下、一変数関数と同様な方法での
上の積分を定義する。
とおく。は以下を満たす:
- (性質1)
- (性質2)
- (性質3)
を
の分割のすべての集まりとするとき、集合
および
は上記の性質1より共に有界な集合である。したがって上積分および下積分は有限な実数として定まる。更に性質3より各
は
の上界の元であるから、任意の
に対して
である。右辺でについて下限を取ることで
が成立する。これを踏まえて以下を定義する:
二重積分可能な条件を考える。その前にRiemann和を導入する。
をの1つのRiemann和と呼ぶ。ここで
は任意に選ぶものとする。
二重積分可能性の同値条件 次の4つの条件は互いに同値である。
1.
2. に対して
の分割
があり
が成立する。
3. に対してある
があって、
を満たすようなすべての
の分割
に対して
が成立する。
4. あるがあり、任意の
に対してある
に対して
を満たすようなすべての
の分割
に対して
とおく。上限の定義から任意のに対して
のある分割
があって
とできる。の
軸上および
軸上の分点の個数をそれぞれ
とし、
を満たすようなを選ぶ。
を満たすすべての
の分割について、
を満たすことを確認する。とおく。
による小長方形
の中に
の分割線が1本入ることで
と細分されたとき、は増加して
となる。このときその差は
である。ただし
である。 がもっとも多くの分割線で細分された場合でも
として考えれば
を得る。の分割線は縦線が
本で横線が
本であるから、上記のような差が生じる小区間
の面積の総和は
を超えない。実際、であるから
の1辺の長さは
以下であるため、縦線の分割が入る
の個数は高々
個であり、そのような
の面積は
を超えない。こうして総計として
を得る。同様に横線で考えれば
を超えない。以上から上式を得る。したがって
である。
いまであるから、
であることと
であったことに注意して
を得る。
についても同様の考察から
を十分に小さく取れば
を満たすような
のすべての分割
に対して
とできる。したがって
である。いまであるので
が成り立つ。したがってを満たすようなすべての分割
に対して
がの取り方によらずに成立するので、
により4.が示された。 )
上記で示したは
平面上の領域
と関数
のグラフで作られる図形の体積を表す。さらに
は
の
上の二重積分に等しい。