定番書
を基に線形代数を学び直していく。
今日のまとめ
5. 固有値と固有ベクトル
5.4 二次曲線および二次曲面
二次曲線および二次曲面を既存の知識を用いて分類する。
空間の座標系は1点および幾何ベクトル空間の1つの基底との組を指す。とくにが正規直交基底である場合が直交座標系である。
座標系を取り換えたときに点の位置ベクトルがどのように変わるかを考察する。2つの座標系があるとき、の基底の取り換えの行列をとし、点の座標系に関する位置ベクトルを
点の座標系における位置ベクトルをそれぞれ
とすれば、であるから
であるから、
が成り立ち、これが座標変換の公式である。
さらに
とおけば
とも表される。特にがともに直交座標系ならばは直交行列である。
空間における二次曲面(二次曲線)とは、ある座標系に関する座標の二次式の零点からなる集合である。二次曲面(二次曲線)は座標系に無関係な概念である。
6. 単因子およびJordan標準形
6.1 単因子
1変数の-変数多項式を成分とする次正方行列を考える。このような行列を簡便のために-行列と呼ぶことにする。2つの-行列の和差積が数の行列の場合と同様に定義されて-行列である。行列式もの多項式である。
-行列に対して
となるような-行列が存在するとき、を可逆行列という。
が可逆行列であるとき、上式を満たすようなはただ1つしか存在しないことが知られている。をの逆行列と呼び、で表す。
が成り立つ。およびはの多項式であるから、、である。
逆にがのでない元だとする。の余因子行列をとすれば、
が成り立つ。したがってはの逆行列である。 )
ここで基本行列
- :成分がでそれ以外の対角成分および成分がであるような行列
- :成分のみでそれ以外の対角成分がであるような行列
- :成分がであるような行列
を思い起こそう。このの代わりに多項式を入れたで表し、これも基本行列と呼ぶことにする。
であるから可逆で、逆行列もまた基本行列である。-行列の成分に対する基本変形の効果は数行列の場合と同様である。
( まず前半について、のときは明らかに成り立つ。として次-行列はすべて標準形に対等であると仮定する。
ならばそれ自身が標準形であるから、とする。と対等な行列で、成分がでないものが少なくとも1つ存在する。このような行列全体を考え、そのうちの多項式である成分の次数が最低なものの1つを取る。この行列の第1行を成分の最高次係数で割ることで、と対等な行列
が得られ、の次数はである。
の第1行および第1列の成分はすべてで割り切れる。実際、がで割り切れないならば、
が成り立つような多項式よりも次数の低い多項式が存在する。の第列から第列の倍を引き、さらに第列と第列とを交換すれば、得られる行列はと対等で成分はである。しかしの選び方に反する。
に関しても同様である。
そこでとし、第列から第列の倍を引き、第行から第行の倍を引けば
さらに数学的帰納法の仮定から次行列
は有限回の基本変形により標準形に移る。これと同様な変形をに施せば、と対等な行列
が得られる。
はで割り切れる。実際、よりも低次な多項式を用いて
と書けるとする。の第2列に第1列の倍を加え、次に第2行から第1行を引けば、成分はとなる。行および列の交換でを成分に移すことができるが、これはの選び方に反する。したがっては標準形である。
次に標準性の一意性を示す。そのために別の定理を先に示す。まず以下の概念を導入する。
( 次-行列に基本変形を施したとき、行列式因子が変わらないことを言えばよい。
行または列の交換およびある行または列にのでない元を掛けることによって行列式因子が変わらないことは明らかである。
の第行に第行()の倍を加えて得られる行列をとし、の次行列式因子をとする。
の様々な次行列式のうち、第行を含まない者は不変である。また第行、第行を共に含むものも不変である。次小行列式が第行を含み、第行を含まないものとする。行列の対応する位置にある小行列式をとおく。はとそれに含まれているの第行を第行で置き換えたのバイトの和に等しい、すなわち
である。はで割り切れるからも割り切れる。
以上からのすべての次小行列式はで割り切れることが分かった。したがってその最大公約数はで割り切れる。基本変形は可逆であるから、で割り切れる。共に最高次係数はであるから、である。 )
これを用いて本来示すべき定理の後半を示す。
標準形
の行列式因子をとすれば、
が成り立つ。したがって
が成り立ち、これによりはによって一意に決まる。数もまた、のでない小行列式の最大次数としてにより一意に定まる。 )
により定まるをの階数といい、個の多項式をの単因子という。