証券投資(現代ポートフォリオ理論)をコンパクトに学ぶべく、比較的最近に発刊され薄めの本である
を参考に学んでいく。
- 前回:
3. ポートフォリオ理論
3.6. 効率的ポートフォリオの性質
期待リターンが与えられたとき、分散を最小にする効率的ポートフォリオは
で与えられることは既に示したとおりである。これの性質を調べていく。以降簡単のため
とおく。また
とする。
接線ポートフォリオの共分散
( 効率フロンティア上の任意のポートフォリオ
での接線が
軸と交わる交点(期待リターン)を
とする。この
を達成するような効率的フロンティア上のポートフォリオ
のリスクを
とする。
効率的フロンティア
をに関して全微分することで
したがってポートフォリオにおける接線方程式は
である。この直線と軸の交点は
であるから
を得る。ここに
を代入してを消去すると
となる。したがってポートフォリオの共分散は、
図からも分かるように、は
よりも下側にある(
)。なぜならば
は双曲線の頂点である最小分散ポートフォリオ
の期待リターンであり、ここに近づけば近づくほど接線の傾きは限りなく無限大に近づく。これは
を達成するようなポートフォリオが存在しないことを意味する。このような接線ポートフォリオが
軸と交わる期待リターン
を与える有効フロンティア(双曲線)上のポートフォリオ
をゼロベータ・ポートフォリオという。
を得る。ここでとおけば、ポートフォリオ
は期待リターンとして
をもち、
であるから、期待リターンがであるような効率的ポートフォリオである。
が効率的ポートフォリオであれば、
が成り立つ。すべての
について
でかつ
であるとすれば、
は凸な一次結合となり、Jensenの不等式より、その期待リターンは
となって効率的ポートフォリオの凸一次結合もまた効率的ポートフォリオとなる。これは効率的ポートフォリオの集合が凸集合であることを意味する。 )
以上から、効率的ポートフォリオの集合において最小分散ポートフォリオ以外の任意の効率的ポートフォリオおよび効率的ポートフォリオの一次結合によって生成されたポートフォリオはゼロベータ・ポートフォリオをもち、それは一意である。このゼロベータ・ポートフォリオと効率的ポートフォリオの共分散は
であるから、これらの相関係数は
である。ゼロベータ・ポートフォリオは効率的ポートフォリオの一次結合で生成可能であることを意味する。任意の効率的ポートフォリオとそれによって与えられるゼロベータ・ポートフォリオを用いることで、任意の有価証券の期待リターンを線形結合で表現できる。
ゼロベータ・ポートフォリオによる生成 任意の効率的ポートフォリオ
( 最小分散ポートフォリオの期待リターン
以外を取る任意の非効率的ポートフォリオを
とする。任意の非効率的ポートフォリオを
とする。なお任意の有価証券
のみに投資する場合は
と
番目の成分のみが
でそれ以外の成分が
であるようなベクトルとなる。
効率的ポートフォリオと非効率的ポートフォリオ
のリターンの共分散は
で与えられる。ここでは全有価証券の分散共分散行列である。
効率的ポートフォリオは
で与えられる。ここではポートフォリオ
の期待リターンである。したがって
が成り立つ。
これをについて整理することで
となる。ゼロベータ・ポートフォリオに対して
であるから、
が成り立つ。
特にであるとき
である。これらを代入することで
を特定の有価証券のみに投資するポートフォリオとすれば題意と同値になる。
)
効率的フロンティア上の接点ポートフォリオの傾き
は
は接点ポートフォリオの期待リターンがゼロベータ・ポートフォリオの期待リターンに対する超過分に対して接点ポートフォリオの標準偏差1単位当たりの値を表し、これをシャープレシオ(Sharpe ratio)という。
効率的フロンティア上のポートフォリオと非効率的ポートフォリオ
との相関係数
は
が成り立つ。すなわち効率的ポートフォリオと非効率的ポートフォリオとの相関係数はそれぞれのシャープ・レシオの比率として求めることが出来る。
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