定番書
を基に線形代数を学び直していく。
今日のまとめ
7. ベクトルおよび行列の解析的取扱い
7.1 ベクトルおよび行列関数の微積分
行列の微分は以下の性質を持つ:
- 微分可能行列関数に対して
- 微分可能行列関数に対して
( の余因子をとおくと、の成分は
である。分母も分子も共にの多項式であり、定義より任意のが微分可能であるから、これもまた微分可能である。また正則であるからが成り立つ。したがっては微分可能である。また、逆行列の定義および3番目の性質よりの両辺をについて微分することで
であり、左辺第1項を右辺に移項した上で、両辺に左からを掛けることで
が得られる。)
行列のTaylor展開 に対して行列のTaylor展開を以下で定義する:
7.2 行列の冪級数
次正方行列に対して行列の級数
をの冪級数という。
( (i) が対角行列であるとき、とおくと、の特性根はであり、である。したがって行列の冪乗の収束性はの収束性に帰着し、主張は正しい。
(ii) がJordan行列である場合、(は対角行列、は冪零行列で、)とおく。このときとすれば、に対して
が成り立つ。したがって行列の冪級数の収束性は個の冪級数の収束性に一致する。これはを回だけ項別微分したものの倍であるから、その収束半径はである。は対角行列であるから主張は正しい。
(iii)が一般の行列の場合、が正則行列ならば、2つの冪級数
は同時に収束または発散する。がジョルダン行列になるようにを選ぶことが可能であるから、(ii)より、主張は正しい。 )
7.2.1 行列の指数級数
指数級数
は任意の行列に対して収束する。これをと書き、写像を行列の指数関数という。すなわち
である。
上記から
が成り立つ。の固有値をとおけば、の固有値はですべて正である。したがって
が成り立ち、は必ず正則となる。またが成り立つ。
である。
さらに行列が交換可能ならば
である。が交代行列ならばは直交行列である。逆にすべてのに対してが直交行列ならばは交代行列である。またが実対称行列ならばは正値対称行列である。逆にすべてのに対してが実対称行列ならばは実対称行列である。実際、が交代行列ならばが成り立つ。このとき
である。したがっては直交行列である。逆にがすべて直交行列ならば
が成り立つが、この両辺をについて微分しを代入することで
となる。
またが実対称行列であると仮定する。このときが成り立ち、
であり、の各成分が実数であるからである。また
の両辺をに関して微分しを代入することで
となる。7.2.2 行列の対数
についてその固有値についてのとき
7.3 行列のノルム
に対して
で2-ノルムおよび1-ノルムを定義する。また
で作用素ノルムを定義する。
これらについて
(a) 。またならば
(b) の型が一致するならば、
(c)
(d) 積が定義できるならば
が成り立つ。について、実際、
であり、任意のに対しであるからである。またを仮定する。
であるが、任意のに対しの定義から
となる。したがって任意のに対して
となるからである。
次に2-ノルムでの成立を前提とすれば
さらに
そして
また
が成り立つため、無限列がに収束するための条件
はいずれのノルムに対しても成り立つ。
7.3.1 Cauchyの収束判定法
型行列の無限列が収束するためには任意の正数に対し充分大きなを選んで、である限りが成り立つようにできることが必要十分である。