定番書
を基に線形代数を学び直していく。
今日のまとめ
- 実行列が実正則行列によってJordan標準形に変換されるならば、の特性解はすべて実数であることが必要十分である。
6. 単因子およびJordan標準形
6.2 Jordan標準形
Jordan標準形の計算 複素線形空間の任意の線形変換に対し、以下のような性質をもつ-不変部分空間が存在する:
(1)
(2)においてはただ1つの固有値を持ち、の適当な基底に対して(3)のうち、その上でのの固有値がであるものすべての直和をとすれば
これから、行列のJordan標準形および変換行列を求める別の方法が得られる。
がの固有値であるとき、のに対するJordan細胞が1つあることに斉次一次方程式系
の解がスカラー倍を除いてただ1つ存在するから、に対する固有空間の次元はに対するJordan細胞の個数に等しい。
例:
とする。特性方程式を解くと、
を得る。したがっては対角化可能である。
を解くことで固有ベクトル
を得る。したがって
を得る。
の場合をまとめる。
6.3 最小多項式
次-行列に対し、の線形結合を行列の多項式と呼ぶ。
変数の多項式
にを代入して得られる行列
を多項式のでの値と呼ぶ。このとき定数項はとする。
( (1)は行列の加法に対する性質から明らかである。(2)はから明らかである。(3)はから明らかである。 )任意の次正方行列に対しとなるような多項式が存在する。実際、行列空間は次元であるから、個の行列の間には自明でない線形関係
が存在する。
を満たすような多項式のうち、冪次数が最低で、最高次係数がであるものをの最小多項式と呼び、で表す。
となるから、の定義により、でなければならない。 )
( とおき、その次行列式因子をとする。であるから、の余因子行列をとすれば
である。
一方で行列式因子の定義から
と表され、の成分は共通因数を持たない。上式から
を得る。この式は-行列がで左から割り切れることを意味する。したがって
である。したがってはで割り切れる。
とする。
であるから、-行列はで左から割り切れる、すなわち
である。以上から
である。の最高次係数行列はであるから、
である。の成分は共通因数を持たないから、でなければならない。したがってを得る。 )