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証券投資論(01/21)

 証券投資(現代ポートフォリオ理論)をコンパクトに学ぶべく、比較的最近に発刊され薄めの本である

を参考に学んでいく。

1. 資本市場と有価証券

1.1 資本市場と金融商品

 投資には実物投資と金融投資の2種類がある。

  • 実物投資:土地・建物、機械設備や研究開発など実物資産(real assets)への投資
  • 金融投資:有価証券などの金融資産(financial assets)への投資

 商品などの有形資産を売買する市場を商品市場と呼ぶ。これに対して金融商品を取引する市場を資本市場という。ここでは金融商品とは、銀行などの金融機関から資金調達をする間接金融、企業の株式や社債を発行する直接金融を含む。

1.2 裁定機会

 1つの(もしくは経済価値が等価な2つの)金融商品の2つの異なる投資機会に対してそれぞれの投資コストが異なるならば、低い価格で購入し高い価格で売却すれば、無リスクに利益を得ることが出来る。このような取引を裁定という。

1.3 完全な効率的市場と完備市場

 資本市場で金融商品を売買するときに、金融商品の価格は市場でどのように評価され決まるのか。それを考える際の市場の性質についていくつかの概念を導入する。


完全市場(perfect market) 以下の3条件を満たすような金融市場を完全市場という:

  • 市場参加者である金融商品の売り手と買い手の数が十分に多く、両者にとって価格が所与、すなわち任意の参加者が価格形成に何も影響を与えない。
  • 金融商品に影響を与える情報はすべて全市場参加者に一様に瞬時に行き渡り、情報ギャップは存在しない。
  • 税金・手数料など取引にかかる費用および取引上の制度的予算的制約がない。さらに商品は任意の単位で分割でき、一定の利子率で資金の貸借が可能である。

3つ目の条件(のみ)を満たすとき、その市場を摩擦の無い市場という。



効率的市場 市場で取引されるすべての金融商品の価格に影響を与える情報がすべて価格に反映されている市場を効率的市場という。
 完全市場の条件(2)は市場の制度上の仮定である一方で、効率的市場は個々の金融商品価格の形成に関する情報上の仮定である。



完備市場 資本市場でのすべての状態に対応するのに十分な有価証券が存在するとき、その市場を完備市場と言う。
 これはある状態が実現したときに1単位の金額を支払い、それ以外の状態では0単位の金額を約束した状態依存型証券(このような条件付請求権をArrow-Debreau securityという。)が存在することをいう。

1.4. 新しい金融商品と金融技術

 金融問題を解決するのに数学・統計学IT技術を駆使した金融工学を活用して、新たな金融商品が登場してきた。こうした商品は様々な方法で付加価値を高める:

(1) リスクの再配分: 発行人または投資家のリスクをリスク選好の異なる市場参加者に再配分する。
(2) 取引費用の減少: 発行人や投資家の税金や手数料および発行費用などの取引費用を減少させる。
(3) 流動性の強化: 少ない資金でより多額の取引を可能にすることで流動性を高める。
(4) エージェント・コストの減少: 株主や債権者間の利益相反から生じる費用を減少させる。
(5) 規制の回避: 投資家や発行人の法令規制や他の制約条件を回避する。

2. リスクと確率の基礎

 

2.1. リスクとは何か

 証券投資の目的は、満足できる収益(率)を実現することである。この時投資家にとってのリスクは目標とした期待収益が達成できるか否かである。そこで価格変動によって収益が変動すること「リスク」と呼ぶ。投資家はより低いリスクおよびより高いリターンを求める。
 有価証券を無リスク証券とリスク証券に分類する。無リスク証券は将来の収益・価値が厳密に確定している証券である。これに対し、リスク証券は将来の価値が不確実な証券である。

2.2. リスクとリターン

 金融資産がその保有者にもたらすキャッシュフローを利回り(yield)といい、現在の価格から購入価格を差し引いたP_t-P_0について、P_t-P_0\gt0ならば資本利得P_t-P_0\lt0ならば資本損失という。
 利回りと資本利得(資本損失)の和をリターンという。投資家がより低いリスクおよびより高いリターンを求めるとき、リスクが大きくなれば、それに見合ってリターンもまた大きくなることを投資家は要求する。そこでリターンを求めることはリスクを取ることに等しい。リスクの増加に応じて受け取るリターンの増加分をリスク・プレミアムという。

2.3 現在価値と裁定

 投資依るキャッシュフロー、すなわちリターンが既知ならば、その投資の意思決定を評価できる。
 議論を簡単にすべく、

  • リターンは確定的(無リスク)である
  • 市場は完全である

と仮定する。このとき、ある有価証券の収益率が他のものよりも高ければ、それは集中投資を受ける。したがって均衡状態になれば、確定的な市場での有価証券はすべて同一のリターンを有する。このような無リスク証券の収益率をrとおく。
 ある証券の時刻tにおけるキャッシュフローC_tとすれば、この証券への投資の現在価値PV


\begin{aligned}
PV=\displaystyle{\sum_{j=1}^{n}\frac{C_{t_j}}{(1+r)^{t_j}}}
\end{aligned}

で与えられる。なおt_1\lt t_2\lt\cdots\lt t_n]とする。すなわち添字[tex:jキャッシュフローを発生した時点順に並べたときの若い方からの番号を表す。
 この式の右辺をrの関数と見なし有価証券の購入価格をP_0として


\begin{aligned}
f(r)=\displaystyle{\sum_{j=1}^{n}\frac{C_{t_j}}{(1+r)^{t_j}}}-P_0
\end{aligned}

とする。このときf(r^{*})=0を満たすような収益率r^{*}のことを内部収益率という。もしC_{t_j}\geq0ならばf(r)rの減少関数であるから、


\begin{aligned}
\displaystyle{\lim_{r\rightarrow} f(r)}\lt&0,\\
f(0)\gt&0
\end{aligned}

を共に満たすならば、内部収益率r^{*}は少なくとも1つ存在する。
 もしキャッシュフローが不確実である(=確率変数である)ならば、キャッシュフローをリスク中立確率で期待値を取ることで計算する:


\begin{aligned}
PV=\displaystyle{\sum_{j=1}^{n}\frac{E[C_{t_j}]}{(1+r)^{t_j}}}
\end{aligned}

完全で効率的な市場であれば、裁定機会の存在を許さないような形で金融商品の価格形成が行われる。そのため、上述のPVはファンダメンタル・バリューとも呼ばれる。
 企業はゴーイングコンサーンが原則であるから、リスク中立確率の下で将来の配当額はマルチンゲールに従うことからE[D_{t_j}]=D_0とすれば、


\begin{aligned}
PV=D_0 \displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}\sum_{j=1}^{n}\frac{1}{(1+r)^{t_j}}}=\displaystyle{\frac{D_0}{r}}
\end{aligned}

となり、これが株価のファンダメンタル・バリューである。
 各期に配当D_0が支払われる第t期の株価P(t)に関して


\begin{aligned}
P(t)=&\displaystyle{\sum_{j=1}^{n}\frac{D_0}{1+r}}+\displaystyle{\sum_{j=1}^{n}\frac{D_0}{(1+r)^2}}+\cdots\\
=&\displaystyle{\sum_{j=1}^{n}\frac{D_0}{1+r}}+\displaystyle{\sum_{j=1}^{n}\frac{P(t+1)}{1+r}}+\cdots
\end{aligned}

が成り立つから、


\begin{aligned}
r=\displaystyle{\frac{D_0+P(t+1)-P(t)}{P(t)}}
\end{aligned}

が得られる。割引率rが投資収益率に等しい。

2.4. 投資データと統計量

2.4.1. 算術平均

 データx_i,i=1,2,\cdots,nが与えられたとき算術平均\bar{x}


\begin{aligned}
\bar{x}=\displaystyle{\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}x_i}
\end{aligned}

で与えられる。

2.4.2. 中央値

 与えられたデータを大きい順に並べたときに中央に位置する値を中央値という。

2.4.3. 最頻値

 データの中で最も観測頻度が多い数値を最頻値という。

2.4.4. 平均絶対偏差

 各データと算術平均からの乖離を表す尺度として平均絶対偏差がある。


\begin{aligned}
MAD=\displaystyle{\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}|x_i-\bar{x}|}
\end{aligned}

2.4.5. 移動平均

 時系列データに対して傾向と季節などの循環性をもつとみなし、将来変動の予測や推定に時系列分析を適用する。その中でもいくつかの手法を取り扱う。
 まず移動平均は以下で与えられる:


\begin{aligned}
\bar{x}_t=\displaystyle{\frac{1}{m}\sum_{i=0}^{m-1}x_{t-i}}
\end{aligned}

2.4.6. 加重移動平均

 移動平均法では各期のデータが同じ重みをもつ。これは実用上、問題が生じる場合がある。たとえば時系列でリスクを計算する場合に、異常な増減があったときにそれが後々までいつまでも尾を引く(こうしたリスクの性質をボラティリティクラスタリングという。)。リスク・コントロールを行ないたいのであれば、リスクには安定性を求めたいために、移動平均法は望ましくない。
 こうした場合に加重移動平均法の活用を検討する。


\begin{aligned}
\bar{x}_t=\displaystyle{\frac{1}{m}\sum_{i=0}^{m-1}w_ix_{t-i}},\ w_0\gt w_1\gt \cdots\gt w_{m-1}
\end{aligned}

2.4.7. 指数平滑法

 指数平滑法は直近予測値と実現で^多との加重平均をその期の予測値とする予測方法である。f_tを時点tにおける予測値として、翌期の予測値f_{t+1}は、定数\alpha,\ 0\lt\alpha\lt1を用いて


\begin{aligned}
f_{t+1}=\alpha x_t+(1-\alpha)f_t
\end{aligned}

とする。したがって


\begin{aligned}
f_{t+1}=&\alpha x_t+(1-\alpha)f_t=\alpha x_t+(1-\alpha)\left\{\alpha x_{t-1}+(1-\alpha)f_{t-1}\right\}\\
           \vdots\\
           =&\alpha x_t+\alpha(1-\alpha) x_{t-1}+\cdots+\alpha(1-\alpha)^t x_0
\end{aligned}

と書けるため、過去データは指数的にその期のデータの重みが軽減していく。w_t=\alpha(1-\alpha)^tとおけば、加重移動平均法に帰着できる。翌期の予測値は


\begin{aligned}
f_{t+1}=f_t+\alpha(x_t-f_t)
\end{aligned}

と書き換えるため、前期の実現値との誤差x_t-f_t\alphaによって補正することを意味する。

2.4.8. 予測の精度

 予測方法において重要なことはそれぞれの予測方法の予測精度である。予測誤差が小さい程、より良い予測方法である。予測誤差の尺度として平均平方誤差を採用する。


\begin{aligned}
MSE=\displaystyle{\frac{1}{n-1}\sum_{t=1}^{n}(x_T-f_t)^2}
\end{aligned}

 移動平均法では期間の長さmに依存し、加重移動平均法では期間の長さmに加え重みw_tに依存する。
 直近のデータの方が古い過去データよりも重要と考えるならば直近のデータにより大きな重みを付ける。ある特定の重みがより良い予測値になるか否かはMSEがどの重みに対してより小さくなるかで判断する。

  • 次回:

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